小説・詩ランキング

 
 




金正恩氏、3週間ぶり姿現す 国営通信が報道

 【5月2日 AFP】(更新)北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)は2日、同国の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が肥料工場の竣工式に出席したと報じた。金氏が公の場で活動した様子を国営メディアが報じたのは約3週間ぶり。金氏についてはその間、健康状態をめぐる臆測が飛び交っていた。

 同通信は、金氏が1日の竣工式に出席し、テープカットを行ったと報道。全参加者から喝采を受けたと伝えた。金氏は工場の視察も行い、製造過程について説明を受けたという。

 金氏は「深い感情」をもって、祖父の故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席と父の故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記が「現代的な肥料工場が建設されたことを知ったら非常に喜ぶだろう」と語ったとされる。

 金氏は4月11日の朝鮮労働党政治局会議を最後に公の場に姿を現していなかった。国営メディアは翌12日、金氏が空軍の戦闘機を視察したと報じていた。(c)AFP』

AFP News



 「ただし、金正恩氏が竣工式に出席した際の写真や具体的な発言は報じられていない。」(Sputnik

 ↑この午前7時までの段階では写真は発表されておらず、発言も簡単にしか伝えられていませんでした。

 

 午前9時頃 AFPは記事を更新し、現場写真を追加したほか、↓次の段落を追記:

『竣工式には金氏の妹で最も親しい助言者でもある金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏ら幹部も出席した。式典に出席した金正恩氏の写真は朝鮮中央通信が配信し、労働新聞にも掲載された。』


 他方、日経新聞サイトは↓次の記事を掲載:

朝鮮中央通信によると、金正恩氏は1日、北朝鮮西部平安南道の「順川リン酸肥料工場」の竣工式に出席した。竣工式には実妹の金与正党第1副部長のほか、党や軍の幹部、建設者、労働者など多数が参加したという。

 同通信は竣工式での金正恩氏の発言も詳細に伝えた。肥料工場の完工について「軍民一致の団結した力で創造した誇らしい成果」と述べたほか、「わが国の化学工業を一段階飛躍させる上で重要な契機になる」と食糧増産への意気込みを語ったという。

 2日の労働新聞は、1面から3面にかけて竣工式の開催を詳報した。金正恩氏によるテープカットや、工場内部を視察する様子、党幹部らと談笑する同氏の写真を合計9枚掲載した。式典写真で金正恩氏の背後のバックボードには「2020年5月1日」と大きく日付が書かれていた。』

日経

 



金正恩。向ってすぐ左席に妹の金与正。

背景の文字「順川燐肥料工場/竣工式/2020年5月1日」


テープ・カット。左に金与正。



竣工式に参列した大衆。全員マスクをしている。

左の横断幕は、「敬愛する最高領導者金正恩…」
と読める。右の演壇の背景が、↑上の写真と

一致。演壇に金正恩、金与正がいると見られる。


工場内を見学。工場幹部と談笑。



同上



工場全景。右下のスローガン文字:
「自力更生」

 


 配信された写真を検討してみると、5月1日に金正恩氏が健康そうな姿を見せたのは事実のようです。(写真よく見ると疑問なくはないですが、膨大な数の参列者が写っているので、トリックは困難。竣工式は事実でしょう。)

 

 これで、死亡説、重篤説などは否定されたことになりますが、「異例」への疑問は残ります。

 ひとつは、なぜ「肥料工場」かという点です。5月1日はメーデーの日で、金正恩氏は、例年はメーデーに集まった大衆の前に姿を現わしていたのですが、今年はメーデーには出なかったのか?

 これは、社会主義伝統のメーデーよりも、“自力更生”の独自経済路線――制裁に耐え抜く鎖国路線――を強調したのではないかと見られます(政府・党の最高幹部も列席していることから、この竣工式がメーデーのメイン行事だったと思われます)。伝えられた談話でも、金日成と金正日が
「現代的な肥料工場が建設されたことを知ったら非常に喜ぶだろう」と語ったとされます。ミサイルと核兵器の開発を続けながら、制裁には、国内の農工業生産増進で対処する、という方針を鮮明にしているわけです。


 もうひとつは、この間、北朝鮮の在外公館も国内当局も、広がる“金正恩死亡”の噂に対して、やっきになって否定したり取り締まったりという・これまでのような対応をしなかったことです。“デマをわざと助長して、世界の注目を集めようとした”ともとれますが、やはり、政権中枢で何かが変化してきているのが感じられるでしょう。伝統的な“金社会主義王朝”からの脱却をめざした金正恩自身の政策なのか、それとも危機の現れなのか、もう少しようすを見ていく必要があります。

 その点に関連して、妹・金与正の姿を積極的にアピールしているのも重要です。この間の外国報道では、“後継者”としてクローズアップされていましたが、“後継”ではなく「補佐役」と見たほうがよいように思われます。一つには、有能で清楚なふんいきの妹を寄り添わせることで、民心のイメージ回復を狙っているのでしょう。隠微な身内の“陰の実力者”ではなく、妹を積極的におもてに出し公的地位にも就けることによって、「兄妹統治」のような体制を狙っているかもしれません。 

 

 最後に、「手術」「病気」説について。写真の金正恩を見て、私は、急に老けた(あるいは実年齢以上に貫禄が出た)という印象を持ちました。やはり、この間に闘病生活ないし療養生活のようなことは、あっただろうと思います。根拠のない憶測は極端に走りやすい――という点には留意すべきですが、だからといって、“うわさ”情報を頭から否定するのは、勿体ないことだと私は考えます。慎重に取り扱えば、そこには何がしか重要なヒントが含まれていることが多いのです。

 

――――――

 【追記 5/3】 ↑昨日書いたことを裏づける見解が報道されました。順川燐肥料工場視察の公開写真の1枚で、金正恩氏の右手首に手術痕(心血管ステント術?)が見えるというのです。また、地域の党・行政機関への金正恩氏の指示に異変が起きているとの内部情報も⇒:Yahoo(高英起)(文中「29日のものは項目しかなかった」は「29日のものは項目しかなかった」の脱字)