大阪府東警察署で任意聴取受けた男性が警部補を告訴へ 警部補「何か言え! 殴るぞ!」


落とし物の財布を横領した疑いで、大阪府東警察署の警部補から任意聴取を受けた30代男性がその様子を録音し、公開。警部補が「殴るぞ!」などと話す様子が録音されていて、男性は警部補を刑事告訴する方針。


警部補「知らんちゃうぞ! おまえ、警察なめたらあかんぞ! 知らんなんかじゃすまんぞ! 知らんなんかじゃすまんぞ! おまえ! 逮捕状取れるねんぞ! おまえ捕まったことないやろ! ないやろ警察に!」


これは9月3日、大阪府東警察署の警部補(34)が行った事情聴取を録音したもの。

録音した30代の男性会社員は、落とし物の財布を横領した疑いで、警部補ら2人から任意で事情聴取を受けた。

男性は、無実を訴え続けた。


警部補「小さい子もおるし、ええとこのマンションに住んで、まじめに働いてるらしいやんけ。ちょっとしたできごとやんけ。人殺したわけじゃないし」

男性会社員「本当に何も知らないんですって。本当に僕、わかりません。言うてることが」

警部補「お前なめんなよ、こら! おい、黙るな! 何か言え! 殴るぞ! なめとったらあかんぞ。手を出さないと思ったら大間違いやぞ。大間違いやぞ、こら!」


事情聴取は7時間に及び、男性はようやく開放された。

男性は、警部補ら2人を刑事告訴する方針。


(10/07 18:55 関西テレビ)


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このような被疑者の人権を無視し


取り調べの名を借りた恫喝行為が行なわれていることについて


当然ながら弁護士会等をはじめ


様々なところから非難がでています。


詳しいことは、他のホームページやブログ等をみてもらえればいいので、そちらに譲ります。


問題は、そういった事件に直面した刑事弁護人としてどうするかです。


司法修習の二回試験などで出題されてもおかしくはない問題です。


今回のようにICレコーダーで録音されていれば、それを証拠に人権救済をすることができるのですが。


そうそう都合よく被疑者がICレコーダーをもっているわけがない


そうすると、仮に取調室で恫喝があっても、それを立証する手段がありません。

→警察が「恫喝しました」なんてことをいうはすがない。


暴行があり、かつ、傷跡があれば、接見のときにでも写メ撮って、それを証拠とすることはできます(そのまま、ータイで救急車を呼んで、搬送してもらう。そして、そこで診断書をとるのがベスト?)。

→接見中の写メがルール違反だとかぬかしている奴には弁護人の資格はない。


しかし、取調官もバカではなく、傷が残るような暴行はしない(最近の若い取調官の中には直情的な者もいて、傷の残るような激しい暴行をするケースもなくはないらしいが)。


そうなると、恫喝等の人権侵害があったかということなんて立証できない。


そもそも刑事訴訟のルール自体がおかしい部分もある。


たとえば、被告人以外の供述書面の場合(321条1項)は、裁判官 → 検察官 → その他(警察官含む)の順に信用性は低くなっていきます。いわゆる3号書面になると、よほどのことがない限り証拠能力は認められません。


これが、322条の被告人の調書になると、基本的に聴取主体で信用度の区別はありません。裁判官の面前だろうとも、警察官の面前だろうとも、証拠能力が認められるか否かの基準は同じです。

→だから、第1回公判期日前に、証拠保全して(179条)3号書面を1号書面に格上げするということをするが、自白調書の場合はそれすら不要になる。


そもそも、公判中心主義の観点から、322条の存在意義も疑わなければなりません。


被告人には法廷に出頭する権利があります。


それは、そこで被告人の主張を述べるためにあります。

→被告人には自己負罪拒否特権があるので、被告人に対して尋問する機会を与えるというのはあまり理由にはならない。


しかし、322条で証拠能力を認めてしまったら、被告人が出頭して主張させる意味がない。さらには、憲法の要請する公開法廷原則・手続保障原則にも反するものにもなります。


自白調書を伝家の宝刀のように扱い、自白調書が存在するとそれを覆すのが相当困難であるから、安易に自白を求めようとするわけです。

→補強証拠原則があったとしても、どれだけ機能しているかは微妙。


自白調書の証拠能力そのものを否定してしまえば(326条の場合は別として)、こういった問題は回避できます。


小生としては、322条を廃止し、公判廷での自白のみ証拠能力を認めるべきであると考えます。