2018年7月11日〜16日まで新宿村LIVEで上演された舞台『降臨Hearts』が無事に全公演終了いたしました!公演中からそして公演が終わった後までもSNSなどで沢山のご感想・ご声援をいただき、本当にありがとうございました!

 

さて、恒例の演出ノート的意味合いを込めた振り返りブログを書きたいと思います。すでに次の作品の稽古が始まっているためいつもよりものんびりなペースかもしれませんが、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです。まずは、演出目線から見た今回の公演についてです。

 

普段、会話劇やストレート芝居の演出がほとんどの私にとって、今回の作品がガッツリアクション芝居の初めての演出でした。まあ、ちょいちょいアクションが入るようなエンターテーメント性の高い作品を演出したことはありますが、ここまでアクションが多い・アクションメインの作品は初めて。最初はうまく演出できるか少し不安でしたが、やってみればいつものお芝居を作る流れは大きく変わらず、途中からは楽しくて仕方なくなりました。アクションについては構成を伝え、殺陣師の押田さんに完全に委ねました。押田さんも作品性や私の意図をものすごく汲んでくれる殺陣師さんだったので、非常にやりやすかった。殺陣のクオリティをあげることについても最後まで粘り強くみんなを指導していただき、そしてみんなも一生懸命に食らいついてくれました。その結果、手に取るようにみんなの殺陣が向上していくのがわかりました。こんなにも嬉しく楽しいことはありません。多くのキャスト陣が殺陣初体験という環境の中で、クオリティも当然ですが、やはり「この戦いのシーンががあるから、次のシーンに繋がる」そんな「お芝居を成立させる」お芝居としての殺陣シーンにしようを合言葉に取り組んでもらいました。みんなを最後まで厳しくも愛情を持って引っ張ってくれた押田さんには本当に頭が上がりません。

 

今回の作品というか、芝居作りのテーマとしてみんなに伝えていたのは「うまくやろうとせず、とにかく全力で、今のあなたたちだからこそできる作品にしよう」ということ。荒削りでもいい、むしろ荒削りだからこそ伝わる「熱」と言いますか、そういうものを大事にしていきました。乱暴な言い方をすれば、お芝居は経験を積んでいけばいずれはどんどんうまくなっていきます。だから慌ててうまくなろうとしなくても大丈夫なんです。慌ててその場しのぎでうまく見せるために、セリフの言い方から何から全てを押し付けることは将来的にはむしろマイナスだとすら思ってます。課題を与え、それに向けて各々が「考えて」芝居に向き合うことが大切なんです。なので失敗しても良いのです。失敗したりうまくいかなかったりしたら「なぜか」を「考えて」、次に活かす。今回の座組の子たちは経験のある子も経験の少ない子も本当に向上心の強いキャストが多かった。各々が考えて悩んで、時には私に質問しに来たり、先輩の役者さんに教えを請うたり、どんどん成長していくのがわかりました。本番に入ってからも、みんながどんどん良くなっていくのが目に見えてわかりました。うまくいかなくて泣いている子達もいました。そういう子達に的確なアドバイスをしてあげる先輩陣。とても良い環境の座組でした。今まで沢山の座組を経験していますが、成長した度合いでは、今回の座組がナンバーワンだと思います。手前味噌になるかもしれませんが、本当に誇らしい座組でした!

 

さて、演出的な取り組みから言いますと、今回の作品ではとにかく全体のテンポ感をかなり気を使って作りました。シーン自体のテンポ感、シーンとシーンの繋がりのテンポ感、速さだけではなく、観客を物語に引き入れるための緩急などなど。なぜか? 物語が複雑で且つ敵味方が二転三転する流れだったためです。複雑だからこそ、脚本に描かれていないような部分も説明を追加して構築していく方法もあったかもしれませんが、なんかそれは脚本の面白さを消す行為のような気がしたのです。最初に脚本を読んだ時、私の頭の中を怒涛の情報量が通過し、そしてあっという間に物語が終わった気がしました。私はそのダイナミズムこそがこの脚本の面白さであり、表現するべきことだと思い、骨太にテンポよく物語をぐいぐい進めていく演出をしようと決めました。私はそれで正解だったと今でも確信しております。1回観ただけでは全てを消化しきれない作品かもしれないが、それでも面白かったと言ってもらえるような「熱」だとか「スピード感」だとかを全面に出して構築していきました。もちろん、ぐいぐい進む中でもみんなが一個一個のシーンをしっかりと丁寧に演じてくれたからこそ、怒涛の流れの中でもしっかりとキャラも立ち、ドラマもしっかりと描くことができたのではないかと。みんなにとっては、本当に体も心もヘトヘトになる演目だったと思います。

あとは、「沈黙を作るための音作り」とか「一つ一つの戦いをしっかり見せるためのシーンの細分化」とか「今までの降臨シリーズにはない降臨のさせ方」とか「とにかく走って移動(笑)」とかとか、私なりに様々な工夫を凝らして演出をさせていただきました。本当に作品作りが楽しくてワクワクして仕方なかったです。話が戻ってしまうかもしれませんが、それもこれも今回の座組だからこそ積極的に取り組めたのだと思っております。このメンバーでやれて良かった、この作品を演出できて良かったと心の底から思っております。

 

まだまだ書きたいことは沢山ありますが、まあ演出的な話はディープな方向にどんどん行ってしまうのでこの辺りで。次回からは、今回の作品を彩ってくれたキャスト陣について書きたいと思います。