前回の続きです

 

 

そんな中で、

「抗がん剤は製薬会社の金儲けのためだ」

「WHOでは抗がん剤を推奨していない」

「アメリカでは抗がん剤は使われていない」

などの意見を頂きました。

 

抗がん剤、特に分子標的薬などは高価なので

製薬会社にとっては一つ開発するだけで、

ウハウハとなることは間違いありません。

(その前に開発費は相当かかりますが…)

 

ただ

WHOは抗がん剤を否定していないし

アメリカでも抗がん剤治療はします

 

アメリカでは

生検や手術で組織を採取すると

遺伝子検査が行われます

 

そして、遺伝子の異常があれば、

その遺伝子異常にあった

分子標的薬が用いられます

 

奏効率1~3割の抗がん剤治療を行うより

奏効率6割以上の分子標的薬の方が

患者さんのためになるという考えです

 

 

 

遺伝子異常に対応する分子標的薬は

日本では以下のようなものがあります

 

肺がん EGFR阻害薬、ALK阻害薬、ROS1阻害薬

乳がん Her2阻害薬、RARP阻害薬

胃がん Her2阻害薬

腎がん EGFR阻害薬、

大腸がん 抗EGFR抗体薬

甲状腺がん RET阻害薬

 

 

例えば

食道がんでHer2の異常が見られた場合、

保険適応がないため

Her2阻害薬は用いることができず、

既存の抗がん剤が用いられます

 

将来的には、各遺伝子異常に対応した

臓器横断型(臓器に関係なく使用できる)の

分子標的薬になって行くと思います。

 

 

 

キイトルーダ(免疫チェックポイント阻害薬)は、アメリカではすでに臓器横断型の治療が始まっています。

 

マイクロサテライト不安定性(=遺伝子変異の量)を調べ、もし不安定性が高い(=遺伝子変異が多い)のであれば、キイトルーダが良く効くことが分かっています。

 

 

マイクロサテライト安定・不安定性が低い(MSS・MSI-Low)

マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-High)

でキイトルーダの奏効率比べてみると、

 

MSI-Hの奏効率 57%

MSI-H以外の奏効率 0%

 

明らかに違いがあります。

 

免疫チェックポイント阻害薬の奏効率が1-2割と低いのは

MSI-H以外が下げているのはないかとも考えられています。

 

このマイクロサテライト不安定性を調べることで、

キイトルーダが効きやすいかどうかが分かります。

 

 

日本でもやっと今月から、

マイクロサテライト不安定性を調べる検査が保険適応となりました。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400314.pdf

 

 

これからは日本も、

各臓器に対応する抗がん剤・分子標的薬を使用するだけでなく、マイクロサテライト不安定性を調べることで、臓器横断型に

免疫チェックポイント阻害薬が使用できるようになります。

 

免疫チェックポイント阻害薬も万能ではなく、いつかは効かなくなることがほとんどですが、中には、何年たっても効き続けることがあります。

 

 

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬をうまく使うことで、従来の抗がん剤よりは比較的少ない副作用で、より確率の高い延命効果を得ることが可能となっていくでしょう。

 

ちなみに、遺伝子治療はこれらの薬剤を阻害することはないため、併用することで上乗せ・相乗効果が期待できます。

 

分子標的薬+遺伝子治療

免疫チェックポイント阻害薬+遺伝子治療

の組み合わせで、奇跡を起こせる人が増えるかもしれません。