よろしく ダーリン。 214 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)

(ごあいさつ)

早速コメントをくださった皆様、ありがとうございます。
皆さんから、私のペースでいいよ、と言ってもらったので、
その優しいお言葉に甘えさせてもらおうと思います。(笑) 
思っていたより「待ってました」コメントが多くて、
「こりゃ、途中で投げ出せないな」と、ちょびっと焦ったとこでした。
文章が長いとか説明多い、ってとこは誰からの否定もないんで、やっぱり皆さんそう思っていたのねと納得しつつ、じぁ、分かってもらっているなら気にしなくていいかな、なんて考えたところでした。(そしたら書きやすくなります)
昔書いたお話を何本か読み直していたんですが、「これ、私が書いたの?
こんなちゃらちゃらした話を?!」と真剣に、思いました。
それで考えてみたのですが、(わざわざ考えるほどのことではないと思いますが、現在の私と過去の私の煩悩レベルの違いに、軽くショックを受けまして、理由とか原因を考えずにいられなかったのです)きっと、この「よろしくダーリン。」の話がどんどん深刻な話になっていってる間に、私の煩悩脳みそもいつの間にか堅く変性してしまったんじゃないかという結論に達しました。ムムム、これはいかんです。
“色は薄桃、味は甘く、微乙”(メッセージボード参照) がコンセプトの妄想小説なのに!
 まずは、お話の続きを書いて指慣らし、そして次に煩悩脳へのリハビリをしていこうと、2022年の目標を決めました。(人として目指す方向ちょっと違う気もしますが)
もうしばらく、コンセプトから少し遠い感じのお話が続きます。一番つらいとこ。
早くこのあたりのお話終わらせちゃいたい!って私も思ってます。


                   安寿子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  よろしく ダーリン。♥~
    ~Secret Romance in Palace~

 


林の中は、降り積もった雪が木や草を覆いつくしていた。
もともと道などない場所だが、どちらを目指せばよいのかも分からない。
ジェジュンは何度も立ちすくんで動けなくなったが、
「このままじゃ、だめだ!」と気持ちを奮い立たせて足を動かした。



滑り落ちてきた元の道へよじ登って戻ることは無理だとあきらめ、
ひとまずは斜面を下って開けた場所へ出てみようと思った。
視界の開けた場所まで行ければ、内宮につながる道か、何かの建物が見えるかもしれない。



濡れて重くなった前髪をはらって空を見上げた。
木々の隙間にわずかに見える空を見れば、どんよりと暗く曇っている。
天気はますます悪くなってきているようだ。
とにかく、真っ暗になる前にここから出なくてはという思いに突き動かされて歩き続ける。



木々の間の歩けそうな場所を探しながら、斜面を下り始めた。
雪の下にちゃんと地面があるのかさえわからない不安と恐怖に耐えながら足を進める。
落ち葉の上に降った雪は踏み固められていないので、ゆるやかな斜面でも足に体重をかけるたびにズルッと地面ごと崩れ、その度にバランスを崩して尻もちをついた。
枝や岩に掴まり、できるだけ転ばないように気を遣いながら、明るい方へ下りて行った。
手袋をしてない手で、雪に濡れた草や岩を必死に掴むので、その度にだんだん痛みを感じるようになっていた。
時間を知るすべもなく時間の感覚が次第になくなった。
永遠にも感じるくらいの長い時間をさまよい続けているように思えた。
不安や恐怖でくじけてしまわないよう感情を殺して歩き続ける。
そうしないと悪いことばかり考えて足が止まってしまいそうだったからだ。
そう思っていても頭に浮かぶのは、ユンホや女官たちの心配する顔。
しかしそれ以上に、さも呆れて軽蔑したというような表情のチネやマイヤー先生、ユンホの大叔母チョン・ソリョンの顔が浮かんだ。



必死の思いで歩き続けながら、日頃の体力の無さを呪った。



こんなこと2度とないだろうけど、もしもの時のために体力つけとかなきゃな、
これはいい機会だ。
そうだ、明日からはユンホとの朝のジョギングも、ちゃんと毎日やろう。
温室の花の手入れを手伝って、重いものは僕が運べば大妃様も楽になるし、
僕の体力も付いて一石二鳥だ、などとプラスに考えて気持ちを持ち上げる。



息が苦しくなってもできるだけ止まらずに歩き続けた。



薄暗いうっそうとした森の中を、只々、無心で前に進んだ。



そうして、木々の向こうに小さく建物が見えたのは
どのくらい時間が経ったころだろうか。



「……あ、…やった」
雪に埋もれそうになっている腰丈ほどの低木や草をかき分けて、
思い通りに動かない足を「あそこまで頑張れ!」と鼓舞して、
やっとの思いでさまよい続けた森を抜け出した。



