前回、相続税のシミュレーションを行い、資産運用が順調な人ほど「税率50%の壁」(相続資産3億円)を突き破る現実をお伝えしました。
最近の株式マーケットの好調が未来永劫続くとは思えませんが、NISA枠1800万円が10%で回り30年後に3億円を超える世界線は、非現実なお伽噺ではなく、それなりにありうる話だとは思います。
今回は、その対策について具体的に解説します。
※ご注意:私は税務の専門家ではありません。本記事は一般的な知識に基づく個人の見解です。実際の対策にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談の上、自己責任でお願いいたします。
1. 相続財産そのものを「減らす」対策
まずはシンプルに、課税対象となる資産の「総額」を削る方法です。
(1)自分たちの人生に「投資」する
NISA運用がうまく行き税率50%のゾーンにいるなら、1万円を我慢して貯金しても、将来5,000円は相続税で消えます。 ならば、その1万円を使って豪華な食事を楽しんだり、旅行に行ったりして、自分たちの人生の質を上げる方が圧倒的に「得」です。自分たちが使い切った分には、1円も税金はかかりません。
人生を楽しみましょう♪
(2)「扶養義務」の範囲で子どもを支援する
日本の贈与税ルール(相続税法第21条の3)では、「教育費」や「生活費」として社会通念上適当な範囲の支出は、そもそも贈与税がかかりません。
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結婚式費用や孫の教育費、家族旅行の代金など、親が直接支払えるものは積極的に負担しましょう。
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注意点:渡したお金を子どもが貯金したり、常識を外れた超高額な披露宴などは、贈与とみなされるリスクがあります。子どもがどんなに高所得であっても孫の教育費を直接出す(学校や塾に直接振り込む)分には問題ないですが、一定額を子どもの口座に振り込むと贈与とみなされるリスクがあります。
(3)非課税枠(暦年贈与)を使い倒す
年間110万円までの贈与は非課税です。これは上記の生活費等とは「別腹」で利用できます。
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「名義預金」に注意:親が勝手に子ども名義の口座にお金を移すのはNGです。子ども自身が「贈与を受けた」と認識し、通帳や印鑑を管理している必要があります。
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最新ルール:亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算されるよう法改正されました。対策を始めるなら「1日でも早く」が鉄則です。
2. 財産の「中身」を変えて評価を下げる
「1億円の現金」を「1億円の不動産」に換えるだけで、魔法のように課税対象額が下がります。
(1)現金(金融商品)から不動産への組み換え
金融商品は「時価」で評価されますが、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」で計算されるため、実勢価格より低く評価されるのが一般的です。 私自身の例でも、購入額に対して相続税評価額は約60%まで圧縮されました。
(2)さらに評価を下げる「特例」の活用
ここからが不動産対策の真骨頂です。
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① 小規模宅地等の特例(自宅の場合) 同居している子どもや、持ち家のない子ども(通称:家なき子)が相続する場合、土地の評価額が80%減額されます。 例:1億円で購入した自宅(評価額6,000万円)なら、特例適用で1,200万円まで圧縮される計算です。
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② 貸付事業用宅地等の特例(アパート・賃貸物件の場合) 人に貸している不動産は、評価が下がります。私自身の試算では、購入額の約30%程度まで評価額を下げることができました。
(3)一時払終身保険への加入
最後に忘れてはいけないのが、生命保険の「500万円×相続人数」の非課税枠です。
預金として持っている1,000万円は100%課税されますが、それを「一時払終身保険」に変えるだけで、相続人が2人なら評価をゼロにできます。
さらに、保険金は銀行口座の凍結に左右されず、すぐに現金化できるのも大きなメリット。
「不動産ばかりで納税する現金がない!」という悲劇を防ぐためにも、最低限この非課税枠分は保険で持っておくのが賢い相続の鉄則です。
ただし、既に非課税枠以上の保険金を掛けている方は、追加で入っても非課税枠は増えませんのでご注意下さい。
まとめ:資産を「守る」ための出口戦略
NISAで資産を増やすことは素晴らしいことですが、増やした後の「出口」を考えておかないと、国に半分近くを納めることになりかねません。
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元気なうちに楽しく使う。
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非課税枠を使い、早めに子どもへ移す。
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現金を不動産に換え、評価額のギャップを利用する。
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非課税枠内の終身保険には入っておく。
賢く対策をして、大切な資産を家族のためにしっかり残していきましょう。
ただし、家族関係が未来永劫円満であることが大前提ですので、そちらも注意が必要です![]()
