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今週の「鉄道を音楽で楽しむ休日」では、熱心な鉄道ファンとしても知られるサクソフォン奏者、上野耕平さんが大活躍。鉄道視点から見た音楽の楽しみ方に目から鱗が落ちました。


 なにより驚いたのは、上野さんによるドヴォルザーク「新世界より」の新解釈。

 

ドヴォルザークが大変な鉄道好きだったという逸話はよく知られています。

 

駅にでかけては飽きもせず機関車を眺め、車体番号を記録したり、模型を作ったりと、その姿は現代の鉄道ファンと変わりません。

 

そんなドヴォルザークの代表作が交響曲第9番「新世界より」。

 

作曲者本人は明言していませんが、「新世界より」の第4楽章は、蒸気機関車が加速して、やがて爆走する様子を連想させます。


 そこまでは比較的よくある解釈なのですが、上野さんはさらに一歩踏み込んで、この傑作に秘められた鉄道モチーフを明らかにしてくれました。

 

第4楽章でたった一度だけ鳴らされるシンバルの音は、蒸気機関車のブレーキ音。

 

しかも、これに続く管楽器のフレーズを「ブレーキ後の煙」とおっしゃるのには、思わず膝を叩いてしまいました。

 

なるほど! シンバルという楽器は、普通なら強烈な一撃でクライマックスを盛り上げてくれそうなものですが、ドヴォルザークはメゾフォルテ(やや強く)というやや不思議な指示を楽譜に書き込んでいます。

 

映像で実際の蒸気機関車のブレーキ音を確かめてみると、たしかにこれはフォルテでもピアノでもなく、メゾフォルテくらいのニュアンスだとわかります。
 

 さらに上野さんの指摘で納得したのは、第3楽章の解釈。

 

一般的には、この楽章は農民舞曲風、民謡風の音楽だと受け取られているかと思います。

 

でも上野さんによれば、冒頭部分は汽笛を表現し、トライアングルの連打が発車ベル、弦楽器のリズムは「ガタンゴトン」をあらわすのだとか。

 

しかも弦楽器による「プシュー」という蒸気音まで登場するのですから、これは蒸気機関車そのもの。

 

今後、この曲の聴き方が変わってしまいそうです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)