さあ、長きに渡ってお送りしてきた振り返りブログもいよいよラストです。この『終わらない歌を少女はうたう』という作品、私にとってもものすごく感慨深い作品でした。正直な話、上演するまで不安でした。もちろん作品自体には自信がありましたが、こういうテイストの作品がお客様に受け入れられるかどうか・・・。特に物語Aは私のホーム、劇団ボブジャックシアターのテイストがかなり濃い。つまり地味なお話笑。もっと派手なお話の方が受け入られやすいのではないかという思いがなかなか払拭できませんでした。でも、キャストたちがみんな自信を持って面白いと思ってやってくれているのを見て、稽古場でいつも勇気をもらっていました。本当にこの座組だからこそ為し得た作品なのではないかと今でも思っています。みんなには感謝しかない。私もものすごく成長させてもらった現場でした。この場をお借りして改めて「ありがとうございました」と言わせてもらいます。

おっと、まだ本題に入っていないのにいけませんね。さて、物語Cのキャスト陣についての続きです!

 

○仙道景子役:伴真緒さん、山下ほなみさん

コロニークレアシオンの指導者的な立場。厳しい中にも優しさのあるそんな役どころ。また、人類やコロニーの置かれている状況(危機感)も表現しないといけないかなり重要な役。お二人ともしっかりと演じてくれました。

伴さんは、良い女優さんですよ〜!セリフの表現力も素晴らしいものがありましたが、とにかく表情が抜群に良かった。彼女の表情が物語Cの状況をよく表してくれていたと思います。表でも影でも。影芝居もとても良かった。また状況に応じたセリフの強弱や情感も本当に上手でした。台本もものすごく読み込んでいて、質問のレベルが高いこと高いこと。何度か「なるほどなあ」とつぶやいてしまいましたから笑。物語Cは役者のみんなが高まっていくのに少し時間がかかりましたが、彼女が良いきっかけや雰囲気を与えてくれていたことは間違いありません。いつも安心して見ておりました。やはり物語というものは、こういう脇を支える役の人が本当に大事。お芝居がグッと締まります。そんな彼女だからこそ、ごく普通の女性キャラの芝居とかも見てみたいですね。非常に興味がそそられます。あなたが物語Cの指揮官的な役で本当に良かった!

そんな伴さんに追いつけ追い越せで頑張ってくれたのが山下さん。年齢の若い彼女が指揮官的な立場の役をやるのは非常に大変だったと思いますが、本当に期待に応えてくれました。最初はやはり指揮官の厳しさやピリッとした雰囲気を出せずに苦労していたのですが、日に日に良くなっていき、本番では堂々たる指揮官っぷりだったと思います。背が高いという彼女の武器もうまく作用してくれました。迫力を出さないといけないセリフを本番前に何度も何度も繰り返し練習していたのがとても印象に残っています。やはり努力は裏切りませんね。稽古の始めからは別人のようなお芝居ができていたと思います。彼女は背が高いのでこういった役どころに置かれることが今後も多いかもしれませんが、今回で得たものを活かしつつ、さらに上を目指して頑張って欲しいと思います。何気にちょっと桃井カオリさんに顔が似てるんですよね。大人になってからも良い味を出しそうな女優さんです!

 

○一ノ瀬弥生役:井上千鶴さん、瀬野るりかさん

コロニーを守る兵士という役どころですが、非常に複雑な役。敵ではないのですが、朝美たちハジメを擁護するチームと敵対する役。でもそれは仕方がない。だって彼女も大切な人たちの命を機械たちに奪われているだろうから。そんな憎き機械の一部が自分の体を形成して自分は生きながらえている。朝美が「科学がないと地球の環境は維持できない。でも地球をここまで追い込んだのも科学」という矛盾に悩んでいましたが、弥生も同じように「機械がないと自分は生きていけない。でも自分から大切なものを奪ったのも機械」という葛藤に苦しんできたのだと思います。

