「過払い金返還請求」でググってみると


出るわ出るわ、法務事務所や司法書士事務所、法律事務所、弁護士事務所がたくさん引っかかってきます。


また、TV新聞などでも法律事務所がCM出しているのを見かけます。


さて、過払い金返還請求とは何でしょうか。


ひらたくいうと、払いすぎた借金を返してもらえることをいいます。


細かい仕組みは、法科大学院生や司法試験受験生ならご存知のことかと思いますが、改めて。


サラ金からの借金はおおむね29パーセント、出資法ギリギリの金利となっています(同法第5条第2項参照)。


しかし、利息制限法所定の金利はこれよりも低率です。


この差額をグレーゾーンといい、差額分は元本に充当され、それでも払いすぎた場合は、不当利得返還請求(民法第703条、第704条)で返してもらえます(※1・2最高裁判決より)。


冷静に考えてください。


これって、法律家頼る必要がありますか?


弁護士や司法書士に依頼した場合、報酬額はおよそ25~30パーセントとされています。実費(郵送料・訴訟費用・交通費等)は別です。


でも、債務者が個人でやれば基本的には費用はかかりません。もし、裁判沙汰になっても勝った場合は、訴訟費用は原則相手方の負担です(民事訴訟法第61条)。


不法行為、慰謝料請求など、裁判内外の紛争解決事務能力が強く要求される場面では法律家の手を借りることもやむをえないところでしょう。そうでないと勝てるものも勝てません。


しかし、これって、初歩的なエクセルの知識さえあれば、簡単に請求額出ますよね。


しかも、法律上・判例上当然に認められた請求権ですので、言い逃れしようがない。


ただ、弁済の事実の立証責任は債務者側にありますので、領収書やATMの控え等をすべて保管してあることが重要です。


もし、すべてそれを保管してあり、エクセルで計算した結果過払い請求が可能な場合は、法律家の手を頼らずにどんどん貸金業者と交渉しましょう。


応じなければ、裁判してもかまいません。


額によっては、少額訴訟という手も使えますので、法律家に「無駄な」報酬払うよりかはよっぽどましです。


仮に領収書等を紛失したとかでない場合。


一応、貸金業者に取引履歴の開示義務はあります(最判平17.7.19)。


ただ、取引履歴が改ざんされてしまうということがよくあります。


実は、こうなると法律家でも正直どうしようもない。


というか、どうにかしようという気がない。


取引履歴の改ざんの証拠をつかんでいれば問題はないのですが、貸金業者も百戦錬磨のエキスパート、そうそう尻尾をつかませない。


どうせ、債務者(依頼者)もあと残りどれだけあるかなんて覚えていないのだから、適当にお茶を濁しておけばいい。


そういう法律家は少なくありません。


だって、報酬の割にいろいろ交渉したり、書面作成したりと、面倒くさいですもん。


こんな割の合わない仕事、適当に片付けよう。


全員とはいいませんが、少なからずあるのではないでしょうか。


それだったらはじめから債務者本人が交渉から訴訟手続まですればいい。


今は便利な時代で、手続のやりかたから、訴状の雛形までネットに落ちています。


まあ、法律家を頼る唯一のメリットは交渉の際のバッジの威力というだけです。


どんなにヘボな法律家でもバッジがあれば、一応それにひれ伏しますからね。


ただ、それだけです。


あと、バッジが間に入ると、貸金業者からの取立てが止まります。


しかし、貸金業法の規制が厳しくなり、下手な取立てができなくなった現状、債務者が正しい知識をもっていれば(これもネットにおちています)こうした取立には対処できるはずです。


そうすると、これらのメリットもメリットといえるほどでもありません。


最近は、債務者(依頼者)を食い物にする弁護士・司法書士が増えています。


確かにクレサラは効率悪い事件かもしれませんが、それでも国民の権利利益の保護のため、一生懸命仕事をしてもらいたいものです。


なお、こうしたサラ金問題に真剣に取り組んでいる、立派な法律家もたくさんいることも注記します。



※1 制限超過利息を任意に支払ったときは、利息制限法1条2項により返還請求をすることはできないが、その利息は残存している元本に充当されるとした(最判昭和39年11月18日・民集18巻9号1868頁)。このように解釈した結果、金融業者側の計算では元本が減っていなくても、実際の元本は減少していくということが起こる。
※2 最高裁昭和39年判決に従うと、返済を続けるうちに元本が減少していき、いずれ元本は完済されてしまう。しかし、金融業者側の計算では元本は残っているので、借主は返済を続ける。最高裁は昭和43年、このように元本完済後に超過利息の支払が続けられた場合、過払いになった金銭(過払金)を不当利得(民法703条)として返還請求できるとの判断を示した(最判昭和43年11月13日・民集22巻12号2526頁)。その理由は、利息制限法1条2項は元本が存在することを前提とした規定であって、元本が完済された後には適用されないというものだが、結局、実質的に、利息制限法1条2項を空文化するものといえる。

<<参照条文>>

利息制限法

(利息の最高限)

第1条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が10万円未満の場合 年2割
元本が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
元本が100万円以上の場合 年1割5分

2 債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。


出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)

(高金利の処罰)

第5条第2項 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年29.2パーセント(2月29日を含む1年については年29.28パーセントとし、1日当たりについては0.08パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。


民法

(不当利得の返還義務)
第703条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。


民事訴訟法

(訴訟費用の負担の原則)

第61条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。