よろしく ダーリン。 179 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)


   よろしく ダーリン。
      ~Secret Romance in Palace~



ジェジュンは、パニックを起こしそうになった。
首だけ振り返って、時計が飛んで行った方向へ目を凝らした。
しかし、時計が落ちたと思われる音さえ聞き取れなかった。



「あ……」
ジェジュンは膝から力が抜ける気がした。
ふらりと身体が傾いたところを、ジョンウンが支えた。



「おっと…、こんくらいで気絶する気かよ~。
悪い、悪い、アハハハ、手が滑っちまった。」



完全に馬鹿にした口調で、なおもおちょくるジョンウンを
ジェジュンは、唇を噛みしめてギッと睨み返した。



「離せ! 離せたったら!!」



ジョンウンにがっしりと腰を押さえられていたジェジュンは、
ジョンウンの胸に腕を付いて、身体を離そうともがいた。



その時、
「なにをしている!」



突然、男性の声がテラスに響いた。



ジョンウンとジェジュンは声の方を振り返った。



ホールからの逆光で全身のシルエットしか分からなかったが、
その全身の形、歩き方で、すぐにユンホだとわかった。



ジョンウンが、さっとジェジュンの身体から手を離し、
ユンホに向かって立ちなおした。



ユンホの後ろには、ユンホのSPとシム家の警護官が5~6人付いて来ていた。
(yumizukiさん、にゅーこさん、みんなの代表としてこのメンバーに加わってください。(笑))



ダークブルーのスーツに着替えたユンホが、こちらに歩みを進めながら、
キム・ジョンウンに向けて再び尋ねた。



「なにをしている」



ユンホの表情は、逆光のために見えなかったが、
その声は、いつもの柔かな声ではなく人を制するような硬い声だった。



「別に~。
息抜きに外に出てきたら、学校の後輩がいたから、
ちょっと、こいつとじゃれてただけだよ。
なんだよ、その人を責めるような言い方は?」



さすがにユンホだけでなくSPやシム家の警護官の登場にまずいと思ったのか、
ジョンウンの声にも、うまく場を収めようとする気配が微かに滲んでいた。



ユンホは、じっとジョンウンの顔を見つめた後、
ジョンウンの後ろに佇んでいたジェジュンに声をかけた。



「ジェジュン…」



なにかあったのか?…と問いかけるように名前を呼ばれ、
俯いていたジェジュンは、ハッとして顔を上げた。



ジェジュンの泣きそうな顔と、
胸に抱きしめるように自分の手を握りしめる様子をみれば、
何かがあったことは容易に想像できた。
しかし、服にも大きな乱れはないし、どこかを怪我しているようにも見えなかった。



なにがあったんだ?…と、ユンホがいぶかしんでいると、
「なぁ、もういいだろ?
寒くなってきたから、早く中に戻りたいんだけど。」
ジョンウンが、何もなかったように平然な顔をして言った。



ジョンウンに視線を戻したユンホが、どうしたものかと考えていた時、
目の端に、ジェジュンが急に動いたのが見えた。
ユンホは、すぐにジェジュンに視線を向けた。



ジェジュンは、テラスの端にある大理石製の手すりに走り寄ると、
手すりの上に手を付き、身を乗り出すようにして何度も庭を見回した。
そして、いきなり手すりの上に足を乗せ、よろりと、その上に立ち上がった。



「なにをする気だ、ジェジュン!!」



ユンホが突然上げた大きな声に驚いて、ジョンウンも慌てて後ろを振り返った。



その瞬間、ジェジュンは庭の低木の中にジャンプした。



「ジェジュン!」



ユンホやSPが手すりに駆け寄った。
そして、低木の中に這いつくばり、低木と地面の雪を
両手で払いのけ始めたジェジュンを見つけた。



ユンホが、手すりから身を乗り出してジェジュンに叫んだ。



「何をしているんだ、ジェジュン!」



暗闇の中、ジェジュンが何をしようとしているのか
ユンホには全く理解ができなかった。



「ジェジュン!!」
もう1度強く呼びかけると、ジェジュンが振り返り、
「ユンホ様の時計が…」と泣きながら答えた。



「時計…?」
ユンホは呟き、すぐにジョンウンを振り返った。



すぐ後ろで成り行きを見ていたジョンウンが、
ドキッとしたように一瞬目を逸らしたが、
すぐに開き直ったように平然と答えた。



「俺は、何も知らないぜ。
俺が来る前になんかあったんじゃないの。」



その答えにユンホは眉間を寄せたが、何も言わずにジェジュンを振り返った。



「ジェジュン、時計はいいから、戻ってこい!」



氷のように固くなった雪はシャリシャリっと痛々しい音を出し、
ジェジュンが払いのけた雪は、外灯の光に反射してキラキラと光った。



四つ這いで地面に手を這わせ、素手で雪を払って時計を探すジェジュンの
必死な様子に胸が痛くなった。



「ジェジュン! ジェジュン!
時計は、後で探せばいい、やめるんだ!」



ユンホは歯がゆい思いでジェジュンに呼びかけ続けた。



「でも!
大切な時計なんです!ユンホ様の大切な…!!」



ジェジュンの悲壮な声が耳に刺さって、ユンホは奥歯をかみしめた。





                 つづく