今回は、イギリス推理ドラマ「刑事モース〜オックスフォード事件簿〜」シリーズシーズン5第3話(Case 20)「殺意を誘う列車/Passenger」のストーリーを説明していきます。
視聴方法
ちなみに、刑事モースはNetflixでシーズン2まで「新米刑事モース」と言うタイトルで視聴可能でしたが、現在は版権の都合か日本版Netflixでは観れなくなっています
また、Prime Videoではシーズン2まで視聴可能ですが、シーズン3・4は「amazonシネフィル wowowプラス」への加入が条件のようです。
そして、2020年7月現在、日本でシーズン5以降をみる手段は、英国版DVDを購入して英語を解読しながら頑張って観るか、シネフィルwowowの放送で見るかしかないようです。
日本での視聴のハードルが高く、アマプラ+ネトフリ加入中の管理人は「これ以上サブスクにお金を積みたくない」と言う理由で止むを得ず英国版(日本語字幕なし)DVDを購入してみることにしました。
刑事モースシリーズはキャラクター描写が抑えめなので純粋な推理好きな人にはおすすめですが、BBC版SHERLOCKほどのエンタメ要素はないので万人受けするタイトルではないのかもしれません。(私はそこがお気に入りポイントなんですけど)
この回に関してはきちんと見返した上で記事を書いているので間違ったことはそんなにないと思いますが、前回までの伏線やキャラクター描写などには間違いが含まれているかもしれません。
間違いに気付いた方、コメント欄などで指摘いただけますと幸いです。
あらすじ(序盤シーンまでの解説)
ある朝、モースがサーズデイを車で拾いにサーズデイ宅に行くと、ちょうど出かけようとするジョアン(娘)とウィン(妻)に玄関で会う。ジョアンはモースに今度新居パーティをやると言って誘ってきた。
モースは「仕事が、、、」と言葉を濁しながらも「パーティに何を持って行ったら良い?」とジョアンに聞く。モースはまだジョアンに恋心があると思っていたがその割には微妙な返事。仕事がそれだけ忙しいのだろうか。もしかしたらプロポーズを断られていじけてるのか。
余談なんですが、モースがサーズデイ宅に迎えに行った時、家を出るタイミングでサーズデイが「Much in?」とよく言いますが、どういう意味になるんでしょうか??検索してもあまりヒットしない。
事件1: Missing Person
Frances Porterと言う女性が行方不明。彼女の夫と姉妹のJilly Conwayが警察署に来ている。彼女の夫によると、彼女はブティックで仕事をしているが、前日の夕方から仕事から帰っていないらしい。
モースはファンシーに担当を任せるが、内心は不安らしく「行方不明者の写真ももらおうとしない」とサーズデイに不満をこぼす。がんばれファンシー。
事件2: Lorry Hijack
Burt Hobbsは、頭を黒いマスクで覆った男に殴られ無残に殺され、荷物が奪われる。彼はバンの運転手で、ウイスキーやタバコなど雑多なものを積んだバンをスコットランドから運んできていた。夜ここについて、積み下ろしをやってもらっている間にパブで休み、パブからバンに戻ったタイミングで待ち伏せしていた輩に殺されたらしい。
今回はカウリー署盗難課からRonnie Box、Dawsonから派遣されてきてサーズデイたちは彼らと共同で事件の捜査を行うことになった。サーズデイには出世して位が上がるにつれ、だんだん現場から離れ、司令塔としての役割が期待されているらしい。現場の第一線で働き続けたいサーズデイに対し、「これは上から降りてきた話なんだ」とブライト警視正は説明する。
結局、サーズデイはBoxと話をして、強盗課2人とファンシーのチームとサーズデイとストレンジのチームで別の方面からハイジャック事件を捜査することになった。
また、モースは一転して行方不明事件を請け負うことになった。
Boxたちが派遣されてきたのは、ハイジャック事件が有名なギャング、エディ・ネロの仕業だと考えられているかららしい。モースたちは「ネロは不用意に人を殺さない」と考えているが。
ーーーーーー以下ネタバレを含みますーーーーーーーーー
サーズデイとストレンジが運送会社の社長ハーモンドに話を聞く。最近変わったことといえば、1ヶ月ほど前にインド系の男が仕事を求めてきたらしい。右頬に骸骨のタトゥーをしていて、変な感じがしたので仕事はあげなかったと。ここの会話いまいちよくわかりませんでした。頬にスカルってタトゥという理解であっている?
