第9章 市民による君主政体について
*ここで解説するのは、私人が君主に成り上がる時に前提となる2つの方法(力量と運命)以外の二つ(極悪非道と市民による好意)の後者について
具体的には、都市内の党派の抗争を経て謀略を連ね君主に成り上がるということであるが、その対立構造には説明不可避なものが存在する。つまり、民衆と有力者(貴族)である。民衆は有力者に命令されまいと闘い、有力者は民衆を命令しようと闘うのである。この対立により、次の3つのうち1つの結果が生じる。
- 君主政(有力者たちが原因とも限らない)
- 自由 ex. ローマの共和制
- 放縦(過剰な自由) ex. 当時のフィレンツェ
ここでの君主制は民衆か有力者のいずれかの層の支持を受けたものが君主になるのだが、政体の維持に関しては前者の支持を受けたものの方が容易にこれをすることができる。なぜなら、後者の支持を受けた者は自分と同等に君主として見出されるものが他にも複数いるからである。それに対して前者は自分と並ぶものが他におらず、民衆を意のままに扱うことができる。
どちらの層から君主に成り上がったにしても、両者を考慮し支持を取り付けることは不可欠である。
下心の上にあなたに恩義を感じていないものたちについては一層の警戒が必要となる。彼らはあなたが滅亡に瀕している時、必ず敵に手を貸すだろう。もしあなたが民衆の支持を受けて君主になった者であったなら、彼らは抑圧されないことを望んでいるだけであろうから、友好関係を築くだけで十分である。しかし一方で、あなたが有力者の側から支持を受けて君主になったものであったなら、民衆のことは最優先でなければならなくなる。彼らは都市の人口の大半を占めているのだから。それは困難そうにも見えるが、実は逆に容易なのだ。なぜか。人間というものは、危害を加えてくるだろう相手から恩恵を施されると、その相手に一層の恩義を感じてしまうからである。結局民衆は自らが立てた君主より、有力者層に立てられた君主により恩義を感じる結果となる。
このようにして生まれた君主制を維持するために最重要なのは、自分の味方になる人材を保つことであるが、それは時に容易ではない。特に、君主自身が命令を下すよりも、執政官(行政府)を介して命令を下している場合、執政官たちの意思に左右されがちで、不安定な時期によっては君主をその座から引きずり落とすことも可能になってしまう。民衆たちが執政官を通じて統治されることに慣れてしまっていたら一層その危険は増す。不安定な時期になってから、味方になってくれる人材を探すのでは遅く、君主は常に市民たちが彼を必要としてくれるための方法を考え実行する必要がある。