問1 平成12年1月1日AはBに対して返済期限を定めずに、500万円を貸し付けた。AはBに対して、平成12年1月2日に、500万円の弁済を請求できる。


答え:×

 期限の定めがない債務は債権者の請求時から履行遅滞になります(民法第412条第3項)が、消費貸借の場合は、相当の期間の定めが必要になります(同法第591条第1項)。翌日にすぐ返せというのは、認められません。 


問2 平成元年1月1日、Aは通り魔にあって、全治1週間のケガをした。平成2年1月2日にBが犯人として逮捕されたことを知ったAは、平成4年1月3日に治療費など、不法行為に基づく損害賠償請求ができる。


答え:○

 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」です(民法第724条前段)。ここで注意するのは「損害及び加害者を知った時」。つまり、両者はorではなく、andということ。したがって、損害の発生を被害者が知っても、加害者を知らなければ、消滅時効はスタートしません。本問では消滅時効の起算点は、平成2年1月3日になるため、いまだ消滅時効は完成していないということになります。

 短答でよく出題される問題です。


問3 AはBに対して1000万円の貸金債権を有している。この債権をCに譲渡したい。このとき、AがBに対して債権譲渡の通知をしなければならないのであって、CがAに代位して通知をすることはできない。


答え:○

 大判昭5.10.10。代位はできないが、代理して通知はできる。短答頻出問題です。


問4 AはBに対して1000万円貸し付けた。その際、Bの委託に基づいてCが連帯保証人となった。AがCに対して裁判上の請求をした場合、AのBに対する債権も時効中断する。


答え:○

 連帯保証人については、連帯債務者の規定が準用されます(民法第458条)。連帯債務者に対する請求は他の連帯債務者にも及びます(民法第434条)。その結果、時効が中断します(民法第147条第1号)。連帯保証人が承認した場合と並んで、短答では頻出問題です。


問5 BはAの土地を建物所有目的で利用したい。Bが死亡しても、Bの相続人であるCが引き続き土地を利用したいと考える場合、賃貸借、地上権、使用貸借いずれでもかまわない。


答え:×

 相続は、被相続人の一切の権利義務を承継します(民法第896条本文)。したがって、賃貸借や地上権、使用貸借も本来であれば、相続の対象となります。しかし、使用貸借の場合は借主死亡により効力は失います(民法第599条)。なお、使用貸主が死亡しても使用貸借は消滅しません。

 貸主、借主の死亡事例は短答でわりとよく聞かれています。


<<参照条文>>

民法

(時効の中断事由)
第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認


(履行期と履行遅滞)
第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2  債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。


(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。


(連帯保証人について生じた事由の効力)
第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。


(返還の時期)
第五百九十一条  当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2  借主は、いつでも返還をすることができる。


(借主の死亡による使用貸借の終了)
第五百九十九条  使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。


(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


(相続の一般的効力)
第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。