モースはフランセスが働いていたブティックに話を聞きに行く。ブティックはヒッピー的な?エスニック系?の雰囲気で、主人マーティ・ペドロもそんな感じのノリをしている。当時の流行なんだろう。同僚のAnoushka Nolanに話を聞くと、どうやらフランセスは店の備品の帽子と赤のヒールを勝手に借りて”ドン”と呼ばれる男とデートしていたようだ。
モースがフランセスがドンと密会していたモーテルの場所を聞いて訪れる。2人はすでにチェックアウトしていていなかった。しかし、モーテルには駐車の登録の記録が残っていたので二人が乗り付けてきた車のデータは手に入った。
翌日、車の所有者の情報からモースはDon Mercerをドンだと考え訪れる。既婚者同士の不倫をドンはあっさり認めるが、彼女は本名でなく姉妹のジリーを名乗っていた。
フランセスが行方不明になったその日、二人は一緒にランチを食べ、モーテルの部屋に戻ったが夜を一緒に過ごすことなく、フランセスはドンと別れ一人で電車に乗ってオックスフォードに帰ったという。ドンはモーテルから最寄りのKing Oakの駅まで彼女を送ったが、一緒に電車に乗ることはなく、あとのことは知らないという。
しかし、当日彼女が行ったKing Oakの駅からOxfordに向かう電車はなかった。当日はどうやって彼女はオックスフォードに帰ったのだろうか。タクシー?
、、、と思ったが、駅長とモースに会話を盗み聞きしていた電車ヲタクCedric Naughtonによると、当日は時刻表に載っていないゴースト・トレインと噂される電車が運行されていたという。彼女はそれで帰ったのかもしれない。
Cedric Naughtonは軽い吃音持ちでちょっとぎこちない雰囲気のある35歳くらいの男だが、彼は教育省の職員としてSchools Inspector(視学官)として働いているらしい。
*視学官...現在では聞き慣れない言葉だが、日本にも戦前には存在した制度らしい。日本においては、学校の教育の質を調査・報告する役目を超えて教員の人事・思想の統制にも影響を及ぼしたとwikipediaには書いてある(「視学制度」: https://ja.wikipedia.org/wiki/視学制度 ) が、英国には現在も存在していて、原義に近い職務を負っているようだ。
彼は「お母さんは自分をコンサート・ピアニストにさせたかった」とかモースが聞いてもいないことも喋ってくる。(これが実は結構伏線になったりする)
セドリックによるとオックスフォード市内に直通する電車はもう廃止されてしまっているとか。
モースは思い立って電車で署まで帰ってみることにするが、同じ車両にモース以外に利用している人の姿は見えない。当時既にモータリゼーションの波にさらされていて、交通手段としての鉄道は時代に取り残されつつあったのか。
モースは途中線路のそばにあった電車の残骸が気になって歩いて行ってみる。係員によると昔使われていた支線の線路らしいが、1964年に支線は廃止になり、現在は線路としては使われていないらしい。モースはその線路の上を進んでいく。(現在の日本でやったら炎上しそう。)
途中、今は廃駅となった場所に出くわすが、駅舎を見るとハエがたかっていて様子がおかしい。中に入るとなんとフランセスと思われる若い女性の死体があった!なんという偶然。。。
駅の周囲は一面農場で、そもそもなぜ駅が作られたのか理由は謎。インフラなので全く無駄ってわけではないが、当時のイギリスの電車は国営企業だったのかな。作ったのはいいものの、需要がないため淘汰されることになったのか。
準レギュラーのオックスフォード・メールの編集者、ドロシア・フラジルによると、1964年に似たような殺人事件があったらしい。
それがリンダ・グレシャム事件で、同じように廃駅の構内で死体が発見され、死体はやはり靴を履いていない。その駅もこの近くにある。
検死によると、フランセスは締め殺された挙句、性行為が為された跡があるらしい。しかも妊娠2ヶ月だった。
