明かりの差し込む窓側をむいて
ジェジュンに背中を向けて立つユンホ様…。
逆光の中で、ジェジュンには、ユンホ様の身体から
光が発せられているように見えました。
無意識なうちにジェジュンは、ユンホ様の身体を上から下へ、
頭の先から湯につかる太腿までをじっと見てしまっていました。
少し横を向いたユンホ様の鼻筋の通ったすっきりとした横顔、
キュッと締まった口角には小さな影ができ、尖った顎の線をたどっていくと、
形の良い耳へとつながり、小さな頭を支える長い首へとつながって…。
いくつかの治りかけた赤い傷跡が背中や腕にありましたが、
その痛々しさよりも、ユンホ様本来の裸の美しさに
ジェジュンは目を離せなくなっていました。
盛り上がった僧帽筋が覆う広い肩、
光と影の織り成す微妙な陰影が、
広い背中を覆うなめらかな皮膚の下の筋肉を
なまめかしく浮かび上がらせていました。
まっすぐにのびた背中の中央に影をつくる背骨のくぼみを追うように、
ジェジュンは視線を下ろしていきました。
くぼみの一番深くなった所は、広い背中がきゅと細く締まった腰の位置で、
そこから、なめらかに尻への筋肉が盛り上がっていて…。
ジェジュンは、ゴクリと唾を飲み込みました。
固く引き締まった二つの形のいい尻の下には、筋肉で覆われた長い足が続きます…。
ジェジュンの胸は、早鐘を打つようにドキドキと打ちだしました。
ほぅーと小さく息を吐いて胸を押さえるジェジュンの前で、
ユンホ様はゆっくりとお湯につかり浴槽に凭れると
大きく長い息を吐きました。
「気持ちがいいぞ、ジェジュン。」
「それは、よかったです。ユンホ様…。」
なんとか平静を保ちながら返事を返し、
ユンホ様の着物をさっと畳んで隅に片付けると、
用意していた手拭いを取り出して、ユンホ様の背中側にまわりました。
「私がお背中を擦らせていただきますから。」
「ああ、頼む。」
ユンホ様が正面を向いたまま、そう返事をしたので、
ジェジュンは、ユンホ様の左肩に左手を置いて、
右手でユンホ様の肩にお湯をかけながら手拭いで擦り始めました。
お湯をはじく滑らかで張りのある肌…
盛り上がった肩の筋肉の感触…、
触れた指や目に映るものから生身のユンホ様の感触が伝わってきて、
ジェジュンは息苦しくなってきました。
瀕死のユンホ様の怪我の手当をし、
毎日身体を拭いたり着替えさせたりとお世話をしていたので、
ユンホ様の裸は見慣れていたつもりでいましたが、
全然平静な気持ちではいられませんでした。
それでも、ずっと眠ったまま起き上がることもできないほどに傷ついていた身体が、
こうしてお風呂に入れるまでに回復できたのだという喜びも同時に感じていました。
ジェジュンが1人気恥ずかしさと嬉しさで、
ユンホ様に話しかけていた言葉も少なくなり始めた時、
ユンホ様が言いました。
「ジェジュン。お湯の冷めないうちに、お前も入りなさい。」
「…と、と、とんでもない!
…そんなこと!」
落ち着き始めていた鼓動が、また大きく跳ねあがりました。
「なぜだ?
お前が、1人で沸かしてくれたお湯だ。
私一人が使うだけではもったいなかろう。
お前も入りなさい。
私は、一緒でも気にしない。」
「わ、私が、ユンホ様と一緒では気にします!!
私は、ユンホ様が上がられた後に、入らせていただきますから、
ど、どうかお気遣いはご無用でございます…。」
ジェジュンは、手拭いを握りしめ、うろたえながら答えました。
すると、ユンホ様が、くるりと背中側のジェジュンを振り返ると、
ジェジュンの赤くなった顔を見て笑いました。
恥ずかしそうに眼を逸らしたジェジュンの顔に手を伸ばすと、
濡れた手でジェジュンの煤けた頬を撫で、汚れを指で拭うように
何度かやさしく擦りました。
「ジェジュン。
お前が、私を温めたいと思ったように、
私も、お前を温めてあげたいのだ。
恥ずかしがらずに、さぁ…。」
ジェジュンは、じっとユンホ様の顔を見つめ、ごくりと唾を飲みこむと、
ゆっくりと立ち上がりました。
「…あ…、その…、御目汚しになります…。
どうか、見ないでください…、私のはだかなど…。」
ユンホ様からの自分を思いやる言葉に嬉しく思ったものの、
ユンホ様とはかけ離れた自分の貧相な身体を見られるのが恥ずかしく、
着物を脱ぎ始めても、何度も手が止まり躊躇しました。
「まだか?ジェジュン」
背を向けたユンホ様に声をかけられ、はっとして止まっていた動きを再開させました。
最後の一枚を取り去ったジェジュンは、
ささっと浴槽を跨いで、チャポンとユンホ様の隣りに身を沈めました。
ジェジュンの願いを聞いて、横を向いていてくれたユンホ様が、
その水音と湯船のお湯嵩が一気に増えたことで、ジェジュンの方に首を向けました。
「二人、一緒に入った方がよくないか、ジェジュン。
湯の量が少なくて済むぞ。」
身体の見える面積を小さくするように膝を抱えてうずくまったジェジュンは、
首をすくめながら、恥ずかしそうに俯きました。
つづく
(画像はお借りしています)
