明後日の方向「長い墓標の列」@座・高円寺 | 佐野みかげ ★ Girly life

明後日の方向「長い墓標の列」@座・高円寺

終演から4日も経ってしまったけど、

感想を書くと約束したし、

配信もあるらしいので、観劇記、ちゃんと書きます🫡

 

1月18日、大千穐楽。

世莉さんの芝居を、久しぶりに観た。本当に久しぶりに。
物凄く久しぶりに観たけど、世莉さんらしいなぁと思った。

世莉さんらしく難解😁笑(貶してないですよ!)

懐かしいややこしさ。

おそらくご本人、全然わかりやすいつもりだろうけど、

ちょっととっつきにくい。親切にわかりやすくない。

そこが世莉さんらしい。

主人公の生き様と被る。

 

「演劇」である。「演出」をする、って事なんだろうけど、

まず、男女逆転の配役(これはすぐに呑み込めた)
セットもなく、稽古着のジャージに役名のゼッケンをつけた俳優。
稽古場を見せられてるかと錯覚する様な1場。

(これで4500円?って最初は思った💦)

物語を全く知らない側としては全然わからない。

ついて行くのがやっとだ。

でもこれが実は後から、遅延毒の様にジワジワと効いてくる。

 

現在から始まって過去に戻るのは、演劇では良くある手法だけれど

これ、初演は戯曲通り、時間軸は順番に進んでったそうだ。

(過去から現在へ)
今回の、現在から過去に向かう展開の方がオシャレだし、

印象的なラストになったと思う。

ただし、1場はさっぱりわからない(笑)

兎に角美味しいから食えよと言われている、外国の料理みたいな気分だ。

 

 

2場に入って目が覚めた様に徐々にわかりやすくなる。

(ちゃんと関係性とかが説明されるからだ。衣装もジャージから

一応、各キャラクターを表現するような衣装に変わる。

私は、世莉さんの衣装のセンスが好きだ)

 

1場で謎の人だった主人公の山名教授は、水を得たかの様に喋り出す。

1場でただただ死んじゃった人達も、

ちゃんとそれぞれの、輝いた人生を歩き出す。
みんなの顔と名前と関係性と人生が見えて、初めて物語に興味が持てた。

つまり1場の間は、何が何だかわからないけど、とりあえず観てて、

ようやく入り口に入った気分になれたのが2場だった。

(私はね。みんながそうじゃないと思うよ)

 

 

2場〜4場までは集中して観られたので、時間は感じず。
青山円形劇場みたいな、観客が対面する舞台の使い方も、
野田地図で観た様な(マームでも観たな)
出番ではない俳優が舞台脇(外)に座ってて、

そこから声を発したり、そこから出演してくる形式も、

見える裏で着替えて出てくる(そこに着替え時、灯りが入る)のも
非常に計算し尽くされた演出で、

衣装の変化とかもちゃんと意図があって、センスがあって

でもそういう目に見えるものとは全く別に、

戯曲の持つ力、科白の持つ力、この戯曲を2024年に上演する意味、

個々の俳優の持つ実力が
地味な織物の様に絡んで、底力のある素晴らしい作品だった。

でもね、世莉さんの良さって物凄く玄人向けな気が私はしてね、

(貶してないんですよ。褒めてるんですよ)
着物で言えば泥大島みたいな、めちゃくちゃ手が掛かってる

質実剛健なんだけど、パッと見地味、みたいなね、

そんな気がするんですよ(マジで悪口じゃないですよ。マジで)

そこが世莉さんの良さであり、

譲れない部分であり、

だから、山名教授と重ねて観てしまうんですけども・・・
 

 

あの立場と状況に置かれた時に、自分はどうあるだろうか。
家族を巻き込んで、全てを失ってでも己を貫き通すか、
城崎のように「ただ目をパッチリと明けて時代を見据える」という事に

己を落とし込んで納得させるか

花里の様な弱さで己を正当化するか

自分はどうなのだろう。どうありたいのだろう。

いざとなったらどう振舞ってしまうのだろうか、と私も考えた。

 

この時代(日本が戦争に向かって行く時代。昭和13-14年)のお話って、基本「男と歴史」みたいな話なので、殆どの登場人物が男性なんだよね。

今回は男女逆転劇だったので、

出演者は女優ばかりだったけど、役は男性の話。

逆に、男性の俳優は2名のみで、2人の物語は「家の中の話」なんだ。

男女逆転した事でより一層、そこはハッキリした。

この時代の女性は「社会との関わり」がないから物語がないんだよね。

(女性は参政権もない時代)

あるとしても大変個人的な「個の世界」の話でしかないので、

広がりがないというか、だからあんまり描かれないんだなぁと思った。

この時代の女性は、誰か男性を通してでしか、
社会と繋がっていなかったんだと思う。
幸運な事に、今の私達には想像がつかないけれど。

 

 

あとはもう、グダグダとしたただの感想になってしまうけど、

 

劇中で何度も言われていた

「てんこうして下さい」「私はてんこうしない!」って

家に帰ってパンフ読むまで「転校」だと思ってた。

(大学教授の話だったんで)
「転向して下さい」だったんですね。
政治的主張を変えろ、と。

いやー。学校を追い出される話だと思って観てましたよ💦すみません。
 

主人公役のヒザイさん、帰りの電車でプロフ見たら「2児の母」って、

えええええええ。

子育てしながらあの科白量、どこで覚えるのぉおおおお?

ホントに、世の中の全てのママさん俳優尊敬しますよ😭
私なんか、猫しか居ないのに、あの科白量全然覚えられない自信ある。

他の俳優さん達も地方からおいでの方が何人も居たから

稽古期間だって長くはなかっただろう。

いや、みんなホントすごい。

あの量の科白を、淀みなく喋れるだけでほんと凄い👏

尚且つ、芝居が良いのでもっと凄い✨

 

 

話戻るけど、終演後にね、第1場がジワジワと来るんですよ

観てる時全然意味がわかんなかった

ある意味、興味を持とうとする努力も無駄に終わりそうだった1場が
じんわりと痛みを持ってやって来て、

「これからどうなる!」っていう、

煌めく炎のようなラストシーン🕯の続きが、

あの1場だったんだなぁって思うと

苦い様な味が口の中にじわ〜っと広がって
いろんなね、微妙な気持ちに、
忘れかけていた1場が走馬灯の様に頭に戻ってくるんですね。

(そこは最後にもちょっと仕掛けがあると思う。

そこに皆が引っかかるのかどうかはわからないけど)

 

 

これさ、劇チョコさんがやったら全然違うテイストになってたと思うんだ(どっちもファンなので、どっちが良い悪いではなく、

ただ、色も味も全く違っただろうなぁと)
どういう風に料理するか、っていうのが演出家の色なんだよなぁって
つくづく考えたりしました。  私は、難解な世莉さん 好きだよ。



終演後に会えました。なぜかブラックサンダーくれた。



この、空が映り込んでる感じ、よくないですか。
私の中で墓標っぽい。夕方なのも切ない。

高円寺にミスドがなくなったのはもう5年も前の事ですが、
難解な芝居を観た後は、ドーナツ食べたいんだよ。

ドーナツとコーヒーで落ち着きたいのだ😢
ミスドの後の、日高屋さんももうないんですね。栄枯盛衰💧