銀座みやこクリニック院長の濱元誠栄です。
前回までは抗がん剤のお話でした
今回は分子標的薬について
心毒性のある分子標的薬の代表は
抗HER2治療薬ハーセプチンです
①ハーセプチン
HER2陽性の乳がん、胃がん、大腸がん
唾液腺がんで用いられます
心毒性は約3%で見られ
心不全の発生率は1.4~4.5%
心筋症は0.4%とされています
アンスラサイクリン系と異なり
累積の投与量で起こるのではなく
また心毒性が起こったとしても
数か月で改善することが多いです
ただ
HER2陽性進行乳がんの術前治療で
AC/EC療法(アンスラサイクリン系)
→ハーセプチン+タキサン系
*タキサン系=パクリタキセル、ドセタキセル
というレジメを行うことがありますが
アンスラサイクリン系の心毒性の後
ハーセプチンで追い打ちをかけるので
ハーセプチンの心毒性が戻らない
ということがあります
②アバスチン🄬
大腸がん、卵巣がん、肺がん、乳がん
子宮頚がん、腎がんなどで用いられます
アバスチンの副作用で有名なのは
高血圧で約18%で見られます
心不全等は起こりにくいのですが
アンスラサイクリン系の投与歴や
心臓にかかるような放射線治療歴が
ある乳がんの患者で報告があります
③スーテント🄬(スニチニブ)
腎がん、消化管間質腫瘍(GIST)
膵神経内分泌腫瘍で用いられます
高血圧 30%
左室機能低下 11%
心不全 1.9%
不整脈 1%
と、なかなかの心毒性が見られます
④グリベック🄬(イマチニブ)
慢性骨髄性白血病の治療薬で
約6割に四肢の浮腫が見られます
これは体液貯留という副作用で
四肢以外に溜まると
胸腔内 →胸水
肺内 →肺水腫
心のう内 →心タンポナーデ
腹腔内 →腹水
全身 →うっ血性心不全
となります
⑤スプリセル🄬(ダサチニブ)
慢性骨髄性白血病の治療薬で
肺高血圧症が稀に見られます
⑥メキニスト🄬(トラメチニブ)
BRAF遺伝子変異のある悪性黒色腫
非小細胞肺がんで用いられます
心不全 0.5%
左室機能不全 1.4%
心拍出量減少 4.7%
上記の確率で心毒性が見られます
⑦レブラミド
多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫などで
主に用いられます
こちらでも紹介しました
心毒性の副作用以外に
心筋梗塞 0.4%
心不全 1.1%
不整脈 3.1%
血管系の副作用も見られます
深部静脈血栓症 6.2%
肺塞栓症 3.0%
他にもあると思いますが
分子標的薬編はこれで終了して
免疫チェックポイント阻害薬による
心毒性を次回書きます