「競技が終わって、K TIGERSの演武が始まった時に、
ジェジュンの様子見たら、
アハハハ、すっごく、真剣に見てたし、
いちいち反応してて、かわいくて、面白かったから、
思わず撮っちゃった。」
「こ、こんな写真、撮んないでよ~。」
「え~、この写真なんて、
すごくかわいいじゃないか。」
そう言って、ユノが見せたのは、
オレが、握りしめた両手を顎に当てて、
目の前の演武のすごさに、目と口を見開いてる写真。
「間抜けすぎる…」
「そぉ? かわいいけどな。
ほら、これとか、これも…。」
両手で目の下まで顔を覆って、眉間にしわ寄せながらも
恐るおそる荒技の演武を見ている顔とか、
胸の前で、両手を握りしめて、すごい!すばらしい!って
感動して思いっきり笑ってる顔とかの画像を見せられる。
「はぁ~、オレ、こんな顔して見てたんだ~。
…すごい恥ずかしい。」
両手で顔を覆って、ガクッと頭を垂れる。
ユノが、俯いたオレの頭を撫でながら、
「恥ずかしがることなんてないよ。
元モデルで、今は、写真撮る側の俺が、
思わず撮りたくなる表情だったんだから、
魅力的ってことだよ。 よろこんで。」
顔を覆ってるオレの右手の人差し指を引っ張りながら、
ユノがオレの顔を覗きこむ。
オレは、覆っていた両手を外すと顔を上げ、
下唇を突き出しながら、ユノを上目使いに見上げた。
すると、ユノの右手が、オレの左頬をなでた。
びっくりして、唇突き出したまま固まって、
目を見開いてユノを見つめる。
目を細めて優しく笑いながら、ユノが言った。
「やっぱり…、
写真のモデル引き受けてくれないかな。
なんか、すごくジェジュンの写真撮りたくなった…。」
まるで、ユノに告白されてるみたいな気分になって、
急に息が苦しくなった。
だって、ユノの左手で左肩を抱かれ、
(正確には、肩に手をまわされているだけだけど)、
右手で頬に触れられているのだから。
「どうしても、ダメ? 嫌?」
甘い声で囁かれ(オレには、そう聞こえた)、
頬が熱くなった。
「…い、いやじゃない…けど…。」
「じゃ、OK、ってこと?」
「…、…うん…。」
オレは、小さな声で答えながら…、
小さく頷いた。
ユノは、大会運営役員としての仕事が残っているから
駅まで送れないと言って、
近くにいた学生スタッフに、あのデジカメを渡し、
2人の写真を撮ってくれるように頼んだ。
会場入口の大会看板とユノのポスターの前に
2人で並んで立ち、ユノがジェジュンの肩を抱き、
左手の親指を立てたポーズで写真を写した。
写真のデータを送るからと、
PCのメールアドレスの交換をした。
あわせて、電話番号も。
そして、ユノに借りたウインドブレーカーを、
ジェジュンは名残惜しそうに脱ぐと、ユノに返した。
ユノは、ポスターを大事そうに抱えて帰って行くジェジュンを
手を振って笑顔で見送ると、体育館の方へ引き返して行った。
つづく