ホドンさんの耳は、キーーーンと耳鳴りまでしてきました。
客席側の耳を手で覆って鼓膜を保護したホドンさんが、
顔を赤くしておでこを手で押さえて俯くジェジュンと、
その横で、ジェジュンを見ながら、白い歯を見せて、
にこにこと笑っているユノに大声で言いました。
「ユノーー!
なにやってんですか!
ジェジュンさんまで、たぶらかす気ですか!」
「あはははー。
いや、いや。
ジェジュンは、もとから、僕の奥さんですから…」
「キャーー!」
「たぶらかしなんかしませんよ。
ちょっと、愛情を現そうかと思って。
客席だけじゃなくて、ジェジュンにも。
ね、ジェジュン。」
ユノが、ジェジュンの俯いた顔を覗きこむと、
ジェジュンは、へらりと弛みまくった顔を隠すように左手で口を覆うと、
くるりと客席に背中を向け、
ユノの右腕を両腕で胸に抱きしめ、しなだれかかりました。
「きゃ~~~♡」
「・・・・・。」
(いい加減にしろよ…。)
ホドンさんは、
どっと意味もない疲れを感じながら思いました。
「アハハハハ!
ユノも言いますねーー!“奥さん”だなんて!
仲がいいってことは、いい加減わかりましたから、
ジェジュンさん!
ユノに抱き付くのは後にして、
料理続けてくださいよ~~~。
お願いしますよ~~!
ユノのインスタントラーメンより、長くかかったら困りますってばー!
ユノも、もうジェジュンさんにちょっかい出さないでー!」
ホドンさんの泣きの懇願により、クッキング再開。
ユノにかけられる黄色い声に、
ジェジュンが再びむっとして、
ユノに、玉ねぎを千切りするように言いつけました。
もちろん、顔は、笑顔です。
何もせずに立っているだけなのに、
女にも(男にも)モテてしまうユノにムカついて、
ちょっとだけいじわるな気分になったジェジュンは、
ユノの一番苦手な包丁作業をやらせて
困らせてやろうと思ったのでしたが…、
ユノが大きな身体を小さく前かがみにして、
まな板に向かって超真剣に玉ねぎを切り始めると…。
そんなことを考えていたことも忘れ、
ユノから、まったく目が離せなくなりました。
「あっ、…あ、 ユノ!
手! 左手は、ネコの手!」
「あ! そんな力入れなくても、切れるってばー!」
わずか半玉の玉ねぎに、
慎重に包丁を入れていくユノの手元を、
TVカメラがアップでとらえ、
それが会場の大型スクリーンに映し出されました。
小学生の男の子が、初めて包丁を使って野菜を切る時のように、
ユノの左手は、きっちりと指先を揃えて丸い玉ねぎを押さえ、
妙に力が入っている様子で、緊張した手元が映りました。
「きゃ~~♡」
(またしても、女心を掴んでしまうユノ。)
「用心して!」と、声をかけたのもつかの間、
ジェジュンは、すぐに押さえきれなくなり、
ぴったりとユノに身体を寄せると、
ユノの包丁を持つ右手の上に右手を添え、
玉ねぎを押さえるユノの左手の上に、左手を重ねて、
(頬もくっ付けそうな勢いです。)
文字通り、手取り足取りで手伝い始めました。
ジェジュンの白い手が、
ユノの日に焼けた指の上に重ねられ、
その肌の色の違いに、ファンの妄想は膨れ上がります。
「きゃ~~~♡」
それに…、
何と言うことでしょう。(ビフォー・アフター風)
料理を作るために、ジェジュンの両手の指からは、
リングが全部外されていましたが、
ユノの薬指には、ジェジュンがさっきまではめていた
NEWカルティエリングと同じものが!
はまっているじゃありませんか!
果たして…、
この(喜ばしい)事実に気づいた人はどのくらいいたでしょう。
小学生の子供に料理を教える母親のような手つきで、
ユノの手を上からしっかりと握るジェジュン。
頭をくっ付けて、手元を真剣に覗き込む2人には、
誰も声をかけられないほどでしたが、
進行役のホドンさんは、それをしなければなりません。
「ちょっとー! お二人さん!
普通は2人でした方が仕事がはかどるはずなんですけど、
あなた達2人の場合は違うみたいですねー。
ユノー!
料理は、ジェジュンさんに任せて、ユノは手を出さないで!
ほら、2人とも離れて、離れて!
ユノは、僕と話してましょうよー!」
顔を見合わせて、照れたように笑い合ったユノとジェジュンは、
ホドンさんの言うことを聞いて、身体を離しました。
会場からは、「あ~~~。」と、
残念そうな声がいくつもあがりました。
つづく
(画像はお借りしています)