「・・・・」
ジェジュンは、奥歯を噛みしめ、真ん中に立つノッポな男を睨らんだ。
こいつは、3人の中で特にジェジュンに嫌がらせをする奴だった。
ちびデブ(ジェジュンより小さいのに太ってるから)と
ノッポ(180㎝はありそう)と大男(180cm×90kg over)の3人。
ジェジュンは、名前さえ知らない。
自分をいじめる奴の名前なんか知りたくもなかった。
めったに行くことのない学校に、たまに顔を出しても友達もいなければ、
話しかけてくるクラスメートもいない。
全く無視されているのかと思えば、嫌がらせだけ仕掛けてくるやつがいる。
こいつらがいるから、ますます、高校という場所が嫌いになった。
「学校も来ないで、何してるかと思えば、屋台でトッポッキか~。」(のっぽ)
「パジョン焼くくらいしかできないんじゃないの~。」(大男)
3人が、それぞれ、口汚くジェジュンをバカにする。
ジェジュンは、こんなやつ、相手にするものかと思いながら、
「あっち行けよ。オレにかまうなよ。」
「なんだぁ~。生意気に言い返してきやがった。」(ちびデブ)
「こんな、やせっぽち、相手にすんなよ~。
それより、こっちの方、面倒見てやろうぜ。」(ノッポ)
そう言って、キンバッ(のりまき)やトンカンジャを勝手に摘まんで、
食べ始めた。
「なにすんだ! 食べたいなら金払えよ!」
ジェジュンは、店の表に走り出ると、キンバッを持つノッポの手を掴んだ。
しかし、すぐにふり払われる。さらに、ノッポが手を頭の上の方に上げると、
170㎝のジェジュンと180㎝を優に超えるノッポとの身長差では、
到底手が届かなかった。
逆にノッポが反対の手で、ジェジュンの手首を掴みあげる。
「くそ!離せよー!」
掴まれた腕を外そうと、腕を振るが、しっかり握りこまれて外せない。
「おとなしく、俺たちが食い終わるまで見てろよ~。」
痛みに顔をゆがめるジェジュンの顔を覗き込んで、ノッポが得意げに言う。
「…うっ。」
ジェジュンは、悔しくて、情けなくて泣きそうになった。
言いように扱われた上に、店の商品を勝手に食べられてしまって、
おばさんに、どうやって謝ったらいいんだろうと思った。
眉間にしわを寄せ、涙をこらえる。
こいつらの前でなんか泣くもんか。
そう思っていても、涙がじわりと湧きあがってきていた。
「なんだぁ、こいつ、泣きそうじゃん。」
ちびデブが、俯いたジェジュンの顔を覗き込んで面白そうに声を上げる。
「顔が女みたいだと思ってたけど、実は、ホントに女だったりして~~」
大男が、ジェジュンのトレーナーの胸をなでまわし始めた。
「や、やめろ!」
掴まれていない方の腕を振りまわして、大男を払いのける。
ユンホとは、全然違う重たい動きで、大男がジェジュンから離れると、
「胸はないな。やっぱ…」
当たり前のことを、さも残念そうに、ニヤニヤしながら言った。
ジェジュンが、大男を睨んで、泣きそうに顔をゆがめた時、
「うりゃーー!! お前ら、なにやってんだーー!」
ジェジュンは、片腕をひねりあげられたまま、声の方を振り返った。
涙で揺らぐ視界の先、すごい形相で走ってくるユンホの姿が見えた。
着ているトレーナーとジャージが風の勢いではためいている。
いが栗みたいに立てた髪で、そんな風に戦闘モードで走ってきたら、
まるでドラゴンボールの悟空みたいだ、とジェジュンは思った。
みるみるユンホは近づいてくると、
ユンホの勢いにのまれていたノッポに体当たりした。
そして、すぐに体勢を立て直すと、ジェジュンを両手で抱きしめた。
すぐに、ジェジュンを自分の背中に隠すようにして、
3人の前に仁王立ちで立ちはだかった。
突き飛ばされたノッポを、ちびデブと大男が助け起こしている。
よろよろと起き上がりながら、顔をゆがめたノッポが怒鳴る。
「くそ。なんだ、お前は!」
「俺は、チョン・ユンホだ!
お前らぁ、ジェジュンを泣かしたな!」
「知るか! 自分で勝手に泣いてんだろ!」
頭に血が上った3人が、ユンホを叩きつぶしてやろうと、ユンホを取り囲む。
「ジェジュン!下がってろ!」
ユンホは、正面を向いたまま、背中側のジェジュンに声をかける。
「イャヤーーッ!!」
ユンホは、周りに響くほどの大きな声を出したかと思うと、
右足蹴りでちびデブを蹴り飛ばし、すぐに体勢を戻すと、
その勢いのまま横蹴りでノッポをなぎ倒した。
そして、大男に背中をむけるようにして一端右足を着地したかと思うと、
振り向きざま、左足で大男の肩より高く飛び上がって、
右足を振りおろし体を回転させると、反対側の左足で後ろまわし蹴りを食らわし、
大男を蹴り倒した。
トン、トンっと体操の着地を決めるように、ユンホの足が右、左と順に地面に着地した。
あまりの速さに、何が起こったのか…。
瞬き1回のうちに戦いの決着がついてしまった。
ユンホの足が、頭の上まで高く上がってた。
高速のコマみたいに身体が回転して、まわし蹴りをしたけど…、
あまりにも速くて、蹴りや身のこなしなんかまったくわからなかった。
「うう・・・」
ユンホは、尻もちをついて倒れているノッポに近づき、左手で胸ぐらを掴んだ。
そのまま、ググッと服ごとノッポの体を持ち上げ、
「二度とジェジュンに手出すんじゃねえぞ!
今日は手加減してやったけど、次は本気で背骨へし折るからな!」
切れ上がった目でギリギリと睨みながら、
ユンホの地元、全羅道方言で凄みを効かせて3人に約束させる。
・・・・・to be continued・・・・・