保育所保育指針の改定で、現在は、保護者支援が保育士の業務の一つになっている。
正直、子どもを保育するだけで手一杯なのに、大人の面倒まで見なきゃなんないのかよと思っていた。
大人なんだから、自分で何とかしろよって思っていた。
あと、前は、保育園って福祉施設ぽかったこともあって、ひとり親とかには優しくできても、区役所職員の夫婦とかには、正直、あまりいい感情を持っていなかった。
それに、かつての自分は、保護者と話すのが苦手だった。
保護者と話す時は、子どもの直して欲しいところではなくて、いい面を伝えたり、ほめたりするというのが基本なのはわかっているが、なんか、自分が言うと、わざとらしい感じがした。
だいたい、大人よりも子どもとの方がコミュニケーションがとりやすいから、保育士という職業を選んだのに、保護者の支援をしろなんて、適性的に、疑問である。
新人の頃、仕事が休みなのに子どもを預けたり、スーパーの袋を持って(つまり買い物をしてから)迎えに来たり、用意してもらう物が用意されてなかったりする親のことを、「○○ちゃんの親は!」って、けっこういろいろ言う先輩保育士が何人もいた。
保育園と保護者は、敵対関係とまでは言わないまでも、対立する立場に感じられた。
最近は、保育指針の改定のせいか、時代的に、保育園に入ることが経済的に苦しいからでなく、ごく一般的なことになってきたせいか、そして、最大の理由は、保護者の権利意識が強くなってきたことで、保護者からの苦情に対して敏感になった保育課からの様々な圧力のせいか、そういうことを言う人は減ってきた。
うちの区では、今は、かなり、親からの要求を受け入れるようになってきている。
ただ、保護者と踏み込んで、仲良くなろうという感じでもない。
保護者が、休日に、親睦会を開く保育園がある。
新人の頃は、声をかけてもらって、行っていた。
今は、声をかけてもらうことはなくなっている。
前の前の園では、運動会や卒園式の後、打ち上げに誘ってもらって行ったりしていた。
もちろん、お金は払っている。
前の園では、園長の一声で、卒園式後の打ち上げに、参加するのは禁止になった。
そういうのにうるさいご時世なのか、年々、そういう私的な場面での保護者とのつながりはなくなってきている。
そういう場に行くと、けっこう普段できない話とかも聞けて、ああそうなんだと思うこともあるし、距離が縮まる。
まあ、それがよくないって感じる人や、時間外までそういうのに参加したくないって思う人が増えているから、そうなってきたのかもしれない。
そんな感じで、保護者支援という言葉は、園の取り組みとして入るようになってきているが、逆に、以前より、一線は引いている感がある。
私が、保護者と話せるようになってきたのは、やっぱり、自分が親になってからだと思う。
なんか、対等になった感じがしたのと、子どもを育てる気持ちがわかったのが原因だと思う。
もちろん、子どもがいなくても、保育士として、保護者支援はできるとは思っている。
ただ、自分の場合はそうだった。
最近は、第1子の保護者に、ちゃんとアドバイスもできるようになったし、話が弾まない人もいるにはいるが、前ほど苦ではなくなってきた。
子どものことでない話とかもしたり、本音でしゃべれるようにもなってきている。
卒園させた子の親とつながったりもしている。
個人的には、対立関係ではなく、自分は、保護者のためにやれることはやってあげていいんじゃないという考えのようである。
それと、割といい加減なので、時間に遅れても、忘れ物をしても、「しょうがないんじゃない」と思っている。
去年のクラスでは、貸した洋服とかチェックしてないし、ビニール袋とかあげてもわさわざ伝えないし、提出物が出てなくてもあまりうるさく言わないし、かなりアバウトだった。
もちろん、子どものことで言わなきゃいけないことは、言っている。
今の園も、前の園も、幸いなことに、いわゆるモンスターペアレントに当たったことはなく、保護者は、みんないい人ばっかりである。
それは、本当に恵まれていると思う。
保育園も保護者も、子どもの成長を願うという点では、一致している。
だから、共に子育てする仲間としてやっていきたいと思っている。