
ただ普通に歩いているだけで
ものすごく感動的な場面に出っくわしてばかりな日だったらどうしましょう。
実は都内某所にある調剤薬局に、猛暑の日でもなんでも外に立っている
着ぐるみ君がいる。
どんなに暑くてもほぼ毎日、入り口のところで通る人に手を振ったり
左右に身体を揺らして愛嬌を振りまいていた。
毎日そこの前を通るたび、とにかく一生懸命手を振ってくるので
8月が終わる頃にはいい知れぬ思いがわくようになっており
とにかく知らんぷりなんてできないのは当然で、
しまいには彼らの体調さえ心配になったものだった。
忍耐とは、彼らのためにあるような言葉なのである。
しかし悲しいのは、土地柄、大人ばかりが行き交う場所であるため
なかなかその大きな“バイバイ”に応える人がいないということだった。


これだけ人が通っている中で、着ぐるみにわざわざ寄っていって
触ったり手を振り返すのはピーターパンなけしごむくらいであるかのように感じた。
来る日も来る日もまた来る日も、彼らは応えてくれない大人たちに
手を振り続けた。
そんな日々が続き、そういえば最近、彼らを見ないなぁと思っていたが
一昨日(くらい)に久々にカエル君がいるのが見えた。
いつもは真っ直ぐ前を見ているか、または左右に揺れているが
この日は少しうつむいて手を動かしていない様子だった。
人ごみにまぎれて、全身がよく見えない。
どうしたんだろう。
いつも腕を上げて、バイバーイとやっているのに。
どうしたんだろか。
早くあそこに行かなければ。
場合によっては励まさなければ…
そんな衝動にかられた次の瞬間、
「あはは! あはは! わーぃ あはは」
と声が聞こえた。
近づくと、子供が2人、たぶん兄弟と思われる男の子が
大きなカエルに飛びついたり抱きついたりしていたのだった。
いつも知らん振りされても、重くて暑い着ぐるみに絶えながら
シャドーボクシングをして笑いをとっていたあのカエル君に
子供たちが全力でぶつかっていったのだった。
いつもは忙しなく動かす腕を、今日は大きく広げ
「さぁ、おいで!」のポーズをすると
大喜びで何度も何度もぎゅーっとしてもらいに子供が抱きつく。
全力で応えるカエル。
それはもうテレビ番組「逢いたい by徳光」以上の感動的なシーンであった。
「ねーこうしたかったんだよねー? ねー? カエルさん。うっうっう…(涙)」
とでも言うべきシーンであった。
2人以上の子供に慣れていないのか、少しはにかみながら(顔は変わらないが)
とにかく嬉しそうなのはものっすごく伝わった。
あぁ、これを書いていても泣きそうである。
今日までくさらず、バイバイを続けていてくれて本当によかった。
あのカエルやらウサギが、アスリートのように一人黙々と何時間も着ぐるみと向かい合ったのを
けしごむは知っているのだ。
本当にいいシーンを目撃したのであった。
そしてその日の夜、乗り換えの駅を改札まで歩いていると
丸い大きな柱のところにまじめそうなスーツ姿のサラリーマンが立っていた。
The待ち合わせみたいな顔をして、ただ立っていた。
スーツや靴、かばんも全て黒。
色味のあるものは何も身につけていなかった。
改札近くだったので、空いてくるまでなんとなく視界に入った彼を見ながら進むと、
彼の前に待ち合わせの相手がやってきた様子。
正統派のワンピースを着た女性。
どうも、どうもお待たせ、みたいなやりとりがあった次の瞬間、
ジャン!(と聞こえた)とマジックのように、いきなり後ろ手にあった
花束が飛び出した。
彼の黒い服装によく映え、ピンクの大きな花束が本当にジャン!と
飛び出したのだった。
そこで彼はやっと、勢いよく
「お、おめでとうございます」
とだけ言ったのだった。
きっと今日は、この子の誕生日かなにかなのだろう。
少し他人行儀に挨拶していた相手の女性は驚いて
「どーして? どーして?」
と歓喜の声をあげていたのだった。
そのとき同時に脇を通ったけしごむ(を含む何人か)のせいで、
また改札が詰まったのだった。
あんないつかのトレンディードラマのようなことが
本当にあるのだ。
見ているこっちは、こうやってふざけてブログに書いてるけれど
女の子はみな、こんなことをされたら嬉しいのである。
【本日のけしごむ】
かえるさん。