それでは今回は、舞台を彩ってくれたキャストたちについて書きたいと思います。

本当に、今回は素敵なキャストさんたちが集まってくれました。本読みの段階からゲラゲラ笑いましたからね。それでは行ってみましょう!

 

○樋口一華役:会沢紗弥さん

まさに原作から飛び出してきたような女の子。元々見た目が似ている上に、更に一華というキャラクターに様々な側面を持たせ、漫画から飛び出してきたようでいて非常に人間らしい一華像を築いてくれたかと思います。コロコロ変わる表情、応援したくなるオーラ(全開!)、真似のできないような動き、見ていて飽きることが一切ありませんでした。むしろずっと見ていたい気持ちになるくらいに一華に命を吹き込んでくれました。声優活動はされておりますが、そこまで舞台経験が豊富ではなかった彼女。そんなことを感じさせないほど、堂々と真ん中にいてくれたと思います。

まず、何と言ってもセリフがもの凄く聞き取りやすい。決して声量があるというわけではないのですが、すっと耳に入ってくるといいますか。特筆すべきは「面白の間を外さない」という能力の高さ。彼女は日替わりネタなどはしていなかったのですが、毎回確実に脚本上の笑いを取っておりました。リピーターのお客様が多い中、脚本上の笑いを取り続けるのは結構大変なのです。

そして、最初は少し苦手そうにしていた感情的なシーンも、少しアドバイスをしたらメキメキ良くなっていき、本番中もぐんぐん上がっていっておりました。芝居勘がとても良いのでしょうね。後、とても素直。これは演出する側にとって非常にありがたい。やりやすそう、やりにくそうがとてもわかりやすい笑。だから、こちらもすぐに解消するための演出をつけることができる。彼女はやる気や闘志を前面に押し出すタイプではありませんが、ものすごく頑張って役と向き合っているなというのがヒシヒシと伝わってきました。元々人を惹きつける抜群の華がある上に、努力を惜しまない。そりゃ、上手くなるわけですよ。

彼女のキャスティングには運命のようなものを感じておりました。一華役を探していた時に、合いそうな女優知らないか?と何人かに尋ねたのですが、全員が紗弥ちゃんの名前を上げてきました。もうこれは彼女しかいないでしょう!とキャスティングをさせていただいたわけです。そういった経緯があったわけですから、出演していただけることが決まった時は「あ、これは勝ったな」と思ったものです笑。

彼女のお芝居には「上手い」を超越したものがある。そして演者にとってそれが最も必要な部分だというのが私の持論です(上手さはやっていくうちに自然と身につくものなので)。声優のお仕事が忙しいとは思いますが、是非とも演劇界にも彼女の光を照らし続けて欲しい。前回のブログでも少し触れましたが、彼女が一華だったからこそ今回の舞台は成立したといっても過言ではないと思っております。これって、なかなかないことだと思います。普段はいつもニコニコしていてふわっとしている十代の女の子。しかし本当の彼女は、まさに才能の塊。末恐ろしい存在です。。あなたが一華で本当に良かった。また是非ご一緒したいです!

 

○永井荷菜役:野口真緒さん

私的に、今回の作品は荷菜がキーパーソンだと思っておりました。芝居の勢いやテンポ感のスタートダッシュを担う役。スタートダッシュが終わった後もずっと作品の流れを作り続ける役、それが荷菜でした。私の中で最初に頭に浮かんだのが真緒ちゃんでした。サイズ感、芝居力…、ここは真緒ちゃんに託すしかないと。テンポ感や最後の方の感情的な芝居には何も不安はなかったのですが、荷菜のような明るくてどこか掴み所のない役というのが私の中では未知数でした。でもただの取り越し苦労。抜群の荷菜でした!

