第五章  仲間⑭ | 銀座まるかん専門店オーロラより★愛と感謝を込めて★

銀座まるかん専門店オーロラより★愛と感謝を込めて★

オーロラって観たことありますか?
★七色に輝く、龍の如く、自然の荘厳なサムシング・グレイト★
ネイティブ・インディアンはオーロラで体を癒していたそうです★

第五章  仲間


今日の夕食は塩、コショウ、ハーブで焼いたステーキにビール。どちらも貰い物だ。月一で往診をしている政治家先生から届いた。十分、料金はいただいているけど、くれるという物は受け取る主義。神様からのプレゼントなんだから。

「おいひ~。おいひ~。」

さっきから好ちゃんは同じことしか言わない。わかるけど。

「好ちゃん。今度、実験につきあってくれない?」

今夜、ステーキを出したのには訳がある。エデンスペシャルをバージョンアップさせるために、どうしても好ちゃんを実験台にしたいのだ。

「実験でふか~、いいでふよ~。」

ステーキを頬張りながら、軽くOKする。

「いいの?本当に?内容も聞かないで。」

「いいですよ。私、わかってますから。リサ先生が考えることは楽しいことに決まってるって。」

「う~ん、そう言ってくれるのは嬉しいけど…。今度ばかりは、楽しくないかもしれない。」

「そうなんですか?でも、いいですよ。なにせ私は北斗七星の一人なんですから。協力します。」

北斗七星…。

私は祖母から、『助け人・北斗七星』となる七人を探すようにいわれているのだ。私の魂が、生まれる前に決めてきた道だと。そして、好ちゃんは私が最初にみつけた一人。

「わかった。ありがとう。じゃ、一週間お菓子抜きね。」

「ええ~!そんな~!」

「あら、さっき協力するって言わなかった?」

「言いました、言いました。やります、お菓子抜き。でも、一週間だけですよ。」

一周間後、エデンスペシャルのバージョンアップに成功したら、福朗カフェのケーキをご馳走してあげるからね。それまでの我慢だよ。

私は上機嫌でビールのおかわりをした。


一週間。好ちゃんは、しっかり言いつけを守ってお菓子抜きをやり通した。

今夜は実験だ。

遠くで鈴虫が鳴いているのが聞こえる。夏もそろそろ終わりだ。カウンセリングルームも模様替えをしなければ。秋らしくセピアの絨毯に替えようか。

私は好ちゃんを待ちながら考えていた。

「先生、お待たせしました。エデンスペシャル淹れてきましたよ。」

「ありがとう。じゃ、長椅子に横になって。ゆっくり飲んでね。飲みながら説明を聞いていて。」

「はい。」

「これからやるのは、今までの宇宙のゆりかごとは全く違うの。好ちゃんに行ってもらうのは、洞窟の中。暗く、寒く、汚い…。そこで、何に出会うかは分からない。それがどんな姿をしていようとも、本当の姿は悪魔。好ちゃんは悪魔と戦い、勝ってもどってくる。私がいいと言うまでは、絶対に肉体の目を開けちゃだめ。」

「なんか、ロールプレイングゲームみたいですね!よし、やるぞ!悪魔をやっつけろ!」

いつも以上にテンションが上がっている。少し興奮気味かもしれない。

「悪魔と戦う時の注意点を言うわね。むこうがなにを言ってきても、怯んじゃだめ。弱気にならないこと。超然とした態度でいるの。好ちゃんの一番指摘されたくない弱味をついてくるかもしれない。でも、そんなことは真に受けない。人間だれだって弱味はある。だからどうした、って言ってやるのよ。」

「はい、わかりました。」

「それじゃ、目を閉じて、リラックスして…。ゆっくり息を吸って…、吐いて…。」

少しずつ少しずつ、呼吸が深くなってゆく。

ここからは、祖母から教わった誘導だ。私が二十歳で魔女を受け継ぐとき、ちょうど今と同じことを祖母が私に行った。あの時は、エデンスペシャルは無く、祖母が調合したハーブを使った。私は苦しみながら悪魔と戦い、やっとの思いで打ち勝つことができたのだ。今回は、エデンスペシャルが力を貸してくれる。好ちゃんは私ほど苦しまずに済むだろう。

「今、あなたは神秘の森にいます。眩いほどの光に包まれた神秘の森。虹色の羽をつけた鳥が飛び、金色の蝶が遊んでいます。さあ、その森の奥へと入っていきましょう…。奥へ、奥へ、どんどん進んで…。目の前に、大きな洞窟の入り口が見えます。あなたは今、その洞窟へと入って行きます。」

好ちゃんの唇がかすかに動いた。洞窟へ入る前に、中庸、中庸という呪文を唱えているのだろう。ここからは好ちゃんの心が勝手に歩いて行くことになる…。