フランセスの姉妹、ジリーに話を聞くと、夫婦生活は必ずしも順風満帆というわけではなく、浮気していた雰囲気を感じたという。
ドン・マーサーは女ったらしでいろんな女と寝ているらしい。テレビCMもやっている大きな飲料会社に勤め、社内に個室を持っているということは、きっと地位もお金も兼ね備えているのだろう。
現時点で最後にフランセスと接触しているのは彼なので当然疑われる。目撃者の証言をつなぎ合わせると、彼は駅までフランセスを送ったのではなく、口論になって結局彼女を降ろして歩いて駅に向かったという。
一方、ハイジャック事件を盗難課二人と捜査していたファンシーは捜査に参加させてもくれず、雑な扱いをしてくるボックスたちに不満を持つ。
ファンシーたちは盗まれた荷物をチェックし、その中にキロランウィスキーというウィスキーがあったので、安く流通しているキロランウィスキーが流れていたら、それを売っている奴は強盗犯と繋がりがあるだろう、ということなのか(ここら辺は類推)、
ファンシーはトゥルーラブに安いキロランウィスキーを見つけたら報告して!と依頼していた。
トゥルーラブは路上マーケットにて、ロイド・コリンズというジャマイカ系移民がレコードを売るのに使っていた箱がキロランウィスキーのもので、箱に書かれていたウィスキーの値段が安いことに気づいた。
と同時に、他の売り物の一つがモースが所有していたが空き巣に入られた際に盗まれたレコードらしく、盗品を売っている悪徳商人である可能性が浮上。
翌日、早速ファンシーは単独でロイドコリンズを訪れる。「パーティをやるのだがアルコールを安く手に入れたい」と言って大学生のふりをして接触を図って取引を試みる。以前の彼ならモースやストレンジに任せていたかもしれないが、今回はクズの盗難課刑事には頼りたくないと一人で頑張りを見せる。
ここらへんでファんシーとストレンジが一緒にストレンジ宅で夕食を食べているシーンがあるが、ファンシーってストレンジ宅に居候してたんだっけ?
そしてそのひ、ノーランが死体となって発見される。当然フランセスと64年のリンダ・グレシャム事件との関連性が疑われる。しかもノーランが発見された原っぱはグレシャムが発見された駅のそばらしい。
殺され方はフランセスやグレシャムと似ていて同一犯が疑われるが、モースはノーランが靴を履いたままな点やブラジャーで締め殺されていない点が引っかかる。
つまり、殺され方に同じ点もあれば合わない点もあるのは、今回の犯人は模倣犯で知らない情報があるからだと推理する。
ボックスとトゥルーラブは署内で鉢合わせ、トゥルーラブに駐車違反を指摘されていたボックスは、「女のくせに」とトゥルーラブを脅す。彼女も引き下がらず、それが気に食わないボックスは女性差別的に罵倒した挙句彼女に手をあげようとする。やりたい放題のボックスにブライト警視正は盗難課の二人を捜査から下ろすが、ボックスは警視正にも言いたい放題。
シーズン2でボックスたちの所属するDivisionの下にカウリー署があるという権力構造が示唆されており、階級上はブライトの方がえらいと思われるが、「どうせカウリー署のトップ」だということでボックスは偉そうにしているのか。
モースはワインを持ってジョアンの新居パーティに行くが、ジョアンはモースにクロディーヌというフランス人のフォトジャーナリストを紹介する。しかしモースが好きなのはジョアンその人なので、以前プロポーズを断られたのに続いて、これで完全に振られたことを察する。
その場でモースはジョアンの紹介を断り、さっさと帰るが、帰り道たまたまクロディーヌと出会い一夜を過ごすことに。
翌日の朝、ファンシーはロイド・コリンズとの取引を行い、彼のウィスキーを受け取りに行く。ストレンジ、サーズデイ、モースも陰で見守ろうとするが、ファンシーが約束の場所に着いた時、ロイドは既に殴られて瀕死状態。
ロイドはCromwell Amesがやったとだけ言い残して死んでしまった。デブリン先生によると、殺され方としてはリアム・フリンと似ているらしい。
