患者様からよく頂く質問の中に、

「遺伝子治療は先進医療に入りますか?」

というのがあります。

 

要は、医療保険の先進医療特約が使えるかどうかなのですが…

遺伝子治療は先進医療に入りません

 

 

もし遺伝子治療で先進医療特約が使えたら、

治療を享受できる患者様が増えると思うのですが…残念です。

 

がんの再発で訪れた昨日の患者様はこんなことを話しておりました。

 

母は抗がん剤に抵抗があるようなので、抗がん剤を使わずに、

遺伝子治療+免疫細胞療法を考えています。

 

遺伝子治療が先進医療特約を使えないのであれば、

そちらは自費にして、免疫細胞療法は先進医療特約にしようと思います。

 

確か、免疫細胞療法は先進医療特約が使えたはずです。

 

 

なるほど。

 

確かにインターネットで調べると

 

樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法〔食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん(転移性含む)、膵臓がん、胆道がん〕【先進医療A】

東京女子医科大学 消化器・一般外科

 

と出てきます。

 

でも、実は現在、女子医大のこの治療は新規の患者さんは先進医療から外れており、先進医療特約が使えません。

 

同じような治療で、

 

自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己リンパ球移入療法【先進医療A】

川崎医科大学附属病院(岡山県) 臨床腫瘍科

 

というものがありますが、こちらも現在は新規の患者さんは先進医療から外れています。

 

 

他にがん免疫療法で先進医療が使えるものに、

 

NKT細胞を用いた免疫療法

 

がありますが、これは

 

 

肺がん→小細胞肺がんを除き、ステージがⅡA期、ⅡB期又はⅢA期であって、

肉眼による観察及び病理学的見地から完全に切除されたと判断されるものに限る。

 

頭頸部扁平上皮がん→診断時のステージがⅣ期であって、

初回治療として計画された一連の治療後の完全奏功の判定から

八週間以内の症例(当該期間内に他の治療を実施していないものに限る。)に限る。

 

という、

いずれも再発予防としての臨床試験であり、再発がんの患者さんには適応となります。

 

 

ちなみに、NKT細胞を用いた免疫療法では、千葉大学医学部付属病院で

以下の臨床試験が先進医療Bとして行われていましたが、今年度から廃止となっています。

 

肺がん→小細胞肺がんを除き、切除が困難な進行性のもの

又は術後に再発したものであって、化学療法が行われたものに限る。

 

つまり、現在はがんの”治療”としての免疫療法は先進医療の中には含まれておらず、

昨日の患者様のお考え通りにはならないのです。

 

先進医療には、重粒子線や陽子線と言った粒子線治療も含まれていますが、

次回はそれらのことについて書いてみたいと思います。