それはいきなりやってきた。

 

普段通りに5時に起き、5時20分に朝食を取り、6時40分にトイレで踏ん張った瞬間だった。

 

胸を圧迫する「ズドーン」という痛みが心臓の鼓動に合わせてやってくる。

とっさに思ったのは「ズドーン」のたびに「心臓止まるな!」と祈っていた。

気が遠くなりかけるが「ズドーン」のピークは過ぎて痛みは小さくなった。

 

呼吸をしようとして息を吸うと胸が圧迫されていたい。

これは救急車を呼べるうちに呼ばないと危ないと思った。

お尻を拭いてパンツをはいて、119に電話を掛ける。

救急車を呼ぶまでの電話相手とのやり取りの長さは緊急時にはつらいと思った。

とにかく意識があるうちに来てくれ~。

散々場所を説明したが救急隊員は気付かないだろう。

部屋でカギを開けて待っているように言われたが、アパートの階段の1番下、または、前の道路まで出て待っていないと気付いてもらえないだろうと思った。

 

救急車は5分から10分で到着するのでの一言に安心して、ハバネ郎と章姫に水をあげ、デイバックにノートパソコンとACアダプター、スマホのACアダプター、ヘッドフォン、2日分の下着を詰めて、アパートの階段の1番下まで降りる。

すると隣の田村さんが仕事に行く準備をしていたので、田村さんに話をして、救急車が来たらここにいると伝えて欲しいとお願いする。

 

救急車の音が近づいてきてアパートの入口の前を通り過ぎる。

「あー、やっぱり」

田村さんが走って救急車を捕まえに行ってくれた。

ありがとう、田村さん。

 

ストレッチャーがやってきてまずは無事に救急車へ。

親父が胸の痛みを感じて救急車を読んだ時も必要になりそうなものをすべてデイバックに詰めてアパートの入り口で待っていたことを思い出す。

ああ、親子だな。