3, 4日前からナゴルノ・カラバフでアゼルバイジャン とアルメニアの軍事衝突が続いています。情報が錯綜しているので正確な数字はわかりませんが、すでに数十人の死者を出しています。

 

NKR = ナゴルノ・カラバフ

 

 

 

ナゴルノ・カラバフ?アゼルバイジャン🇦🇿?アルメニア🇦🇲?どこにあるの?というのが大半の人の認識だと思いますのでざっくり位置関係を説明すると、

 

欧州・中東・ロシア・中央アジアの間にあります。

 

 

中央アジアは00スタンがたくさんある地域。中国の西。

 

 

 

この地域は(南コーカサスと呼ばれる)ヨーロッパ、ロシア、イスラームなど様々な文化の交わる場所に位置しているが故に、複雑な歴史を歩んできました。

 

 

今回の軍事衝突も歴史的経緯が大いに関係しているものです。

 

 

 

 

まず、ナゴルノ・カラバフ(以下NK)、アゼルバイジャン (以下アゼル)、アルメニアのうち、国際的に独立が認められているのはアゼル、アルメニアのみです。

 

 

つまり、NKは独立国家として承認されていないため、日本で販売される地図にはアゼルバイジャン の中に含まれています。そのため、iphoneで国名を入力してもNKの国旗は出てこない

 

 

上の地図の通り、NKはアルメニアに隣接しています。そして位置関係から想像に難くはないのですが、NKは国際法上はアゼルバイジャンの一部であるのにも拘らず、アルメニア人が居住し、アルメニア人に支配されている地域なのです。

 

(世界を見ると一国の中の「少数民族」が特定の地域においては「多数」を占めているということは少なくない。しかし、wikiに記載されている2013年の公式統計によると、15万人弱の人口のうちNKにはアゼルバイジャン 人は6人しか登録されていないようだ。この異様な少なさはこれまでの紛争を経て居住していたアゼルバイジャン人のほとんどが追放を余儀なくされたため)

 

 

全人口が15万人弱と聞いて「小さ!」と思った人は多いと思うが、面積は秋田県と同じくらい。この人口にはおそらく動員されてくる戦闘員の数などは入っていないので今はもっと多いかもしれない。

 

 

実は上記の地図の黄色がナゴルノ・カラバフだが、薄い白色でこれにかぶるようにして囲われている地域は「アルツァフ共和国」という。

ナゴルノ・カラバフというのはアゼルバイジャン側の行政区画としての呼称で、アルツァフというのはアルメニア側が自称している国家の名称。

「アルツァフ共和国」が実質独立状態にある一方、アゼルバイジャン のナゴルノカラバフという行政区画は機能していないため、NKの代わりにアルツァフという名称を使っても良いと思うのですが、メディアなどではもっぱらNKが使用されている&国際的にも通用度が高いので今回もこちらを採用します。

 

 

 

 

 

 

NKの戦闘は2020年に入ってからも断続的に行われておりその度に死者を出していますが、今回は戦闘が大規模で両国が国全体として戦闘態勢に入っていることから、周辺国のトルコやロシアの介入も取り沙汰されています。

 

 

 

 

各国の立場を示すとこんな感じ

 

 

ロシア🇷🇺: アルメニア と安全保障条約を結んでいるため、アルメニア 本国が攻撃されれば助ける必要があるが、欧米からの非難を受けたくない&ベラルーシ🇧🇾、ウクライナ🇺🇦に続き、旧ソ連圏内にこれ以上火種を抱えたくないため、積極的な介入はせず、アゼルとの関係を取り持つことで影響力を行使したい。

 

 

トルコ🇹🇷: アゼルバイジャン のアゼリー人とトルコ人は同じトルコ系で、兄弟のような関係にある。また、アルメニア とはアルメニア 人虐殺をめぐって歴史問題もあって非常に険悪。したがってアゼルバイジャン支持を表明している。(実際に、アゼルバイジャン 料理はトルコ料理と似ていてとても美味しい)

