昨年末から欠かさずミキという発酵ものを作っている。

   おかゆに生のサツマイモをすりおろし混ぜて、数日発酵させる。奄美地方や沖縄で愛飲されてきたヤクルトに似た発酵飲料だが、米とサツマイモが原料だから脂肪分はない。

長い抗生剤投与ですっかり傷んだ夫の腸が、このミキの効用で完全に回復しほとんど発熱しなくなった。

       

 

 

      

 

 

 

 

 

 発酵温度を保つのに最初は電気毛布に包んでいたが、ミキ作りを日常の一部にしなくてはならなくなり、発酵器を用意した。この発酵器が優れもので、ヨーグルト以外にも多様な発酵品を作ることができる。基本はミキ作りだが、その合間にギリシャヨーグルトや酒粕チーズを試みた。

 

 

 

      

 

 

 

ミキを寒天でトロリとさせたゼリーもどきも、半分眠っているような朝の内臓に心地よくおさまってくれる。

 

 

      

 

 

 

        

牛乳の代わりにミキを使い酒粕、ツナ、シュレッドチーズのケーク・サレに、繁茂し困っていたミントをたっぷり刻んでみたら、爽やかな刺激が口中に広がる。時にはパセリの代用にミントは使える。

               

 
 

 

 

 
 
 

 

 

 早朝の台所仕事もこなしやすい頃合いだから、一晩冷蔵庫で寝かせたクランペットの種をのんびり焼いたりもする。イースト発酵の大きな気泡に、コンフィチュールのソースがたれ込んだクランペットを食めば、思わず頬が緩むが、奇妙な空虚感が胸を突く。やはり美味しいものは誰かと共有できたほうがよい。

 

 

 

 

 

                 

 

 昨日沖縄から着いた荷の中に、ローゼルのコンフィチュールが入っていた。ローゼルとはハイビスカスに似た花で、正月に名古屋でジャムやお茶、塩漬けされたものを発見した。調べると戦前に南米に移り住んだ人たちが梅干しの代用にもしたというので、沖縄にもあるかしらと訊いたら、11月頃には摘んだ生のローゼルがたくさん出回るそうだ。その会話を覚えていてくれた友人が、どこかで見かけたロ-ゼルひと瓶を野菜と一緒に送ってくれたわけだ。

 

 

 今朝はその赤いローゼルのコンフィチュールを、ごく極薄く切ったトーストに乗せた。立川の茂右衛門という素敵な洋菓子やさんが、週1回、1本だけ焼く食パンは軽い食感で、口の中ではらはらと粉が溶けていくのだが、妙に腹持ちがして極薄の1枚で満ち足りる。この貴重な食パンも仲良しが、私の最寄り駅まで届けてくれた。

 そういえばこの仲良しと先日電話で話していたら、大きな「家族」のような関係性のなかで私は生きているのでは、と笑われた。

 

 

 

 

 

 

                

 

 孤独だけど独りではない。

 

  それは誰もが当たり前のように抱える感覚なんだろう。