そんなタフな役どころをお二人ともしっかりと演じてくれました。実を言うと、私の当初の演出プランではもっと弥生は怖くて激しくてイケイケなイメージでした。しかし、彼女たちは静かだけど心の中にはフツフツとしたものを抱えているというキャラを見せてくれました。やっていくうちに「おお、こっちもありだね」と思うようになりました。演出の考えなんていくらでも覆してくれていいんです。その方が作品が豊かになるはずですから。弥生の造形は彼女たちの力の賜物です。

井上さんは初舞台だったのですが、千秋楽での彼女の挨拶を聞くまですっかり忘れていました。多分最初に聞いているはずなんです。つまり彼女のお芝居が私からそういった概念を吹き消したのでしょう。それほど堂々たる弥生さんだったと思います。彼女の弥生は静かな中にも時折熱いものを見せてくる。ものすごくまっすぐな何かを感じさせ、役の人間性を肉付けしてくれていたと思います。初舞台であそこまでやれるんですから、絶対にお芝居を続けていくべきです。さっき書いたように、彼女にはまっすぐな役がとても合うかと。人柄もまっすぐなんだと思います。汐音ちゃんとの漫画シーンでは稽古場ではよく笑っちゃってたけど本番は大丈夫でしたね。良いコンビでした。

対して瀬野さんの弥生は「憂いのあるイケメン」。とにかく声がかっこいい!あの声は絶対に武器になるでしょう。なかなかいませんよ、自然な感じであのトーンでセリフを言える人。とても貴重な存在になる可能性大です!久しぶりの舞台だったので、稽古当初は少し目が泳いだり緊張した感じでしたが、慣れてきてからは彼女にしかできない弥生をやってくれていたと思います。舞台上での居住まいも実にいいんですよね、彼女は。そして、女の子しかいないアリスインさんの稽古場でたくさんの黄色い声が上がったのは初めてです笑。しかし、そんな弥生でしたがなぜかちょっと母性のようなものも滲み出てたんですよね〜。不思議。彼女の元々の人柄なのかもしれません。キャラクターの複雑さ、良いと思います!今後の活躍が期待できる女優さんです。あのロートーンボイスをお忘れなく!

 

○橘百合役:池澤汐音さん、岩﨑千明さん

コロニーのムードメーカ的な役割だった百合。兵士なのに明るくマイペース。でも、たまに吐く言葉がものすごく真理をついていたりする。なかなか侮れないキャラです。そんな百合を独特の空気感で演じてくれたお二人。とにかく二人とも実に楽しそうに演じていたのが印象的でした。

汐音ちゃんは最初のオーディションの時から印象に残っていました。まず声とセリフが実に明瞭。あと、見た目と声のキャラが非常にマッチしている。ものすごくお芝居うまくなりそうだなあという予感がプンプンしてました。あの百合が漫画を読んでサボっているシーン。稽古場で汐音ちゃんは毎回ちょいちょい変えてやってくれていました。実に意欲的。素晴らしい姿勢だと思います。もちろん最終的にはネタを固めてもらいましたが、その姿勢は見上げたものがありました。たくさん見せてくれたのであとはこちらが選ぶだけで良い。こういうやり方したのアリスインさんでは初めてかもしれません。彼女は表情もコロコロ変わるので見ていてこちらも思わず笑顔になってしまう。そんなお芝居をする子です。しかし、明るいだけではなく最後の方の緊迫したシーンではしっかりと熱い演技も見せてくれていたし、非常に幅のある良いお芝居だったと思います。次の出演作品は猛者どもが集まる大人の座組なので、是非たくさん揉まれてさらなる成長を遂げて欲しい。彼女なら大人の座組でも輝けるはず!

そしてちーちゃん。Dance!×3以来のご一緒。ていうこ、今更ながら結構Dance!×3組多かったんですね、今回の座組。いや〜、半年で随分うまくなりましたね。やはり若い子たちは成長が早い。前回はまだセリフの言い方に危なっかしさがありましたが、セリフが本当に明瞭になった。でも、ちーちゃんの独特な感じもしっかり残しつつなのでそこが素晴らしい。うまくなるにつれて個性が埋没していく役者さんも結構多いですからね。やはりお芝居には個性がないと。前半のふわっとした面白いシーンは「うまくなったなあ」と思って見ていたのですが、後半の迫力を出さないといけないところは最初はちょっと不安でした(そのシーンをやる前は)。しかし、いきなりパーンと迫力も出せるようになっていてまたびっくり。もっと出せるようになるだろうなと思っていたら、特に何も言わなくても日に日に良くなっていく。汐音ちゃんが最初っから結構迫力出してましたからね。「私もいくぜ!」と思ってくれたのでしょうか?でも、そうやって自発的にどんどん上げていこうとする姿勢はとても大切。独特の雰囲気に確かな演技力もついてくれば非常に楽しみな存在になりそうですね。

