(幻)······
いつもの4〜5倍は練習していますね?
(睦)······
そうですかね。 あとで地獄に落とされますから、心をナチュラルにしておきます。
ロバート・レッドフォードさん主演の「ナチュラル」といういい映画がありましたね?
・存じています。
あっそ。
で、今宵は、モーツァルトのオペラやジング・シュピール作品の序曲を中心に練習しているんですか?
・結果的にそこに集中しただけです。
「後宮からの誘拐 (後宮からの逃走などと言い替えられています)」の序曲は美しいでしょう?
・タクトを振りながら聴いたのは初めてでした。
全曲通しても、キラキラ光る貝殻が白い砂浜に散らばっているかの如く美しい曲です。 但し、歌手にとっては鉄の試練みたいな作品ですが。
・歌った?
いいえ。
・生で聴いた?
生とVHDです。
昨日の音律について解説されていた動画の内容に影響されましたか?
・大いにされました。 ピッチもアインザッツも、物理的に正確に合わないんだったら、指揮者はなにをするために指揮台に立つのか、ずっと考えています。指揮者がいる意味はなんなのですか?
センターマイクみたいなものですかね。 ワンポイント録音する時に、いちばんバランスが取れていて、直接音と間接音、また、残響が上手く収録できるようにマイクの位置を決めますよね?
・はい。
その音は誰がモニターしていますか?
・録音エンジニアさんですかね?
それが指揮者じゃないですか? プロのオーケストラは、オーケストラとしてプロである以前に、オーケストラのメンバーとして、楽器のオーソリティーさんです。 ソリストとして十分に活躍できるだけの実力を備えられた人も大勢おられます。 そんな集団に対して、指揮者が何を言えると思いますか? 特に無名の若い指揮者がです。
オーケストラの前に立った指揮者は、いちばん小さい存在で、従って、いちばん謙虚でなければならないのです。 リハーサルでは言葉が過ぎても、その姿勢は崩せません。 勿論、国や地域によって、今でも違いはあるみたいですが。
お亡くなりになった人の過去のよくない話を掘ってはいけないと思うのですが、小澤征爾さんがそういうことで大失敗をされています。
指揮者は音楽を紡ぎはしません。音楽を紡ぐのは、オーケストラという演奏家の集団です。 そして演奏家たちはひとりひとりが演奏のプロであり、指揮者がいなくても合奏できるくらいの力量があるんです。 指揮者はアウェイです。 一人ぼっちです。新学期に新しいクラスの前に立った、新任の先生と同じです。
・少しこわくなってきました。
ここまでヒントをあげましたから、新任の先生のつもりで、教壇に立ってください。
タクトをどんなに巧みに振っても、その理由だけで、演奏後に30分も止まらない拍手とブラヴォーとスタンディング・オベーションはもらえません。
みっきがなにをプレゼントすれば、素敵な音のお返しを頂けるか考えることです。 そこには絶大的権力や、威厳や威嚇やヒエラルキー、叱咤や暴言は存在しません。 昔は当たり前にあったみたいですが。
オーケストラが無名の指揮者に100㌫言いなりになって、意見も提案も言ってくれなかったら、何を言っても無駄なやつだと諦められてるか、指揮者として認めてもらってないか、そういうことじゃないですか?
これでステップ・アップできましたね?
おめでとう
・いやいや、
§. 1は終わります。 みたいなのはやめてください。
(◡ ω ◡)
✻ Mikki & Gentschi ✻