救いの神に出会えた気持ちで建物の方へ近づいていくと、
大きくて格式がありそうな古い住居の姿が見えてきた。



「よかった…、これで助かる」
人が暮らす建物を見つけ、ジェジュンは少しほっとした。



その建物は、ぐるっと首をまわさないと全体が見られないくらい大きかった。
きっと昔は、王や妃、側室などが暮らした屋敷だったのだろう。
手の込んだ甲羅模様や草花模様のレンガ塀で囲まれ、塀の向こうに見える舎廊の屋根は
大きくて立派だった。
100年以上前に建てられた建物だろうに、きちんと手入れがされていて、
周りを囲む塀にも建物の屋根やらにも傷んだところは見受けられなかった。



建物を囲む塀は見上げるほど高くはないが、屋根が付いているうえに雪も積もっていて、体力にも運動神経にも自信のないジェジュンが乗り越えるのはちょっと厳しそうだ。
踏み台になりそうなものでもあればよじ登こともできそうだったが、
整然と整えられている王宮では周囲にそんなものは見当たらなかった。
仕方なく、塀に沿って歩きながら中に入れる門を探した。



いくつかの門を見つけ、その度に押したり引いたりしてみたが、
内側から錠が下ろされているのか、びくともしなかった。



扉が3つも並んだ大きな正門は、当然ながら、しっかりと固く閉じられていた。



建物の周りをぐるりと歩き、建物の裏側の位置に来る頃には、
もう中に入ることはあきらめて別の方法を考えた方がいいかなと思い始めていた。
だが諦めきれず、これが最後と思いながら触れた小さな門が、
カタッと音がしてわずかに扉が開いた。



ジェジュンは息を飲み、驚きと喜びで大きく目を見開いた。
その目にじわりと涙が滲んだ。



恐る恐る門を押して中に入ってみる。
周囲を見回しても人の気配は全くしなかった。
人が住む建物を見つけ安心したのはわずかな間で、すぐに不安が押し寄せてきた。



この建物を見た時、なんだか暗くて地味だなと思ったのだが、それは古いためではなく、
王宮の建物によくある丹青(赤や緑の彩色)がされていないからだと気が付いた。
色味も人気もない迷路のように入り組んだ建物の中を1人で歩いていると、
自分以外の人間の存在が全くないということに強い不安を感じ始めた。



このままこの迷路のような建物の中を歩き続け、
歩き続けた末に疲れ果てて倒れて雪に埋もれて死んでしまうのかも…。



今まで必死で考えないようにしていた不吉な考えで頭が埋め尽くされていく。
どきどきと心臓の音が大きくなっていくのが自分でも分かった。



よく考えれば、使われていない建物がきれいな状態で残されていても、
歴史的文化財ばかりの王宮の中ならばなんの不思議もない。
王宮内のすべての建物の管理は営繕部が担っている(と、宮中教育の中で、
「王宮内の各部署の仕事内容」で習った)から、アパートのように管理人などが常駐していなくてもよいのだ。



ならば…と、人を探すのはあきらめ、誰かに連絡を取れるような緊急電話が
設置されてないかと周囲を見回して探してみたが、どこにも見つけられず、
気持ちが再び沈み始めた。

 



サランチェ(男性が暮らす空間)とアンチェ(女性が暮らす空間)を仕切る門をくぐると広い中庭のある場所に出た。
その中庭を囲むように使用人の小部屋が並び、庭を挟んだ主の住む棟は、
頑丈な鎧戸が下ろされていて、部屋の中には入れなさそうだ。
使用人部屋の方は、障子の扉を金具で簡単に固定してあるだけなので、
壊して中に入れば体を休めることができるかもしれない。
しかし、ジェジュンはそうはしなかった。
扉の鍵を壊す体力さえもう残っていないと思ったのだ。
このような両班の家には必ずある床下が高くなった板の間(ヌマル)を探した。
ヌマルの下は侵入を阻むような柵もなく何もない空間になっていて、
すんなりと床下に入ることができるからだ。



サランチェ(男性が暮らす空間)に行くとそれはすぐに見つかった。
床下を覗くと、建物に近い側の奥の方に雪が吹き込んでいない場所があった。
ジェジュンは頭や服に付いた雪をはらうと、
頭をぶつけないようにして床下に入りその場所に腰を下ろした。



やっと休憩できる場所を見つけ、ジェジュンはほっと安堵の息を漏らした。

 

 

                                        つづく