ちかコラムvol.7 | ちか子の綺麗茶屋

ちかコラムvol.7

大雪(たいせつ)とは本格的に冬が到来するころ。山々は雪に覆われ、平野にも雪が降り積もります。新しい年の準備をはじめる「正月事始め」もこの時期から行われます。


ちかコラム vol.
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役者の番頭
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 皆さまは「番頭さん」と聞くと、どんな職業を思い浮かべますか? 私は歌舞伎界に飛び込んで番頭になる前までは、時代劇やドラマなどの中で、お店をご主人に成り代わって仕切っている従業員さんの中で一番エライ方?のことだとぼんやりと思っていました。商家にはその他に手代(てだい)さんとか、丁稚(でっち)さんとかもいらっしゃいますよね。そうした大勢の人が働かれている忙しそうな商家で、盆暮れ以外は休日もなく、朝から晩まで忙しく立ち働き、仕入れから販売、配達まで見事に仕切っている司令塔。お客さまのお顔とお名前をすべて掌握しているのはもちろんのこと、お住まいや職業、お好みまで全部頭に入っているお店のスーパーコンピューター。場合によるとお店のことだけでなく、お家のことにまで気配りをして、いろいろなことを先回りして段取りをしておく……、場合によるとお家騒動まで解決しちゃう? そんな時代劇やドラマの番頭さんをイメージなさる方が多いのではないでしょうか?

 実は、歌舞伎の番頭も似たようなものなのです。歌舞伎俳優の周囲には番頭さんの他に手代さんや丁稚さんではありませんが、お弟子さんや付き人さんがいたりもします。そういう人たちは主に裏方としてのお仕事が多く、ご贔屓(ひいき)さんと接したりすることはありません。そんな中、主に番頭の仕事というのは「おもてなし」がメインの仕事。ご贔屓さん、お客さまのお顔とお名前をすべて掌握しているのはもちろんのこと、お住まいや職業、性格やお好みまで全部頭に入れた上でのおもてなしは、歌舞伎界では「表の仕事」などとも呼ばれます。その他に、もちろんスケジュール管理などもしますが、芸能事務所のマネージャーなどと違って、仕事をとってくるというような営業的仕事ではないのです。具体的なお仕事内容についてはまた別の機会のお話をします。


つづく