隠れて過食しているのが、
ついに母親にバレた。
内心ほっとした。
やっと誰かに気づいてもらえたって
そう思った。
母がすぐさま、
ネットで調べてきた病院に電話をした。
お医者さんに体重の変化について聞かれて
母に細かく説明した。
しかし母は
私の話など聞こえなかったかのように
「ここ一年で急激に太った」
自分の主観で医師に答えた。
「実際には、
病気を発症した三年ほど前から
過食は始まっているし、
体重も少しずつ増えているんだけど…」
もう一度母に言ってみたが
やはり無視されたので、それ以上は黙った。
今日は風呂に入りたくなかった。
気力がない、というほうが正しいのかも。
それでも自分なりに気持ちを整えれば
入れる時もあるのだ。
風呂に入れ、と叫び続ける母に
わかったから
自分のタイミングで入るから
お願いだから静かにしてほしいと伝えた。
母の性格を忘れていた私が悪かった。
母は自分の意見が通らないと
相手が負けを認めるまで、
必要以上の攻撃を仕掛けてくる人間だった。
気付いた時にはもう手遅れで、
今日も
怒涛の追撃が始まってしまった。
社会人にもなって、
働けない
風呂に入れない
家事もたまにしか手伝えない
隠れて過食をする
太りすぎてみっともなくて人様に会えない
自分の人生に責任を持っていない
治す気がない
お前の心は楽になったかもしれないが、
はたから見て全く治ってない
甘えてる
「お前はただのうんこ製造機なんだよ」
そう、母は私を責めた。
自分がこんな年になって
親に迷惑や心配をかけていることは
深く反省しているが、
なんだか
このまま一方的に言われると
心が死んでしまいそうになったので、
勇気を出して、母に口答えしてみた。
あなたの話を聞いていると
私は悪者のように聞こえるが、
あなたの中で私は悪者なのか?
そんなに悪いことを私はしているのか?
「そうだよ
お前は悪者だよ。」
間髪いれずに、母は答えた。
「刑務所に入るばかりが悪者じゃない
お前は悪者だ」
母はそう、付け加えた。
昼間に母は、こうも言った。
「早く治って痩せて就職してくれ、
お前もつらいかもしれないが
せっかく育ててきて最後がこんなんじゃ
私が悲しい」
申し訳ないけど
それはあなたの都合だと思うと答えると、
「子育ては
人生の大きなウェイトを占めるの。
自分の生み出したものはうまくいってほしい。
仕事だってなんだってそうでしょ?
誰でもそう思うんだよ。
悲しむなと言うことはできないでしょ?」
正論だと思うが、
私が言いたいのはそういうことではない。
子供の不出来について
本人の前で落ち込むなと言ってるだけだ。
私のわからないところで
勝手にため息をついて
勝手に悪口を言って
勝手に悲しんでください
そうお願いしているだけだ。
少なくとも毎回毎回、
母に関わる全ての悪い出来事について
私の前に限定して
落ち込むのはやめてくれ。
そうお頼みしているだけだ。
だから
私に良くないことが起きたときも、
母は、昔から
私以上に落ち込んでしまうし
私が母以上に落ち込むことを母は許さない。
これを知っているからか
いつの日から
まだ音の鳴る小さな椅子に座っているような
そんな時代から
どんな困難にある時でも
私は
母に助けを求めることを諦めてしまった。
でも
悩んで試行錯誤して失敗して落ち込むと
全部自分の責任で勝手にやってるのに
母はなぜ報告しなかったのか
決まって私を責める。
自分の振る舞いが原因だと、
なぜわからないのか。
現在、私は社会不適合者であり
そんなことを言える立場にないことを
十分にわかった上で
人生後半にもなって
子供のそんな心の機微にも気づけない母を
心底かわいそうな人だと思う。
そんなこと言って
私に子育てができるのだろうか。
母のようには絶対になりたくないし
自分がこうなってしまった以上
人生に余裕もなければ、
一つの命を育てあげることに
以前より強く責任を感じるようになって
自信が持てなくなってしまった。
散々偉そうなことを言ったが
私は、その程度で人間なのだ。
その程度だから
いつまでも
苦手な親の世話になっているのだ。
いつの日か、
うんこ以外を生み出す人間に
私もなれるだろうか。