恋してもいいですか? 2-8 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)


体育館の正面玄関の階段を数段上りながら、
左手にしていた白のウインドブレーカーに目をやった。


あのきれいな彼がほんのさっきまで着ていた服。


肌が白いので、この白い色が似合っていたっけ。


袖が長かったのか、手の甲まで袖で隠れていたよな。


袖口から指先だけ出して、その手で驚いた口元を隠したり、
胸の前で祈るように握りしめていた姿が思い出された。


ユノの顔に、自然と微笑みが浮かんだ。



ユノが、右手にウインドブレーカーを持ち替えた時、
何かが下に落ちた。


さっきまでジェジュンに貸していた物なので、
ジェジュンの忘れものかと、一瞬ユノは思った。



何かと思って、拾い上げてみると、それは、
4つに折りたたまれた大会パンフレットだった。


ジェジュンが、握りしめてクシャクシャにしてしまっていたやつだ。



また、びっくりしたジェジュンが目を大きく見開きながら、
このパンフレットを両手で握りしめている姿を思い出す。



何気なく、しわくちゃのパンフレットを開いてみると、
白い余白の部分には、彼の特徴的な丸めの文字で、
書き込みがされていた。



「クモ(蜘蛛)」とか、「片足!」「速い!!」とか。


思い浮かんだことを書くのが癖なのか…?


「クモ」が何を指すのか分らなかったが、「片足」や
「速い!」というのは、テコンドーを見たイメージだなと
想像できた。


「チョン・ユンホ」や 「K Tigers」の文字は、
クルクルと何度も線で囲んである。
ユンホが、K Tigersに所属していたことを
説明した文章には、ボールペンで下線が引かれていた。



クールそうに見える彼が、思っていた以上に、
自分に興味を抱いてくれていることが分かって、
じわりとユノの胸が熱くなった。



ユノは、大会プログラムの「8 表彰式」の横に、
「優勝 チョン・ユンホ! カッコイイ~(モシッタ~!)」と
ジェジュンの字で大きく書かれているのを見ながら、
人差し指でおでこを掻くと、照れたように笑った。




体育館の中に引き返したユノに、
写真を撮ってくれた男子高校生が駆け寄ってくると、


「ユノ先輩~。
もう、俺達、ドキドキしなから見てましたよ~。
こんなところで、口説かないでくださいよ~。」



視線を上げ、高校生を振り向いたユノが驚いて返事をする。


「口説く? 
え、あれは、写真のモデル、頼んでただけだぞ?」



「何、言ってんですか~! 
そう言うのを、口説くって言うんじゃないですか~!
みんな、耳でっかくして、聞いてたんですよ。
見てるこっちが、恥ずかしくなるくらい
2人の世界作っちゃって~。
いい男は、何やっても決まるんですよね~。
く~っ!うらやましいっ!」



ねーさんの部屋-6

口説いてるように見えたのか…。


見えたってことは、実際そうだったのかもな。


俺も、正直に言うと、ちょっとそんな気分になってた。


そうさせたのは、あの、男のくせに、
妙にかわいいやつのせいだ、とユノは思った。



「でも…、あの人…、
男の人じゃなかったですか?
そりゃ、男でも妙にきれいな人でしたけど、
ユノ先輩って…、
そっちもOKな人だったんですか…。」



「そっち? ない、ない。」 


ユノが、慌てて手を降りながら否定する。



「え~?!
とても、そんな風には見えませんでしたよ~。
なんか、ぐいぐい迫ってたじゃないですか~。」



「ない。ないって!」



まずいな。


俺、無意識にそんな態度とってたのか…。


ユノは、顔をちょっとしかめると、チィッと舌打ちをした。



その瞬間、男子高校生が黙った。


ユノが、機嫌を損ねたと思ったらしい。


急に身を固くして、気をつけの姿勢をとると、
サッと頭を下げた。



「す、すみません! 
調子に乗ってしゃべりすぎました!」



ユノは、自分の無意識な行動に舌打ちしたのだったが、
彼が誤解してくれたおかげで、
ドツボに入りそうな話題が終わってくれた。



ちょっとホッとしながら、高校生の背中をパンパンと叩いて


「気にするな。 
じゃあな、写真ありがとな。」


右手をあげてあいさつすると、
ユノは高校生に背中を向けて歩き出した。




「ひゃ~あ! 
ユノ先輩怒らせたかと思った~!
でも、カッコよかったなぁ~。
あ、おい!
ジニン! 
喜べ、ユノ先輩、男も大丈夫みたいだぞ~。」



はるか先の玄関ホールで騒いでる高校生の声が、
体育館の長い廊下の端まで響いて聞こえてくる…



おいおい、そんなこと、大声で話すなよ…。
ユノは、歩きながら、急に痛くなった額を押さえた。



            END




(画像はお借りしています)