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夏のやすらぎ


 風は小枝に憩い
 大儀そうに揺らいでいるばかり、
 どこか遠くの宴
(うたげ)からのように
 唄の消えゆく余韻が響いている。

 ぼくの幸せは床に就いて
 夢を見ながらほんのすこし
 きれいな細い頬
 きれいな唇に笑みをふくむ。

 ぼくの愛はぼくの唄の膝に
 身をよこたえて華奢な手足を
 のばし、ぱっちりとその
 大きな眼をひらく。

 軽やかな詩
(うた)の手綱(たづな)
 ぼくの手から落ち、
 ぼくの唄は翼を飜して
 碧
(あお)いまどろみの国へと向ける。




 紅い太陽がかかる
 池の水底の深み、
 迷い蝶が飛ぶ
 ヨシとネコヤナギの原。

 ぼくの心が喪失したすべて、
 少年の気力、子供の平安が
 ここに黄色い葦
(あし)の原にまどろむ
 さびしく、押し黙って、世捨て人のように。

 水面
(みなも)を染める夕焼けのように
 ぼくの生と苦しみがひろがる、
 暗い小舟のように静寂に
 ぼくの夢たちがすべってゆく。

 ぼくの荒れる心のうえに
 注がれたひとつの平安;
 かつてぼくであったもの、いまぼくであるもの、
 すべてが夢の中に溶けこんでしまう。




 

ジョン・フィリップ・スーザ『星条旗よ永遠なれ』
グスターボ・ドゥダメル/指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サマー・ナイト・コンサート2019、ウィーン・シェーンブルン城

 


 こんばんは_^)ッ

 猛暑も、だいぶ和らいできましたね。

 もうじき 100回目になるので、何を特集しようかと悩んでしまいます。まだなんにも考えてない←

 とりあえず今夜は季節にちなんで、過ぎゆく「夏」をお題にした詩を2篇。音楽のほうは、この夏のウィーン・フィルのコンサート、‥ビデオがいくつか出ているので、聴いてみたいと思います。サワリの↓ティーザー。公式トレーラーより、こっちのほうが見ごたえあるので。


 

ティーザー
グスターボ・ドゥダメル/指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サマー・ナイト・コンサート2019、ウィーン・シェーンブルン城

 

 



 



 今年のクラシックの目玉は↓これみたいね。考えてみたら、これもアメリカにちなんだ曲なんだよね。USA特集だな、今年は。

 

ドヴォルザーク『交響曲第9番 新世界から』
第4楽章 アレグロ・コン・フォーコ
グスターボ・ドゥダメル/指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サマー・ナイト・コンサート2019、ウィーン・シェーンブルン城

 


  ところで、ドゥダメルといえば。。。 故国ベネズエラで、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラと、たしか高校生のオーケストラも指揮して、型破りの音楽教育で広く知られた人。最近のマドゥロ独裁政権のもとで、音楽活動に支障が出てないかどうか、気になるところです。

 ウィキを調べてみたところ、英語版には何も書いてない。日本語版とドイツ語版が、それぞれちょっとだけ触れていました:



ドゥダメルは、マドゥロ独裁政権に対し十分に声をあげていないと批判されていたが、2017年5月に反政府デモで音楽家が死亡したことをきっかけに政府批判を繰り返し行うようになった。また、その報復として、自身が指揮を執る予定だった米国ツアーを中止されている。⇒:ウィキ日本語版


     世界的指揮者ドゥダメル氏の米国ツアー中止に

 ベネズエラ出身の世界的指揮者、グスターボ・ドゥダメル氏(36)は〔2017年8月〕21日、国立ユース・オーケストラと共に米国を回るはずだった演奏ツアーが中止になったと、ベネズエラ国内の複数報道を確認した。政治経済危機の続くベネズエラで、ドゥダメル氏は政府批判を重ねており、ニコラス・マドゥロ大統領がそれに反発していた。

 ベネズエラが政治経済危機で混乱状態に陥るなか、世界的スターのドゥダメル氏がベネズエラ政府を十分に批判していないと非難されることもあったが、今年〔2017年〕5月に若い音楽家が反政府デモで死亡したのを受けて、マドゥロ政権に『国民の声を聞いてもらいたい』とフェイスブックで訴えた。

 さらに7月にも、米紙ニューヨーク・タイムズやスペイン紙エル・パイスに寄稿し、マドゥロ大統領が招集した制憲議会を批判した。

 これに対してマドゥロ大統領は〔8月〕18日、『政治の世界にようこそ、グスターボ・ドゥダメル。しかし、倫理的に行動しなさい。だまされて、少年少女のこの美しい運動を形作った設計者たちを攻撃してはならない』と反論した。『少年少女のこの美しい運動』とは、ベネズエラの有名な音楽教育制度エル・システマのこと。

