えー、最近ですね、私ね、ひとつの重大な真実に気づいたんですよ。

まあ、人類の95%ぐらいはすでにやってるんですけどね、誰も認めないやつです。


それは何かというとですね…人って、自分の本音を華麗にスルーするんですね。

しかもね、スルーするだけじゃないんですよ。

「自分はそんなこと思ってない」と、自分に洗脳までかけるんですね。

自分で自分をだまして、「はい、これで問題解決!」みたいな。いや全然解決してないですからね。


で、この自己洗脳がまた高度でしてね、もうスパイ映画レベルの隠ぺい能力。

本人も「私? 本音? えーと、冷蔵庫に置いてきたかな?」ぐらい忘れてるんです。


たとえばですね、中学生の4人グループの中に、一人だけ妙に私との会話を避ける子がいたんですね。

まあ普通に話しかけても、返ってくるのは「あー…ゲームやってるんで」みたいな。

もう全身で「会話よりゲーム! ゲーム命!」ってアピールしてるんですけどね、あれ実は「会話、超苦手」っていう本音のカモフラージュなんですよ。

見事ですね、CIAに就職できそうなレベルです。


で、もうひとつは私の母なんですね。

ある日、大学に案内してあげようとしたんですよ。

帰りがけに、「じゃあ大学寄ってトイレでも行こうか」って言ったらですね、入口まで行った瞬間、母が急に「やっぱ行かない」って。

理由を聞くと、「早く帰りたい」「中は寒くて気持ち悪い」って言うんですよ。


…いやいや、お母さん。

さっきまで「暑くて死ぬ」って言ってたじゃん。

つまり本当は、そこにいた大学案内の人たちに、汗だくの自分を見られたくなかったんですね。

でもそれは言わずに、寒いだの気持ち悪いだの…理由を盛りつけて提供してくる。

ある意味、料理番組のナレーションより創作力ありますからね。


で、こういうの見てるとですね、人間って、たとえ自分の心でも、あまりにも見たくないと「存在しなかったこと」にできるんですよ。

まるで自分の脳内に、便利なシュレッダーでも置いてあるみたいに。

怖いですね、人間って。…まあ、だから面白いんですけどね。