よろしく ダーリン。 156 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)



   よろしく ダーリン。
      ~Secret Romance in Palace~




ジェジュンが気を引き締め直して居住まいを正した時、
再びファンファーレが会場内に響き、アナウンスが流れた。



「お待たせいたしました。
これより、シム家ご長男、シム・チャンミン様の16歳のお誕生日パーティーを
始めさせていただきます。
どうぞ、楽しいひと時をおすごしくださいませ。」



アナウンスの後、一斉に照明が落とされ、ホールが暗くなった。



一瞬の静寂後、少しずつ会場がざわつき始めた時、ステージの上に、
パッとピンスポットライトが当てられた。



その途端、ホールから女性たちの歓声が上がった。



ジェジュンは、その歓声の理由が分からず、
ステージのスポットライトの中に立つ1人の人物をじっと見つめた。



不思議な衣装を着ていた。
西洋のおとぎ話の王子やお姫様が出てくる時代のような衣装だ。



両肩から両脚まで金モールで飾られた派手で豪華な衣装。
両腕を肩の高さに上げ、天井に向かって曲げた肘から先の両手は、
燭台に載ったろうそくの形…。
そして、その頭…髪型と言えばいいのか、それもろうそくの形をしている……。
そこまで見た瞬間、ジェジュンは閃いた。



もしかして!
これって!

これって!



ジェジュンは驚きと喜びで目を輝かせた。



これって、噂で聞いたことがあるミュージカルだ!
ディズニーの『美女と野獣』。



韓国でも公演があるようなニュースを少し前に見たことがあった。
当然ミュージカルそのものさえ今まで見たことはないけど、
アニメの『美女と野獣』なら見たことがあった。



わくわくしながら、ステージを見つめていると、
魔法で燭台に変えられてしまったお城の給仕長ルミエールが、
暗くなったホールを見渡しながら素敵なバリトンの声で招待客へと話しかけた。



「お若い紳士、
愛しのマドモアゼル、
今宵、あなた方お客様をお迎えしますことは、
最高の誇り、最高の喜びです。



ではどうぞ、おくつろぎください。  
ゆっくりお楽しみになって
シム家のシェフが腕によりをかけましたディナーを」



そう言って、合図するように右手を優雅に横に動かすと、
音楽が低く流れ始め、それに合わせて歌い始めた。



♪~
ようこそ どうぞ 大事なお客様
首にナプキンを掛けてごゆっくり
スープ・ドゥ・ジュール オードヴル
どれもお味は天下一品
一度食べたらトレビアーン
お疑いならお皿に聞いて~♪



ウワ~ッと歓声と拍手が沸き起こった。



そして、次の瞬間、それまでアカペラに近かった歌に、
一気にオーケストラの音楽とたくさんのコーラスが加わり、それと同時に、
ホールの四方にあるドアに照明が当てられ、そのドアが開いて、

たくさんのミュージカル俳優たちが、それぞれの役柄の衣装を身に着けて
踊りながらホールの中へ入場してきた。



歌って 踊って豪華なひととき  
フランス料理は最高さ
ご覧ください メニュー開き
あなたは大事なゲスト



身長より大きなナイフやフォークの付いた衣装を着た給仕たち、
スプーンの髪飾りやお皿を背中に付けたメイドたち、
大きな帽子を被ったソルトやペッパーのボトル姿の男性たち、
角各砂糖の入った陶器のポットの女の人…、
きらめく照明、響き渡る歌声、ホール全体をステージに変えて、
俳優たちが笑顔で歌い踊りながら、招待客やテーブルの間を通り抜けていく。



シチューにスフレ プリンにソルベ
どれもおしゃれで素敵な出来ばえ
たとえお客がお一人だけでも
まるでパーティの様に楽しく
手品に 呪文 キャンドルを立てて

しかもお味は完璧
さぁみんなでグラス上げて
今宵は
ほら そんな悲しい顔しないで
お客様にようこそ



「あの人は、なんの役なんだろう?」
次々と目の前を通り過ぎていく俳優たちの衣装を見ながら考える。
「あっ!あの人、コルクの栓抜きだ! アッハ!すご~い!」
ジェジュンは、思わずユンホの腕を掴んで声をあげた。
「おい…。」
ユンホはすかさずジェジュンに注意した。
「あ…、ごめんなさい。興奮しちゃって…。
でも、すごい!このパーティーのために、あの人たちを雇ったんですか?」
興奮が収まらないジェジュンは、シム家のスケールの大きさの違いに圧倒されながら
浮かんだ疑問を口にした。



「ま、そういうことだな。
というより、このミュージカルそのものを運営しているのが
シム家の文化事業財団なんだ。『美女と野獣』は今年の演目の1つらしい。
まだ、公開されたばかりだから、韓国でも本物を見た人は少ないんじゃないかな。」



「……チャンミンのうちって、本当にすごいんだ…」



ジェジュンが、改めて、シム家の財閥ぶりに驚いていると、
会場から「きゃーー♪」と女性たちの悲鳴が上がった。




             つづく