 大統領はさらに、ドゥダメル氏が海外に暮らしていることをあてこすり、『確かに私は海外に住んでいない。我々は誰も、マドリードやロサンゼルスなど海外に住んでいない。我々はどこに住んでいるか? ベネズエラだ。そしてベネズエラの人たちのために働かなくてはならない』と述べた。

 この3日後の21日になると、大統領府がツアーを中止したと、ベネズエラのメディアが報道した。中止理由の説明はされていない。

 ドゥダメル氏はツイッターで、米国4都市を回るはずだったユース・オーケストラのツアーがキャンセルされ、『悲しみにくれている』とツイート。『素晴らしい若い音楽家たちと一緒に演奏する夢は実現しない……今回は』、『私たちは演奏を続け、より良いベネズエラとより良い世界のために闘い続ける』と書いた。⇒:News Japan


 ドゥダメルは、活動母体であるシモン・ボリバル・ユース・オーケストラの 2017年演奏旅行を行なうことができなくなった。彼は、マドゥロ大統領に対して、自身のオーケストラを守るため、長年にわたって自制していたが、この年沈黙を破って、国民の声を聞いてもらいたいと要求した。その直後のことである。

 2018年には、恩師であるホセ・アントニオ・アブレウのための追悼コンサートさえ行なえなかった。

 『ガーディアン』誌によると、ユース・オーケストラは、マドゥロ政府の政策により没収されたという。同政権のもとで、彼は、ユース・オーケストラとの協働関係から閉め出されたもようである。⇒:Wiki-Deutsch


 2019年1月、ドゥダメルは、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム(芸能人の敷石プレートをはめ込んだ歩道)に自身のプレートが設置されるに際し、この名誉はベネズエラに属すると述べ、『あした[1.23.]は重要な日だ。民衆の声に耳を傾け、敬意を払ってほしい』と、翌日のベネズエラ全国抗議行動〔グアイド国会議長が暫定大統領を宣言した数百万人規模のデモ〕に注意を向けた。⇒:Wiki-English



 どおりで、最近はヨーロッパの楽団の指揮が多いと思っていました。ドゥダメル自身は国外にいるとのことで(2018年スペイン市民権取得)、彼の身の安全には問題がなさそうでホッとしましたが、ユーチューブの多数の動画に姿の見える、ユース・オーケストラの楽団員たちは無事なのだろうか。憂慮にたえません。

 

 スペインで(?)新しいユース・オーケストラを立ち上げたとも伝えられますが、SBYOからの団員受け入れは可能なのかなど、詳細は不明です。

 

 革命家シモン・ボリバルが、墓の中で泣いてるね.....

 

 ウィーンのコンサートが、どうして“USA特集”になっているのか、想像できますよね。マドゥロ政権に対する、指揮者のメッセージなんでしょうね。ベネズエラに残っている楽団員たちに聴かせて、勇気づけようとしているのかもしれません。

 さて、↓こちらは 2012年の同じサマー・コンサート。指揮はやはりドゥダメル。この曲も、野外演奏に向いてるのが、よくわかります。4:05~、とにかく迫力!! 多少音が歪んだって気にしない。


 

ボロディン『イーゴリ公』から
韃靼人の踊り(合唱なし)
グスターボ・ドゥダメル/指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サマー・ナイト・コンサート2012、ウィーン・シェーンブルン城

 




      南国の夏

 栗の華
(はな)、夕刻の叢林、
 樹間
(このま)に覗く半月、森でぼくらは酒の渇きを癒す――
 なまぬるい夜風に杯
(さかづき)が鳴る、
 そらの闇を見上げて光るぼくらの美酒の色。

 慌
(あわただ)しく過ぎる花々ひと夏にかがやくぼくら:
 恋人よ、ぼくを飲め! きみを干させてくれ、愛する者よ!
 熱した夏のたいまつでぼくらは
 愛し合う夜唄
(ようた)の開始を合図する。
 おお梟
(ふくろう)の叫び、夜の暗い心よ、
 きみは夾竹桃のしげみの夜の蝶
 ぼくらは互いに入りあって燃える、兄弟よ、
 神々に捧げられた至福の生贄
(いけにえ)だ。
 鳴り響く生と死の歌のただなか、
 杯
(さかづき)は触れあって鳴り、ぼくらの時が光る!



 

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