俺はイーゼルに白いキャンバスを立て、その前の椅子に腰掛ける。
そして携帯をまっさらなキャンバスの脇に起き、さっき撮った写真を表示させる。
絵の題材にするためとはいえ、こそこそ写真を撮ってまわるのはまるでストーカーのようで、複雑な気分だ。
ひとまず鉛筆で絵全体のアタリをとっていく。
若葉の誕生日まであと一月半。
それまでにあと三つの絵を完成させ、それをプレゼントするつもりでいるが、アイツはそんなことで喜んでくれるだろうか。
去年も同じように絵を贈ったら、今までと同じように喜んではくれたが、実際のところは嬉しいのかさえわからない。
こんなことをするのも、もう五回目だし、そろそろ飽きてきたかもしれないけれど、これくらいのことしかできないし、付き合いだしたからといってどうしていいかも正直わからない。
だから、今までどおり、一年毎に一枚ずつ増やしながら絵を贈る。
スケッチが描き終わり、時計を見ると、約束の八時を少し過ぎていた。
俺は急いで荷物をまとめて、校門へ向かった。
「悪い、遅くなっちまった」
「いいって、俺らも今来たところだし。なあ、莉緒?」
「うん。それより、何処に行く?もう腹ペコ~」
「適当にファミレスでもいいか?」
「私は食べれるなら何処でもいいよ」
「俺はおごってもらえるなら何処でも」
そう言って二人は同時に微笑む。
岳斗たち二人と別れたときには九時を少し過ぎていた。
