日本の伝統文化を、未来へ。
― 知ること、感じること、体験すること ―
日本には、長い歴史の中で育まれてきた、数えきれないほどの伝統文化があります。
茶、能、狂言、神社の祭礼、年中行事、和食、工芸、装束、しつらえ、もてなし――。
けれども私は、伝統文化を「昔から続いているもの」として紹介するだけでは、本当の魅力は伝わらないと考えています。
大切なのは、
なぜ、この文化が生まれたのか。
なぜ、この形が残ってきたのか。
そして、現代を生きる私たちは、そこから何を感じ取ることができるのか。
ということ。
私は、婚礼文化の研究を出発点として、日本人の暮らしの中に受け継がれてきた儀礼や習慣、精神性、美意識を研究してきました。
その中で見えてきたのは、伝統文化は決して「過去のもの」ではないということでした。
そこには、人と人とのつながり、人生の節目を大切にする心、自然への敬意、美しいものを愛でる感性、相手を思いやる日本独自のもてなしがあります。
それらは、現代に生きる私たちにとっても、決して古い価値観ではありません。
知識だけでは終わらせない
私が伝統文化をお伝えするときに大切にしているのが、
「知的満足」と「本物の体験」
です。
ただ見るだけではなく、その背景を知る。
ただ聞くだけではなく、その意味を理解する。
そして、実際にその場に身を置き、五感で感じる。
そうすることで、これまで「知っているつもりだった日本文化」が、まったく違って見えてくることがあります。
例えば、一杯のお茶にも、その背景には歴史があり、思想があり、道具があり、季節があり、亭主と客との関係があります。
舞台芸能にも、単に「鑑賞する」というだけではない、長い歴史と身体表現、言葉、音、空間の美があります。
私は、そうした背景まで含めて文化を味わう時間こそ、これからの時代に必要な「豊かな体験」だと考えています。
「wabigaku」という考え方
こうした考えをもとに、知的な学びと本物の文化体験を組み合わせた取り組みとして展開しているのが、
「wabigaku」
です。
wabi gakuは、伝統文化について学ぶだけではなく、その文化が生まれた背景や思想を知り、実際の場所、人、技、空間に触れることで、より深く日本文化を味わっていただくことを目指しています。
そして、この取り組みは、JALブランドコミュニケーションとの提携によって進めています。
日本の魅力を「観光」という視点だけではなく、文化や知性、体験という側面から伝えていく。
そのためには、文化そのものへの理解だけでなく、上質な体験として届けるための企画力や発信力も必要です。
JALグループも現在、「本物の体験」や「日本の美意識」「人と人とのつながり」を大切にしたブランドの考え方を打ち出しています。
私自身も、伝統文化を未来につなぐためには、
「本物であること」と「現代の人に届くこと」
その両方が必要だと考えています。
そして、もうひとつの取り組み「寿ぐ」
こうした伝統文化への考えを、より自由に、現代の人生の中に取り入れていくために生まれたのが、オリジナル企画
「寿ぐ(ことほぐ)」
です。
「寿ぐ」とは、喜びや幸せを言葉にして祝うこと。
日本には、人生の節目を「祝う」だけではなく、その人のこれからを願い、言葉や行いによって「寿ぐ」という文化がありました。
誕生日、長寿、家族の節目、人生の門出。
現代では、こうした時間も少しずつ形を変えています。
だからこそ私は、日本に残る伝統文化や美意識を現代の人生にもう一度結びつけ、
「その人のためだけにある、文化的な祝いの時間」
をつくりたいと考えています。
「寿ぐ」は、既存の観光商品でも、単なるイベントでもありません。
その人の人生や想いに合わせて、日本の伝統文化、人、場所、技、物語を組み合わせてつくる、唯一無二の文化体験です。
伝統文化を、特別な人だけのものにしない
私は、伝統文化を「専門家だけが知っているもの」にしたくありません。
けれども同時に、誰にでも分かりやすく簡略化してしまうことで、本来の価値を失わせたくもありません。
だからこそ、
本物を守りながら、現代の人がその価値を感じられる形にする。
その間をつなぐことが、私の仕事だと思っています。
長い歴史の中で受け継がれてきた文化には、まだ私たちが知らない物語がたくさんあります。
それを知ることで、日本を見る目が変わる。
実際に体験することで、自分自身の人生を見る目も変わる。
そんな時間を、一人ひとりに届けていきたいと思っています。
伝統文化は、過去を振り返るためだけのものではありません。
これからの人生を、より豊かにするための知恵でもあるのです。
私はこれからも、研究と文化体験をつなぎながら、日本の伝統文化の「本物の価値」を未来へ伝えていきます。
そして、そのひとつの形として、
「wabigaku」と「寿ぐ」
を育てていきたいと思っています。