 

○三上綺羅役:朝比奈蒼さん、河合真衣さん

今作で一番セリフの少ない役。でも物語上の役割は非常に重要。最初に脚本を読んだ時に「少しセリフを増やしてあげたいなあ」と思ったのですが、キャラの設定上、そもそもあまり喋らない方が良い。なので脚本通りにいくことにしました。若い子たちの座組ではセリフの多い少ないで役の大きさを判断しがちな子たちがいるのは確かなので、何か彼女たちのやる気スイッチを押す良い方法はないものかと稽古が始まるまでは悩んでいたのですが、そんな心配は無用でした。二人とも稽古を全く休むこともなく、自分の稽古のシーンがきたら貪欲にそして少しでも良くなるように一生懸命に取り組んでくれました。素晴らしい姿勢でした。こういう部分を見ても「絶対この作品は良いものになる」と感じたものです。

朝比奈さんは色々と繊細な部分にも目を向けて芝居に取り組んでくれていました。綺羅は心に壁がある役。セリフの音量がどうしても小さくなってしまう。だからと言って大きな声で言ってもニュアンスが壊れてしまう。なのでセリフの音量をいつも私に確認しにきてくれたり、気づいたことやこういうのはどうですか?とかここはどうなってるんですか?とか色々質問にもきてくれました。目線やリアクションなども非常にうまく、とても良かったと思います。彼女はリアクションがものすごくいい。それは驚くとかそういうことだけではなく、相手のセリフを聞いている時の聞き方とかそういうレスポンスの部分。こういう部分が上手な子が本当にお芝居の上手い子なんだと思います。セリフはリアクション。アクションだけでセリフを考えていてはいけません。そういう当たり前のことを自然にできているのが素晴らしい。影のある見た目と声も非常に役とマッチしていましたね。この辺りは今後彼女がまず目指すべき部分だと思います。この子は良い女優さんになりますよーきっと。是非ご注目を!

河合さんはこの座組唯一の演技未経験者。でもそんなことは感じさせない演技を見せてくれました。声もよく出ていたし本当に大したものです。元々歌をやっていたのでアーティスト気質というものが身についていて、役にパッと入り込むのも最初から出来ていたように思います。憑依型の女優さんになっていきそうな雰囲気を持ってますね。彼女もよく質問にきてくれました。ガッツもあるしそういう姿勢はとても大切です。彼女はお芝居において自分で発信をする能力が非常に高いと思うので、今後さらに経験を積んで「相手から受ける」というものをもっと身につけていけばさらにお芝居が良くなっていくと思います。あと、彼女は表情が非常に良かったです。怖い時不安な時楽しい時、さっと表情に心の中が滲み出てくる。まあ、何度もいうようにとても初心者のお芝居には見えませんでした。これからもお芝居を続けていくのかはわかりませんが、是非続けるべきですね彼女は。非常に才能があると思います。でもやはりお芝居は経験です。たくさんお芝居に触れればその才能が開花すると思います。是非続けてね!

 

さてさて、これで振り返りブログは終了です。本番が終わってから時間が経ってしまいましたが、何としても書き上げたかったのでホッ胸をなで下ろしております。お互いにまた成長した姿でいつかご一緒したいものですね。今回の座組のみんなの中にはきっと「終わらない歌」が流れ続けていくことでしょう。公演をご観劇いただいた多くのお客様、本当にありがとうございました。そして是非彼女たちの一人でも多くの子達にこれからも声援を送って上げてください。よろしくお願いいたします!

 

『終わらない歌を少女はうたう』これにて幕!!

ありがとうございました!