私は依頼者さん宅に留まり、室内で残留された証拠を探した。

そして、その調査は早朝まで及んだ。
しかし、その所在をつかめるはずも無かった。

そして、朝方。
私はどうやら、依頼者宅で居眠りをしていたようだ。
ふと気がつくと、私は依頼者のメモ帳を持ったまま立っていた。

(立ち眠りか・・・。)

そのメモ帳には、絶望したり希望を持ったりする依頼者の心情が書き込んであった。

(何となく変だなぁとは思っていたが・・・。)

全くどこに行ったのかはわからない状態である。
私は、もしかしたらすでに自殺してしまったかもしれないという焦りを感じていた。

しかし、事態は急変した。
朝出勤した代表代理のサザビーが、事務所前で依頼者を発見し
事務所の会議室に招いていたのだ。

※サザビーはこの事態を全く知らない。


サザビー 「えっ!!遺書おいて家出したの!!オッサン!!」

阿部   「ああ、だから、俺が行くまで止めておいて欲しいんだよ。」

サザビー 「待たせるも何も、あべちゃん、待ってるってよ。」

阿部   「な、何!!」

サザビー 「まっ、適当に相手してるから。」

阿部   「頼んだ。」


事務所に奥さんらを連れて戻ると、依頼者は一瞬、目をそむけた。


奥さん  「今死んだら、逃げただけじゃないの!!バカ!!」


事務所の会議室は、家族会議の場になった。
もはや、私の及ぶところではない。

私は会議室を出ようと、席を立った。


依頼者  「死のうと思ったら、阿部さんに謝らなければと思って
      ここによりました。お恥ずかしい。」


        終わり



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