ここからは少しディープなお話になります。真緒ちゃんの長所でもあり弱点にもなりうる部分なのですが、彼女はとにかくベースの芝居力や脚本を読解する能力が高いので、稽古序盤から合格点を叩き出してきます。これは非常に驚嘆すべきことなのですが、実は稽古場では損をする可能性もあるのです。合格点をすぐに出してくれるものだから、それでOKになってしまい、時間のない中での稽古では他のできていない役者さんに稽古の時間を割くことになる可能性が高いのです。前回ご一緒した時は、まさにそんな感じでした。真緒ちゃんは最初からできていたのでほぼダメ出しもしなかったと思います。しかし、今回は周りのみんなも早い子がほとんどだったので、真緒ちゃんに色々と演出をつけることができました。誤解のないように言っておきますが、細かく演出をつけなくてもすでに出来上がっているんです。だからつける演出は、同じ表現方法でも真緒ちゃんが初手であまり取らないようなやり口を演出していきました。逆に芝居の手数を減らしたり、演技プランを捨ててシーンに飛び込んでみるといったやり方をやってもらったり、必要ないところでの面白表現(ボブジャックあるあるですね笑)などなど演出してみました。ここからは彼女の瞬発力の本領発揮。つけた演出をあっという間にクリアしていく。特に、航空公園で一華と話すシーンでの演出は、かなり難しめの注文をつけたにも関わらず「ちょっと待って、そんなに早く自分のものにできるのか!」と驚いたほど一撃でやってのけました。「この女優、底が見えん!」私の心の叫びです。もしかしたら彼女は戸惑ったかもしれません。私がつけた演出というのは「安定した芝居をしないための演出」だったからです。もう禅問答の境地ですね。この辺りのなぜ?を語り出すと超大作のブログになるため割愛します。

このお芝居のエンジンを担ってくれた真緒ちゃん。本当に素晴らしかったと思います!

 

○三島由紀穂役:宮島小百合さん

いや〜、本当に良い女優。脚本を皆様に読んでいただきたい。脚本を読んだだけだったら、さんちゃんという役があれほど際立った存在感を放つ役だと思えませんから。彼女の素晴らしいところは緩急ですね。もう抜群です。面白も真剣なシーンも自在にやってのける。またその緩急が抜群に素晴らしいので、どんなに振り切ってやってもちゃんと地に足が着いたキャラになっている。とんでもなく難しいことを、恐ろしいことにおそらくほぼ感覚でやっているのではないか?というところが、宮島小百合の天才たる所以です。

しーちゃんのことを一華に語るシーン。しーちゃんの過去を匂わせるような語り。一撃でしーandさんちゃんの世界が爆発的に広がる。あれ最初に稽古場で聞いた時、鳥肌もんでした。あまりにセリフの言い方が深かったため「しーちゃんは、幼い頃に殺し屋集団に攫われ、暗殺マシーンとして育てられた。人間の感情を持たないまさにマシーン。そんなしー が唯一言葉を交わす相手がいた。同じように殺し屋集団に攫われ、暗殺マシーンとして育てられたさんちゃん。さんちゃんはしー とは異なり、マシーンにはならなかった。殺し屋でありながら、人間としての尊厳を失っていなかった。さんちゃんがしー に人間の言葉を教え、しー は少しづつ人間らしさを取り戻していく。しかし、マシーンでなくなってしまったがゆえに、しー は重要な暗殺を失敗してしまう。組織に命を狙われることになったしー をさんちゃんは命がけで連れ出し逃げ去った。そして、今は某高校の演劇部員として密かに暮らしている…」とまで私の頭の中でストーリーが出来上がったほど。まあ、冗談はさておき、この「観客の想像力を掻き立てる演技」というものは実は非常に難しいのです。それをさっきまで「吹奏楽部、ぶっ殺してやりて〜」といっていた人がやるんです。この緩急。どっちも嘘に思えない。そして、会場いっぱいに響き渡る声も彼女の魅力ですね。激しいセリフはもちろん、静かで優しいセリフも会場に響き渡る。「優しいけど工具を持つと暴走する」という、ともすればテンプレートになりかねないさんちゃんというキャラクターを見事にとんでもない存在感のあるキャラクターに仕立て上げたさゆりん。本当に素晴らしい女優さんだと思います。ちなみに真緒ちゃんとさゆりんは同い年。全くもって恐ろしい世代ですね笑。11月のノッキンも今から楽しみです!

 

おお、3人でこの分量になってしまった…。コツコツ書きます。今回はこの辺で〜。