(続き)

銀行は貸し出しの焦げ付きに備えて一定の現金を積み立てておくことを要求されているが、現金の代わりにアメリカ国債を積み立ててもいいとしたのだ

これによって銀行という銀行は、大量のアメリカ国債を買いに走った。

アメリカの国債が今まで暴落しなかったのは、中国や日本のような国々がアメリカ国債を止めどなく購入し、ドルの大量出血を補ってきたからである。

最近までこの関係は象徴的なものであったが、今やこの相互のサポートは、脳死患者のアメリカにとっての生命維持装置となっているか文化大革命以前の中国政府が発行した中国政府国債は、今や紙くず同然となっており、記念品としてロンドンで展示されている。

これと同じことがやがてアメリカ国債についても起こるだろう

(筆者注そして現実に〇二年八月にアメリカ国債は格下げされ世界中の株式市場に混乱を引き起こしている)。

アメリカが今、貿易赤字の支払いに使っているアメリカ国債は、いずれ単なる紙切れとなる。

上海や北京のディーリングルームでは、デフォルト(債務不履行)に陥って無価値となった過去の超大国の記念品として額縁に入れられることになるだろう。

借金を増やしたのはアメリカ政府ばかりではない。

アメリカ企業の経営者たちがいかにして負債を増やしたかを見てみよう。

アメリカ企業は四半期ごとにその成果を発表する。

そ七でアメリカ企業の重役たち、取締役やCEO(最高経営責任者)たちはその成果、税引き前利益に応じて報酬を受け取る

彼らは各種の会計テクニックを駆使して、とにかく税引き前利益が大きくなるよう宜するのだ。

また、アメリカ企業の重役たちに適用されるストック・オプション(自社株購入権)の制度は、でもいいから利益を極大化する方策がとられた。

利益を上げるために第一に考えられた手法は、人件費の抑制だ。

あらゆる企業にとり、最大の経費は人件費だからである。

そこでとられた方策が、アウトソーシング(外部委託)だった。

できるだけ社内に人材を抱えないで外部に、それもコストの安い国に外注する。重役美ちにとっては、アウトソーシングによって国内の雇用機会が失われることなど問題ではなかった。

とにかく人件費を抑制し、四半期ごとの利益を最大にすることが重要だった。

こうしてアメリカの産業は作業を次々と海外にアウトソーシングするようになり、結果としてアメリカのGDPに占める企業投資の割合はわずか一〇%にまで低下した。

そして成長企業には労働者がほとんどおらず、低成長の企業に大量の労働者が残るという皮肉な事態が起きた。

コストや賃金が安いという理由だけで選択されたアウトソーシング先で生産された製品は、「安いけれども質は悪い」。

しかしアメリカの消費者は「すぐ壊れるけれども安い」商品に慣らされていった。

次に企業の重役たちがしたことは、銀行借り入れによって四半期ごとの決算利益を極大化するというやり方である。

とにかく株価を引き上げておかなければ、アメリカの株主たちは満足しない。

そればかりでなく、株価を上げておかないとプライベート・エクイティ・ファンド(訳注M&A(合併・買収)などを仕掛けて金儲けをするためのファンド)が攻撃してくる恐れもある。

そこで株価引き上げのために、資金を銀行から借り入れて、それで自社株をせっせと買ったのである。


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