さらに盛り上がる算段を考えていると、
テーブルに置いてあったジェジュンの携帯が
小さな振動音を出し始めた。
ジェジュンが、ピクリと反応して、
携帯の方を振り返る。
…あ、
ダメだわ…。
ジェジュン、もう、カラオケどころじゃないわね。
さっと手を伸ばして、携帯を取り上げると、
画面に表示される相手の名前を確認する。
こっそり私も一緒に画面を覗く。
「おっ、
“ウリ テヨ”(僕の太陽)からよ、ジェジュン!
お待ちかねの方から、や~っと電話ね~!
おほほほ、待ってましたわよ! ユノ氏~!」
思わず、携帯に向かって、声をかける。
以前は、“僕のタイガーちゃん”だったり、
“僕の半身”だったこともあるってジェジュン言ってたけど、
最近私が見たのは、“僕のトルギ(苺)ちゃん”
っていうのがあったわね。
そして、今は、“ウリ テヨ(太陽)”ってわけ。
私が冷やかすもんだから、
慌てて(喜んで)出ることも、
出しぶってユノに気を持たせることもできずに、
私を一睨みしてから、通話ボタンを
憎たらしそうに顔を歪めてから押したの。
さも不機嫌そうな顔して、ゆっくり携帯を耳に当てる。
だけど、携帯越しのユノの第一声を聞いて、
驚いたように小さく口を開き、目も見開く。
それから、その大きく見開いた目で、
チラッと私を見てすぐに顔を正面に戻した。
開いた口を、さっと左手で隠しながら、
右手の携帯を耳に押し当てて、
急に前かがみになるのよ。
ふ~~~ん…。
今、ちらっと聞こえてきた声は、
ユノのあの柔らかな声だったわね~。
どうしたのよ、ジェジュン?
なに急に背中丸めて小さくなってるのよ?
なに?
もしかして、照れてるの~?
はは~ん。
さっきの、“サランヘ、ジェジュン”に
やられちゃったのぉ~~~~~~~。
さっき、通常の倍の聴力使って、
聞き耳たてちゃったもんね、正直言うと。
ジェジュン、私に見られてるからって、
不機嫌顔を維持しようとしてるけど、
それができずに中途半端に頬をヒクヒクさせてる。
「そ、そんな言葉で、誤魔化されないからな…。」
低い声で不機嫌そうに言ってはいるけど、
顔と言葉が違ってるんだけどね、ジェジュン…。
拗ねてたって、大好きな人の声聞くと、
うれしくなっちゃうのよね~、ジェジュンは。
ほら、すでに目が喜んでるもん。
だけど、ハッとしたみたいに、
笑いかけた顔を、不機嫌顔にむりやり戻すと、
「・・・・、
フン、んな、訳ないだろ!
そんな簡単に、機嫌が直るか!
そんくらいなら、最初からケンカなんかしないって!
だいたい、ユノとオレじゃ、
感じ方も考え方も、ぜ、ん、ぜ、ん、違うから、
ケンカしても、しょうがないよね!!」
ユノが、なにか言いかけるみたいだけど、
その10倍くらいの反撃をジェジュンが早口でする。
「いいから、ユノは、好きなことすれば。
オレの機嫌なんか取らないで。
オレは、オレで、好きなことするから。
今夜も、ユノは、
かわいい後輩を応援しにいく“頼もしくて、優しい先輩”として、
打ち上げでもなんでも行って、
存分に後輩君たちのために尽くして来たらいいよ。
オレはオレで、ヘス姉と、一晩中、飲んで
騒いで、カラオケ行って楽しむから!」
ちょっと、ジェジュン…。
カラオケ行くとは言ったけど、
“一晩中”なんて言ってないわよ…。
さっきは、機嫌直るのかと思ったけど、
怒りを思い出してきたのかしら?!
顔が思いっきり怖く変わってきた。
つづく