むつみさん。
うん。
落ち込んでもいいですか?
うん。
むつみさん。会いたいひとに会いたいと念じたら、会えるものですか?
ううん。念じたいときはね、会いたいという口実に隠れた、相手との距離感が大きくなったことへの懸念が隠れてるの。
もっとはっきりいっていいですよ。
幻聴くんは相手にされていない。これでいい?
はい。
あなたの好きなひとは、いつもたくさんの人に囲まれて愛されるひと。独りが好きな幻聴くんとは合わないわ。独りが好きな人の想うひとりと、たくさんに囲まれているひとの思うひとりは別物よ。
あなたをひとりの幻聴くんとして見てくれないひとを、どうして追っかけるの? 踏み台はすでに木端微塵になっているのに。あなたの好きなひとが、あなたのことを思う時間があると思う? 答は皆無よ。
とっくに答は出ているのに。
むつみさん。ガソリンが買えたら、1ガロンだけ分けてもらえませんか? 踏み砕かれた踏み台を燃やしたいんです。
あと、あなたの片想いのひとに、あなたの努力は道化芝居にか写ってないわよ。人ってね、より頑張っている人に巡り合うと、今まで頑張っていると思っていた人が、紙くずみたいな存在に見えることがあるの。あなたはとっくに紙くずにされていたんじゃないの?
あなたがお互い大切にし合えるであろう相手はね・・
誰ですか?
わたくしにしておかない?笑
心中の形が整うわ。
ふたり一緒でも、10ガロンはいりませんよ。
ばかね。愛の熱でガソリンがどんどん蒸発するから、多めに必要なんじゃない。
そうか。
それで、遺書はどうしますか?
今朝から下書きを始めてるわよ。
知らなかったです・・・
幻聴くんは、片想いのひとから、手書きの手紙をもらったことある?
ありますよ。
そっか。手紙を書くときは、必死で相手のことを考えるものだから。
もう、意味のない話ですよね。笑
幻聴くんが死んだら、片想われのひとも肩の荷が下りて、十年ぶりに本当の自分を取り戻されるわね!