誰もいない浜辺を探して、偶然見つけた場所だったが、
平日の昼間ということもあって、本当に誰に会うこともなかった。
ジェジュンは、ユノの腕に抱きついたまま、
砂浜をずっと歩いていたが、いつの間にか、
ユノの腕にまわしていた両腕を解き、
ユノと自然に手を繋いで歩いていた。
陸側の少し高くなった場所に、
靴とコンビニの袋を置くと、
2人、手を繋いで、裸足で波際まで走った。
「ウ~ォッ! 冷たい!」
2人同時に、同じことを言って、
目を合わせると、笑い合った。
波打ち際で、波を追いかけたり、
寄せる波から逃げたり…、
そんな他愛ない遊びを繰り返す。
手をつないだまま…。
砂浜では、押し相撲をやった。
服が砂まみれになるのも気にせず、
相手を倒したり、引っ張り倒したりした。
倒したところで終わるルールだが、
砂に尻をついたユノの身体の上に、
ジェジュンが覆いかぶさって、
砂の上に押し倒す。
「ウオォ~! ジェジュン、反撃だ!」
と、ユノが、ジェジュンの腕を強く引いて、
砂の上に押さえ込む。
上に下にと入れ替わりながら、
子供のようにじゃれ合いながら、
大声を出して笑い合う。
ユノとじゃれ合っていたジェジュンは、
急に、写真集「太陽」の表紙の写真を思い出した。
そうなると、なんとなく、チャンミンだけに
ユノとの腕相撲をさせておけない、
そんなチャンミンへの対抗心が湧いてきて、
ユノとチャンミンが砂浜で腕相撲をしていた写真のように、
砂浜に腹這いになると、ユノと腕相撲をした。
もちろん、ジェジュンの全敗だった…。
しかし、結局、腕相撲も、途中から、
ジェジュンが両手を使って、ユノの腕を倒そうとしたり、
身体ごと腕に体重をかけるという反則をしだして、
ぐちゃぐちゃになってしまったのだが。
髪まで、砂混じりになった時、
「タイム! ユノ、休憩しよう!」
ジェジュンが、自分を見下ろすユノを見上げ、
息を切らせながら言った。
「いいよ。」
ジェジュンを押さえ込んでいたユノが、
まったく息を乱さないまま、ジェジュンの上から
起き上がると、ジェジュンの腕を引っぱって
立ち上がらせた。
互いに砂を払い合いながら、靴を置いた場所まで戻った。
日陰を探すと、少し先に見える大きな岩の下に、
ちょうど日影ができている場所を見つけた。
白い岩に背中をつけて、2人並んで座ると、
来る途中のコンビニで買い込んだものを、
ジェジュンは、袋の上に並べた。
水、コーヒー飲料2本、チョコレート2種類、ソーセージ、
菓子パン2つ、スナック菓子。
じゃれ合って遊んだので、喉は渇き、お腹も空いていた。
目の前に並んでいたものが、一気に、2人のお腹の中に
消えて行った。
ジェジュンは、久しぶりに、
おいしいと思って食べることができた。
食べることが楽しいとも思えた。
笑いながら食事をしたのって、どのくらいぶりだろう。
楽しい食事って、それだけで、食べものが
すごくおいしく思えるものだと、
当然のように昔は思っていたことを、
すっかり最近は忘れていたことに
気が付いたジェジュンだった。
「ジェジュン。
海に来たんだし、大声で叫ばなくていいのか?」
コーヒーの最後の一口を飲み終えたユノが、
ジェジュンに笑いかけながら言った。
「え? ああ、叫ぼうって言ってたね…。
…うん。でも…、まだ、いい。
まだ、叫びたい!ってとこまで来てない。
さっき、大声で笑って、しゃべったから、
今は、すっきりしてる。」
ユノを見つめ返し、
笑いながら、ジェジュンは答えた。
食べ終わったものを片づけ、砂浜に立ち上がり、
靴を履くために、足の裏の砂を払い、
靴下をはこうとしていた。
しかし、ジェジュンは、片足で立って、
持ち上げたもう片方の足首を握って、足の裏の砂を払う、
という行為ができずに、何度もやり直していた。
砂の上という安定感のない場所で、片足を持ち上げると、
ふら~っと身体が傾いて、すぐに、上げていた足を
砂についてしまう。
見かねたユノが、ジェジュンを、岩にもたれさせて
立たせると、その足元に胡坐をかいて座った。
「ユノ。いいよ、そんなことしなくて…」
「いいから。今のままじゃ、永遠に靴履けないって。」
「ひどいよー! その言い方!」
ユノは、あははは、と楽しそうに笑いながら、
ジェジュンの片足を持ち上げると、
足の裏の砂を手で払って、自分の太腿の上に
ジェジュンの足を置くと、靴下を履かせた。
そして、そろえたブーツを、ジェジュンの足元に置く。
ジェジュンは、靴下を履かせてもらった片足をブーツに通した。
ユノは、ジェジュンが、片足のブーツを履き終わるのを待って、
もう片方の足を持ち上げた。
同じように砂を払ってもらい、指の間の砂を落してもらいながら、
「ユノ~。くすぐったい。」
ジェジュンが、甘えたような声を出す。
ユノは、口元だけ笑うと、そのまま、ジェジュンの足に
靴下をはかせた。
つづく