問1 問1 短期賃貸借制度を悪用した事例が多かったため、旧民法第395条は平成15年により廃止された。これにより、たとえ民法第602条所定の短期賃貸借であったとしても、抵当権設定前後を問わず、抵当目的物についての賃貸借契約は抵当権者に対抗できない。


答え:×
 抵当権設定後に抵当目的物について賃貸借契約が締結された場合、たとえ民法第602条所定の短期賃貸借でも抵当権者に対抗できない。しかし、抵当権設定前の賃貸借契約の場合、抵当権設定登記に賃貸借について対抗要件を備えていれば、それを抵当権者に対抗することができる。これは、旧民法第395条の問題ではなく、民法第177条、第605条の問題である。


問2 物上代位とは法律が抵当権者保護のために認めた特権的効力であるとする見解に立つと、抵当権設定者が抵当目的物を第三者に賃貸した場合に発生する賃料債権について、これを物上代位することはできないことになる。


答え:×
 特権説を純粋に貫徹すると、賃料債権を物上代位することはできないようにも思われる。しかし、平成15年改正により民法第371条に法定果実も含まれる結果、賃料債権が物上代位の対象となることについて、特権説からも認められることになった。


問3 旧民法第378条の滌除が廃止され、新たに抵当権消滅請求制度がもうけられた。譲渡担保権者がかかる請求をすることができるかについて争いがある。これについて、譲渡担保権の性質をいわゆる所有権的構成ととったとしても、譲渡担保権は民法第379条の「第三取得者」にあたり、これを行使することができる。


答え:×
 旧法下のものであるが、最判平7.11.10は、譲渡担保権者の滌除権を否定している。


問4 土地に一番抵当権と二番抵当権が設定された後、一番抵当権が消滅、その後、二番抵当権が実行された場合、土地建物の所有者が一番抵当権の設定当時は別人だったが、二番抵当権の設定時は同一人だったときは、法定地上権が成立する。


答え:○
 最判平19.7.6。たぶん、法科大学院の演習でやっているような気がします。


問5 抵当権設定当時に、抵当地上に建物が存在しない場合で、かつ、抵当権設定後に建物が建築された場合、抵当権者は土地建物を一括して競売することができる。このとき、建物の建築は、土地所有者が行なってもよいし、第三者が行ってもよい。


答え:○
 民法第389条。いわゆる一括競売と呼ばれるもので、旧法下では抵当権設定者が建築した建物のみこれを認めていたが、平成15年改正により第三者が建築した場合でも、一括競売が認められるようになった。


<<参照条文>>

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。


(物上代位)
第三百四条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。


第三百七十一条  抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。


(留置権等の規定の準用)
第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。


(抵当権消滅請求)
第三百七十九条  抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。


(法定地上権)
第三百八十八条  土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。


(抵当地の上の建物の競売)
第三百八十九条  抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2  前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。


(短期賃貸借)
第六百二条  処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
一  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二  前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三  建物の賃貸借 三年
四  動産の賃貸借 六箇月


(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条  不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。


旧民法(平成15年改正前)

第395条 第602条ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵当権ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵当権者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵当権者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得