よろしく ダーリン。♥♥~
~Secret Romance in Palace~
ジェジュンは、パニックを起こしそうになった。
首だけ振り返って、時計が飛んで行った方向へ目を凝らした。
しかし、時計が落ちたと思われる音さえ聞き取れなかった。
「あ……」
ジェジュンは膝から力が抜ける気がした。
ふらりと身体が傾いたところを、ジョンウンが支えた。
「おっと…、こんくらいで気絶する気かよ~。
悪い、悪い、アハハハ、手が滑っちまった。」
完全に馬鹿にした口調で、なおもおちょくるジョンウンを
ジェジュンは、唇を噛みしめてギッと睨み返した。
「離せ! 離せたったら!!」
ジョンウンにがっしりと腰を押さえられていたジェジュンは、
ジョンウンの胸に腕を付いて、身体を離そうともがいた。
その時、
「なにをしている!」
突然、男性の声がテラスに響いた。
ジョンウンとジェジュンは声の方を振り返った。
ホールからの逆光で全身のシルエットしか分からなかったが、
その全身の形、歩き方で、すぐにユンホだとわかった。
ジョンウンが、さっとジェジュンの身体から手を離し、
ユンホに向かって立ちなおした。
ユンホの後ろには、ユンホのSPとシム家の警護官が5~6人付いて来ていた。
(yumizukiさん、にゅーこさん、みんなの代表としてこのメンバーに加わってください。(笑))
ダークブルーのスーツに着替えたユンホが、こちらに歩みを進めながら、
キム・ジョンウンに向けて再び尋ねた。
「なにをしている」
ユンホの表情は、逆光のために見えなかったが、
その声は、いつもの柔かな声ではなく人を制するような硬い声だった。
「別に~。
息抜きに外に出てきたら、学校の後輩がいたから、
ちょっと、こいつとじゃれてただけだよ。
なんだよ、その人を責めるような言い方は?」
さすがにユンホだけでなくSPやシム家の警護官の登場にまずいと思ったのか、
ジョンウンの声にも、うまく場を収めようとする気配が微かに滲んでいた。
ユンホは、じっとジョンウンの顔を見つめた後、
ジョンウンの後ろに佇んでいたジェジュンに声をかけた。
「ジェジュン…」
なにかあったのか?…と問いかけるように名前を呼ばれ、
俯いていたジェジュンは、ハッとして顔を上げた。
ジェジュンの泣きそうな顔と、
胸に抱きしめるように自分の手を握りしめる様子をみれば、
何かがあったことは容易に想像できた。
しかし、服にも大きな乱れはないし、どこかを怪我しているようにも見えなかった。
なにがあったんだ?…と、ユンホがいぶかしんでいると、
「なぁ、もういいだろ?
寒くなってきたから、早く中に戻りたいんだけど。」
ジョンウンが、何もなかったように平然な顔をして言った。
ジョンウンに視線を戻したユンホが、どうしたものかと考えていた時、
目の端に、ジェジュンが急に動いたのが見えた。
ユンホは、すぐにジェジュンに視線を向けた。
ジェジュンは、テラスの端にある大理石製の手すりに走り寄ると、
手すりの上に手を付き、身を乗り出すようにして何度も庭を見回した。
そして、いきなり手すりの上に足を乗せ、よろりと、その上に立ち上がった。
「なにをする気だ、ジェジュン!!」
ユンホが突然上げた大きな声に驚いて、ジョンウンも慌てて後ろを振り返った。
その瞬間、ジェジュンは庭の低木の中にジャンプした。
「ジェジュン!」
ユンホやSPが手すりに駆け寄った。
そして、低木の中に這いつくばり、低木と地面の雪を
両手で払いのけ始めたジェジュンを見つけた。
ユンホが、手すりから身を乗り出してジェジュンに叫んだ。
「何をしているんだ、ジェジュン!」
暗闇の中、ジェジュンが何をしようとしているのか
ユンホには全く理解ができなかった。
「ジェジュン!!」
もう1度強く呼びかけると、ジェジュンが振り返り、
「ユンホ様の時計が…」と泣きながら答えた。
「時計…?」
ユンホは呟き、すぐにジョンウンを振り返った。
すぐ後ろで成り行きを見ていたジョンウンが、
ドキッとしたように一瞬目を逸らしたが、
すぐに開き直ったように平然と答えた。
「俺は、何も知らないぜ。
俺が来る前になんかあったんじゃないの。」
その答えにユンホは眉間を寄せたが、何も言わずにジェジュンを振り返った。
「ジェジュン、時計はいいから、戻ってこい!」
氷のように固くなった雪はシャリシャリっと痛々しい音を出し、
ジェジュンが払いのけた雪は、外灯の光に反射してキラキラと光った。
四つ這いで地面に手を這わせ、素手で雪を払って時計を探すジェジュンの
必死な様子に胸が痛くなった。
「ジェジュン! ジェジュン!
時計は、後で探せばいい、やめるんだ!」
ユンホは歯がゆい思いでジェジュンに呼びかけ続けた。
「でも!
大切な時計なんです!ユンホ様の大切な…!!」
ジェジュンの悲壮な声が耳に刺さって、ユンホは奥歯をかみしめた。
つづく