「そうじゃないって~、ジェジュン。
チネが呼んだから出てきたんじゃなくて~、
『ジェジュンが、泣いてる』って、言ったから出てきたんだ。」
「うそだ!
オレが、泣いて言っても出てこないだろ~!」
「いやー。
そんなことないよ。
ジェジュンが泣いてるなら、出てきたさ。」
「・・・・・、
じゃ…、次からは、泣く!
泣いたら、出てくるんだろ! ユノ。」
「え!
いや~、そうなると…、
ど、どうかな~、
そ、その~、
毎回だと…、やっぱ、慣れちゃうと、いうか…、
そうなると…」
「やっぱり…、
オレが泣いたって、出てこないってことだろ!
ユノのバカ!」
ああ、もう!
お兄ちゃんのバカ!
そこは、「ジェジュンが泣いてる時は、絶対だ!」でしょ!
まったく、女心が分らないって言うか、
空気が読めないって言うのか…。
私も、ジェジュンさんと一緒になって、
心の中で、バカ!と詰っていた。
ケーキを冷蔵庫に仕舞ったものの、
お兄ちゃんが閉じこもっていたあのトイレの向かい側にある自分の部屋へ、
この状況の2人の横を通ることもできず、戻るに戻れずにいた。
キッチンで、聞こえてくる2人の会話を聞いていたけど…、
お兄ちゃんの手際の悪さに、
改めて呆れながらため息をついた。
「わッ!ジェジュン!」
お兄ちゃんの慌てた声が聞こえた。
びっくりして、思わずびくりと飛び上がった。
なに?お兄ちゃん、ジェジュンさんに殴られた?
ま、…でも、当然でしょ。
キッチンの奥からじゃ、2人の様子は見えないから、
殴られて、頭を手で押さえているお兄ちゃんの姿を想像した。
……しょうがない。
ちょっとだけ、お兄ちゃんに協力してやるか。
私は、冷蔵庫に仕舞ったばかりのケーキの箱を取り出すと、
アイランドキッチンのカウンターの上に置いて、
キッチンの奥からリビング側に出てくると、
ソファーの2人に声をかけた。
「ジェジュンさん、お兄ちゃん、
ケーキ買ってきたの。一緒に食べようよ~。」
新婚夫婦のケンカみたいなことやってた2人が、
一緒にキッチンの私の方に顔を向けた。
私は、2人に見せるようにケーキの箱を持ち上げて、
ニコッと笑いながら、ケーキの箱を小さく左右に振った。
ジェジュンさんなら、絶対断らないはず…。
なんたって、私は、ユノの妹、“小姑”なんだから。
小姑が、言ったことは、聞かなきゃね~。
嫁…なら、ね。
でも、ジェジュンさんは、そんなことなくても、
きっと、自分の機嫌が悪くたって、
ケーキ食べるのに付き合ってくれたと思うけど。
ほら…。
ジェジュンさん、
抱き付いているお兄ちゃんの腕をはがすと、
ソファーの横に立ち上がった。
お兄ちゃんのこと、上からジトッと睨んだ後、
私の方に顔を向けて、今の顔と全く違う顔で、
にこっと微笑んだ。
「…うん。
オレ、コーヒー入れるね。」
そう言うと、お兄ちゃんをもう1度睨んでから、
フンッと顔を背けて、スタスタとキッチンに向かって歩いてきた。
お兄ちゃんと言えば…、
頭じゃなくて、左頬を手で押さえていた。
あら…、打たれたの?
お兄ちゃんも、ソファーから立ち上がると、
トボトボとジェジュンさんの後を追うように、
こちらに歩いてきた。
つづく