日本が誇る世界No.1の総合モーターメーカー、ニデック(旧日本電産)。
26歳で起業し、一代で連結売上2.6兆円、従業員10万人超の巨大企業を築き上げた永守重信氏は、間違いなく稀代の経営者でした。
私を含め、かつて「永守信者」だった人は、それこそごまんといるはずです。
永守氏は、筋金入りの「昭和の人」です。
「他人の2倍働いて成功しないことはない、倍働け」を信条とし、1日16時間、365日働く猛烈なスタイルを貫いてきました。
それがまんま社風となり、掲げられた社是がこちら。
「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」
昭和の高度経済成長期ならいざ知らず、今は令和。
この言葉に「情熱」ではなく「恐怖」を感じる時代です。
かつての電通の「鬼十則」にも似た、危うい空気感を漂わせています。
ニデックはM&Aで成長する一方で、「買収先のリストラはしない」という慈悲深さと、「検品済みの商品代金を、価格交渉中という理由で支払わない」といった強引さを併せ持つ、極端な二面性のある企業でした。
私は、「時代に合わせて良い部分は残し、変えるべきは変えているはずだ」と信じていました。
しかし、その期待は3年ほど前の「違法配当事件」で瓦解しました。
法令違反の原因を完全に「人のせい」にするプレスリリースを読んだ際、私は絶句しました。
反省の色が微塵も感じられない、「俺様は悪くない」と言わんばかりの内容。
正直、ここまで酷いIR資料は見たことがなく、これを許容した東証も罪深いと思います。
「この内容で出すべきではない」と止める人はいなかったのか。
永守氏に意見できなかったのか、あるいは、誰もこれをおかしいと思わないほど組織が麻痺していたのか。
「この会社は、いずれ致命的な不祥事を起こす」
そう確信した瞬間でもありました。
そして、私の危惧は「粉飾決算」という最悪の形で現実となりました。
先週、第三者委員会報告書の受領直前、私が尊敬していたはずの永守会長はついに辞任を発表。
第三者委員会報告書の内容をみて辞任せざるを得ないと判断したのでしょう。
しかし、驚いたのはその後のプレスリリースです。
先週公表されたのは、事実解明に向けた第三者委員会報告書ではなく、
永守氏の
「俺がいかに凄かったか」
「ニデックは永久に不滅です」という自画自賛に満ちた、
あまりに頓珍漢なメッセージでした。
(ギャグではないです。本当に永久に不滅ですと書いています
)
https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/0226-01/260226-01jp.pdf
ネタとしては笑えますが、ただただ呆れるばかり。
本人は、全く悪いと思っていないんでしょう。黒をグレーとする社風にしたのも、粉飾決算も。
お前らのせいで俺が辞めるハメになったのだと思っているのでしょう。
この期に及んで、誰もこのプレスを止められない、いや、これをおかしいと思わない社風こそが、今回の粉飾の根源であることを露呈した格好です。
第三者報告書を受領したことだけを伝える中身の無いプレスを金曜日23時に行い、肝心の報告書はいまだ公表すらしない企業体質、どうしようもないなと思います。
結局、ニデックは変われなかったのでしょう。
昭和の価値観のまま暴走し、「稼ぐためなら何でもする自分たちが正しく、ゆとりのある世の中が間違っている」という歪んだ正義感が、組織を蝕んでいたに違いありません。
永守氏も、もっと早く後進に道を譲るべきでした。不祥事の責任から逃れるように表に出てこない姿は、かつてのフジテレビの日枝氏とも重なります。
あの素晴らしかった永守氏も最後は老害となり、晩節を汚しました。
永守ファンだった(過去形です)私も残念でなりません。
私自身、かつては永守さんのような働き方を「武勇伝」として語っていた時期がありました。
しかし、今のニデックの惨状を目の当たりにし、自分自身を振り返ります。
「昨年、早期退職を選んだことは、自分にとっても、そして後に続く後輩たちのためにも、本当に良かったのだ」
今、わが身を翻って、心からそう感じています。
