ちょっと前の話だけど。

ずっと楽しみにしていた映画、「BLINDNESS」を公開初日に見てきました。



ネットでレビューを見ると、かなり評価が極端に分かれてしまっているけれど。

批判的なことを書いている人は多分、Jose Saramagoがどんな作家だか知らないんだろう。

というより、この小説にあるバックグラウンドを理解できていないんだろう。


かなり暴力的な映画だという人が多いみたいだけど、

そもそもこの話は、Jose Saramagoが

「もし人々がみな目が見えなくなってしまったら、想像もつかないほど暴力的な社会になるだろう」

という前提の上で書かれたものだから、映画がそのようになるのは当然のこと。

この本に対してノーベル文学賞を贈られた理由が

「想像力、憐れみ、アイロニーに支えられた『寓話』によって我々が捉えにくい現実を描いた」

であることを考えれば、

一方的な批判にはならないはずなんだけど…。


宣伝文句をそのまま受け入れてしまえば、分からないでもない。

この映画は、パニックムービーでも、サスペンスでもない。

勝手にイメージを作り上げ、期待する方が間違い。

原作を読めとは言わないけど、原作者がどういう作家なのか、Fernando Meirellesがどういう監督なのか。

知っていれば必然と理解できるはず。



Jose Saramagoは、ずっと映画化を拒否し続け、実現するためにいくつかの条件をあげたそうだ。

舞台を特定できない大都市にしてほしいこと。

多くの人が見られるよう、ポルトガル語ではなく英語での映画にしてほしいこと。

そして、「アメリカ映画にしてほしくない」。

アメリカ映画ではないこと…つまり、娯楽性を求めるものにしたくない、ということだと私は思っている。

しかし…日本では?

そもそも、こういう映画は、万人に受け入れられるものではないのに、かなりの数の映画館で上映している。

日本人俳優が出演しているから?

カンヌや東京の映画祭で話題になったから?

そのあたりの意図が、私にはよくわからない。

Jose Saramagoの「多くの人に見てもらいたい」という意思にはあっているけど。



私はこの本がすごく気に入っていたので、大満足。

かなり省略されている部分もあるけど、原作に忠実だったと思うし。

原作が好きな人からの評価は結構高いと思う。

それはカンヌでJose Saramagoがこの映画を初めて見て、

「フェルナンド、私はこの映画を見てとても幸せだよ。まるで本を書き上げたときのようだ。」

と話し、涙ぐんでいることからも言えると思う。

彼が意図して書いた物語を、そのまま映画で表していたから。

(その様子はこちら で見られます)

もし、興味がある人は、

「楽しめる映画ではないこと」を前提に見れば、それなりに受け入れられるんじゃないかな。