 

 

フランス🇫🇷: 地理的には決して近くはない国だが、トルコの介入に対して反対。国内にはアルメニア系住民が多く、彼らの中には裕福で権力のある人も多いためロビー活動の影響力があるのかもしれない。

 

 

イラン🇮🇷: イラン北部にアゼルバイジャン 系の住民が住んでいることもあってアゼルバイジャン を支持している。

 

 

 

 

今のところ、各国のなかでガッツリ介入してきそうなのはアゼル支持のトルコだけ(もしくはイランも?)。

実は人口比やGDP比で見るとアゼル:アルメニアの国力比率は10:3くらいなのでアルメニア は不利な状況。本当に本格的な開戦状態になってしまったらアルメニア側が圧倒的に不利。

 

 

とは言え、アルメニアは国外に多くのディアスポラがいて、その中には有名なキム・カーダシアンなどもいる。彼女のTwitterでは祖国アルメニアの指示を呼びかけるツイートがあった。他に文字で同様の内容を伝えるツイートがあったが既に削除されてしまったようだ。

 

 

それに対してアゼルバイジャン 人はオイルマネーで国内で豊かな生活を送っている人は比較的多いものの、欧米で力を持っていたり有名な人は少ない。多分アゼルバイジャン 人で一番有名なのは国を治めている独裁者のアリエフ大統領。

 

 

ということもあって、国同士の総力戦が稀になってきた現代ではアゼルバイジャン がアルメニアを一方的に叩くという構図はあまり起きないような気もする。ただ、ナゴルノカラバフは国際的にアゼルバイジャン領として認められているからナゴルノカラバフ一帯を叩いてアルメニア人を追放するーーという展開は十分あり得るかも。

 

 

 

 

一番アゼルバイジャン側にとって実りが大きそうなのは、NKをアルメニアの支配から取り戻すことになるが、その過程でアルメニア人を殺したり、強制排除に動けば国際社会の反発に遭うに違いない。そうすればクリミア併合後のロシアのように経済制裁は避けられず、ナショナリズムの見返りに経済に大きな打撃を受けることになる。

 

 

しかし反対に、もしも、NK内のアルメニア人とうまくやりながら支配権を取り戻せられれば、国際社会はもはや誰も異議を唱えられないのではないか。何しろ、NKはアゼルバイジャン の領土として認められているからだ。

 

 

ただ、そんなことが可能だとは思えない。何しろ両国間の国民感情は最悪だからだ。両国のメディアでは連日戦果を称える報道がなされているらしく、Twitterなどでもアルメニアとアゼルバイジャン のリプやプロパガンダの応酬が繰り広げられている。

 

 

民族感情というのは抑えようがないものだ。教育や環境など諸々の要因でそういう感情は心の芯に植え付けられてしまう。感情的にならなければうまく解決できる「かも」しれないのに、外交、戦争が感情に操られてしまえば勝っても負けても人がたくさん死んで、日常生活が破壊されてしまう。

 

 

そう言えばYouTubeかTwitterか忘れてしまったが、この対立を伝えるニュースに対するコメント(or リプライ)で「自分と関係ない国での戦争はワクワクする」みたいなものを複数見かけた。まあ思ってしまうことは抑えようのないことなのかもしれない。が、少し想像力を働かせてほしいと思う。

 

 

実際にアルメニア人やアゼルバイジャン人がそのコメントを読むかは分からないが、少しでも両国に行ったことがあったり、関係を持つ人からすると非常に不愉快に思うだろう。

 

 

実際に死者が出ていることは間違いないし、これ以上エスカレーションが進めば死者は百人単位で出てくることだろう。実際に、ソ連末期から起きていたナゴルノ・カラバフでの内戦では大体3万人が死に、百万人以上が避難民になった。両国とも決して大国ではないので相当な損害である。