Decade of Love~狂った歯車~ -2ページ目

Decade of Love~狂った歯車~

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「颯太のおごりなんだよね?」

 莉緒は意外にちゃっかりしているが、そこが憎めないところでもある。

「じゃあ、八時に校門でな」

「了解です。頑張ってね、颯」

「ああ、マネージャーさんもな」

「任せといてよ」

 莉緒はそう言うと、足早に教室を出て行った。

「颯」

「何だ?」

「ここまで遅くなるのは、作品展のためだけじゃないだろ?」

「まあね」

「若葉はもうすぐ誕生日だし、絵でもプレゼントするんだろ?」

「さすが岳斗、お前には隠せねぇか。あいつには内緒にしといてくれよ?」

「わかってるって、じゃあな」

「おう、また後でな」





 時計はもう五時を回っている。

 俺は美術室に向かう途中、普段剣道部が部活で使っている第二体育館に寄り、携帯で一枚写真を撮った。

 美術室には、既に二人の部員がいる。

「すみません。遅くなりました」

「構わないさ、五十嵐はもう出展用の作品は完成させてるんだから」

 部長の前原肇はそう言って笑った。

いつも隣に座っているお調子者が声を潜めて聞く。

「颯太さんは今日も彼女さんの絵、描くんすか?」

「まあね」

「いいなぁ、俺も彼女ほしいなぁ」

「篠崎、お前はいいから早く作業続けろ!」

「はいっ、部長!」

 こいつは俺と同じ油絵を専攻している、後輩の篠崎雄也。

 かなりのお調子者だが、根はとても真面目なヤツだ。