サーズデイとストレンジはエディネロの影響下にあるバーを訪れクロムウェルエームスに関する情報を得ようとするがバーテンは知らないと答える。が、絶対バーテンは何か知っている。二人が店を後にすると、バーテンは誰かに電話して警察官が来たことを伝えていた。
モースはフランセスの母親に会いに老人ホームを訪れる。彼女は痴呆でまともに会話もできないが、部屋に飾っている写真はフランセスのものばかり。しかも不思議なことにそれら写真がジリーだと思っている。いくら痴呆があるからと言って自分で育てた姉妹の顔を間違えることは不自然な気もする。
優しいモースは母親にフランセスの死を切り出すことができなかった。
なんと、偶然、その老人ホームで母親の世話をしているグレシャムはグレシャム事件の被害者リンダの母親だった。ついでに彼女に当時の話を聞くと、リンダにピアノを教えていたのは、あの鉄オタのCedric Naughtonだった。すごい偶然が重なる。
オチ
そこでモースは閃いた。コンウェイ家は政治家とのパイプもあった裕福な家系。しかしコンウェイ母のお気に入りは次女のジリーで、ジリーが生まれてからは妹の方にばかり投資していろいろな習い事をやらせたが、長女フランセスには目もくれなかった。遺産相続も全て彼女に継がれることになっていた。
長女フランセスは嫉妬に嫉妬の思いを重ねてきたが、それに加えて夫の旅行代理ビジネスがうまく行っていなかった。そこで、ジリーを殺し、死んだのはフランセスだということにして自分がジリーになり変わったのだ。ジリーとして母親の遺産を受け継いで夫のビジネスの足しにする(もちろん自分でも好きに使う)。警察にはジリーの写真をフランセスの写真として提出、遺体の確認も夫婦で行えば誰も気づかないだろうーー。
ーーというのが計画。ジリーはマーサーと揉め、帰りの足を夫婦に求めた(結局、マーサーの浮気相手は既婚でなく未婚女性だった)。二人はゴーストトレインと呼ばれる不定期列車に乗ってきた彼女を車に向かい入れて、車内で殴り殺した。殺した後は過去のグレシャム事件との関係性を偽装して同一犯の仕業に見せようとしたのだ。また、グレシャム事件に似せるために、二人はわざわざ性行為の跡を残したということになる。やばい奴らだ。
グレシャム事件はたまたま母親の介護施設で担当者がグレシャムの母親だったから計画を思い立ったらしい。
ノーランは死んだはずのフランセスを街で見かけ、跡をつけて家を訪れた。フランセスは自分たちの計画が外に漏れることを恐れて口封じのために殺したのだ。
たまたま口封じの被害者はノーランだけだったが、外に顔見知りがいれば同じように殺したに違いない。しかし、それが男だったら別の方法で偽装しなければいけないだろう。
一方、駅長の妻が家にいて襲われる。彼女はうまく抵抗して一命を取り止め、誰がやったのかもわかる。セドリックだ。結局グレシャム事件の犯人も彼で、性的興奮を得るために殺したのだ。第2、第3のグレシャム事件が発生したタイミングで、どさくさに紛れて殺そうと思ったのか。結局、彼はモースたちから逃走を図るも、刑に服す前に線路に飛び込んで自殺した。
一方、車のハイジャックやロイドを殺した犯人は未だ分からず。クロムウェル・エームスやガイコツのタトゥーを手掛かりに次回以降に持ち越しとなった。
前回のフリンの殺人事件も一緒にS5最終話あたりで明らかになるだろうか。
今回の一連の事件も「意外と近くに犯人がいた!」というパターンになった。
ただ、エディ・ネロ関係の事件は全話も含め解決には至らず。
前のほうのシーズンだと、話の展開が進むにつれ出てくる事件が基本的に全て重なるので、どういうところが結びつくのかな?と考えながら観ることが多かったが、今シーズンはエディ・ネロ関係の事件だけ他の事件とは一致せず話が完結しているところが興味深い。エディ・ネロ関係の事件はババ抜きの「ババ」の役割を果たしていて、変化球的な作用が働いていて、オチが予測不可能が展開になるので面白いと思う。