2008年 6月17日。

高度医療センターで内視鏡検査をすることになった。


前回のMRI検査後、悪いなりにも元気に暮らしていた吟。

首の抜糸も何とか済んでもう安心だと思っていた。


やや軟便程度だったのが突然激しい下痢になった。


うちに来た時からお腹の調子はずっと悪かった。

前回のMRI検査の結果で何も見つからなかったとき、

「もし次にお腹の調子がひどく悪くなるようなことがあったら、胃と腸の内視鏡検査をやってみましょう。」

先生がそう言っていた。


今度こそ、吟を苦しめている『ヤツ』がわかるのか・・・?


再び全身麻酔。

不安はいっぱいだった。


ひどく衰弱し、もう出るものもない状態だった。


高熱に吐き気・血尿と、自力で歩くこともできないくらいフラフラだった。


ステロイドを入れてしまうと、前回のように“異常なし”という結果が出てしまう可能性が高くなるからと、非ステロイド性の解熱鎮痛剤と吐き気止めを点滴で入れた。


内視鏡の検査日まで丸3日。

検査まではどこにいても処置は同じだからと、近医で対応してもらった。

でもここは夜になると誰もいなくなる。

こんな吟を一人になんてさせられる訳もない。

朝10時から夜7時まで“日帰り入院”させ、夜は自宅で様子を見た。


検査当日。

前日まで一日中点滴をしていたはずの吟。

なぜか朝から信じられないくらい調子がいい。


相変わらずしっぽをブンブン振りながら先生に飛びつき、ご機嫌で奥に入って行った。


MRIの時より開始時間が少し遅かったのもあるが、終了予定も遅いと言われ一旦家に帰ることにした。


高速を使っても片道1時間半。

朝夕のピーク時には倍以上かかってしまう。


学校から帰った息子を乗せ、少し早めに家を出た。

それでも夕方のピークにはまってしまい、病院まで2時間以上かかってしまった。


オーナーラウンジで待つこと1時間。

ようやく終了の知らせがきた。


診察室に入ると、内視鏡検査で撮られたらしき写真が並んだ紙を持った先生が待っていた。


「う~ん。

今回も悪いところはなかったんですよね・・・」


困ったような顔をして、写真1枚1枚の説明をしてくれた。


確かに素人の私が見てもきれいな胃や腸だった。


「さんざん下痢をして出血までしていたのに、その痕が全くないんですよ。

胃も腸もキレイなんです。

内視鏡の先についているピンセットのようなもので内壁の組織を何箇所か採取して調べてもみたんですが、

組織にも異常はでませんでした。」


「・・・さて、どうしましょうねぇ」


奥で吟の元気な声がした。


ガガガ・・・

何かを引きずる音。


診察室の扉が開き、白衣を着たお姉さんを引っ張りながら吟が飛び込んできた。


あまりにも元気な吟の姿に、結果が出なかったことなんかどうでもよく思えてきた。


吟が無事でいてくれたらそれでいいや・・・


そう思ってしまった。



結局今回も同じ薬を継続して様子を見ることになった。


待合室で薬が出るのを待っていると、先生が慌ててやってきた。


「腸に少し残っていた便の色が黄色かったこと、急に下痢が激しくなったことを考えると、

もしかしたらすい臓の機能が低下してるのかもしれません。

さっきの検査で抜いた血がまだ残っているので簡易キットですぐに調べてきます。

もう少しだけ待っていただけますか?」


10分くらいして小さなプラスチックのプレートを持って先生が戻ってきた。


「やっぱりですね・・・

本来、膵臓からの消化酵素がきちんと出ていればプラスの判定が出るんです。

でも、吟ちゃんのは反応してないんです。

これは簡易判定なんで、外部機関でちゃんとした検査をしてみますが・・・機能低下は間違いないです。

原因が何なのかはわかりませんが、少なくとも今は“急性膵炎”になっているものだと判断しても

いいかと思います。

ただ、膵炎は後からで、もともとの下痢とは別と考えた方がいいですね。

ですから、今日はいつもの薬と、膵臓の機能が戻るまでの補助として消化酵素剤を出します。

処方し直してくるのであと少しだけ待っていてください。」


慌ただしく先生は戻って行った。


2度目の全身麻酔を乗り切って、元気に戻ってきてくれた吟に安心した気持と、大がかりな検査をしても

病因がわからないもどかしさとで複雑な気持ちのまま2時間の道のりを帰った。


家について間もなく、小さな体で大きな検査をしてきたとは思えないくらいのほほんと、

“へそ天”で気持ちよさそうに寝てしまった吟。


吟。あなたの体の中では何が起こってるの・・・?

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