第7章
他軍の軍備と運命で獲得した新しい君主政体について
- 自らの力量ではなく、(偶然、金背の力、あるいは他者の好意により)成り行きで君主に成り上がった者がそれを維持するのには多大な困難が伴う。例えば、古代ギリシア時代の小アジアでは、ダレイオス王が自らの権力を幅広く行き渡らせ政権を維持するために地方総督に既存の君主を就けたが、そのときは君主の地位を維持させるために賄賂が横行した。何故なら、偶然や人間の意志というのは大変変わりやすく不安定であるからである。また、その時就いた君主たちはこれまで私人として生きてきた君主としての経験を持たない者たちであるから、命令を下す術を知らないし、また自らのバックとなる軍事力を持たないから、その地位を保つ力も持たないのである。
- 通常、先述の通り世襲により生まれた君主はその維持は容易と書いたが、その例外もある。チェーザレ・ボルジアである。彼は父親(教皇)からその地位を継ぎ、結局は父親の急逝によりその地位を失うことになる(地位を維持するのに失敗する)のだが、彼の政策は正しく、取るべきものであった。彼は実力があったのにも関わらずその地位から転落してしまった理由は、不運であった。彼と父親アレクサンデルは自らの領土の基盤を短期間で固め、地元の有力者を見事に手なずけた一方で、フランス王という巨大勢力からの影響力から遠ざけることにも成功していたが、両者は病に倒れることになった。チェーザレ・ボルジアが犯した唯一のミスは教皇の選出ミスであったが、皮肉にも彼はそのせいで破滅に自らを引き入れてしまったのであった。