2008年 10月初め。



ある日突然唇が伸びた。

左側だけがビロ~ンと・・・


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わずか2日で元に戻った。

ところが今度は右が伸びた。


もう訳がわからない。


これだけ明らかに“おかしな”症状がありながらも、吟は元気だった。


血液検査の結果も、薬の副作用による肝数値の悪化以外は問題なかった。



「以前やった“抗核抗体”の検査では問題ありませんでしたが、こうなってくるとやはり

自己免疫の疾患があると考えた方がいいでしょう。

自分で自分の体を攻撃してしまう。

吟ちゃんの場合は、特定の部位にだけ・・・というわけではなく、

体中どこに出るかわからない。 正直厄介ですね。」


そう言われた。


それでもこのままにしてはおけず、ついに“免疫抑制剤”を使うことになった。

“アトピカ”という名前のシクロスポリン系の薬だ。


字の通り、自己免疫を抑制するための薬なので、普通なら気にもしないような

ちょっとした細菌にも相当な注意が必要となる。


この薬がうまく効けばステロイドの量を減らすことができるらしいが、

これでまた吟の行動範囲に制限がつくことになった。