霊魂か妄想かの、議論不毛
近年「霊的な」といった意味合いの「スピリチュアル」という言葉が注目を集めている。
このキーワードを巡って様々な角度から現代人のこころの開局に取り狙んでいる人々を紹介する。
近代的な人間観によれば、人間は自我の枠に囲い込まれた孤独な存在だ。
だが6・0年代に米国のアブラハム・マズローらが中心になって提唱したトランスパーソナル心理学が説く人間観は違う。
人間は、瞬想などスピリチュアルな体験によって「より大きな存在」
-例えば自然や宇宙との一体感を得ることができると主張する。
翻訳家としてこの心理学に出会ったのは.
1980年代。
以来、著作活動などでその普及に務め、現在は日本トランスパーソナル学会の副会長。
そんな立場から、′昨今の「ブーム」以前からスピリチュアリティはこの心理学で重視されてきた、という。
「人間は個を轡見たものとつながっており、人間は自我だけでできているのではないと気づいていく。
それがトランスパーソナル心理学でいう〟全人格的な成長″なのですが、そのためにスピリチュアリティは欠かせないものなのです」
むろん「霊的」な体験もスピリチュアルのカテゴリーに入るが、そこで「霊魂は実在する」とか「妄想に過ぎない」といった議論をするのは不毛だという。
「例えば夢は主観的なものだが、自分に何か深いものを告げる、ということがある.
霊魂実在論でも妄想諭でもない、中間領域があるという発想が大事では」振り返れば、思索の原点には「いかに生きるべきか」という自身の悩みがあった。
青春時代を送つた70年代は、公害が社会問題化するなど物質主義のゆがみが表面化した時代。
違う生き方はないか-定職にもつかずに迎えた30代で、たまたま翻訳
業を始めたところで出会ったのがトランスパーソナル心理学。
「自らの抱えた間樋を解決するためにとても有効だった」と言う。
そしてスピリチュアルなものが、注目を集めているのには理由があるとみる.
「環境破壊の深刻化と、今の人間が抱く虚無感は呼応している」。
物質主義が自然を痛めつけることは、深層心理のレベルでみれば人間のこころが傷つけられることでもある。
「ただ、危機の中には可能性がある、とも患う。
こんな状況だからこそ、人間の内面が変容して〟次の文明″が出てくるかもしれない」
ここ祁年あまり、新しい深層心理学の流れをリードしてきた立場から、今後もスピリチュアルの可能性を説き続けていこうと考えている。
(時田英之)
スピリチュアリティの探究者 [1]
すが やすひこ
菅 靖彦 さん